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国交省、今後の物流施策の方向性示す

25年大綱が最終年度、目標達成率46%

2017年12月25日 (月)

行政・団体国土交通省は22日、今年度を最終年度とする総合物流施策大綱(2013-17、いわゆる25年大綱)に基づき、国交省を中心とする関係省庁が取り組んできた「総合物流施策推進プログラム」の政策レビュー評価書を作成し、公表した。

政策レビューでは、総合物流施策推進プログラムに盛り込まれた128施策のうち、他省庁が実施の中心となるものを除外した107施策(目標数127)の進捗状況を確認。127目標のうち、46%で目標を達成し、43%は「今後の達成見込みがある」と判定されたものの、9%は「今後の達成見込みがない状況」と結論づけた。

また、今後の物流施策の基本的方向性として、(1)ASEANなどのアジア諸国との関係の深化(2)人口減少・少子高齢化の進展に伴う労働力不足の顕在化とトラック産業の課題(3)社会構造の変化と物流に要求される機能の変化(4)ハードインフラの整備の進展(5)IoT、ビッグデータ、AIなどの新技術の登場(6)地球環境問題への対応(7)震災などの自然災害への対応――の7分野を示した。

具体的には、日本企業がアジアで生産拠点を拡大する動きに合わせ、グローバルなサプライチェーンの円滑化・効率化を推進することが求められている、として、ASEANなどのアジア諸国との関係を深めていく必要性を指摘。日本の高品質なコールドチェーン物流の国際標準化を推進する。この際、物流事業者、政府向けのガイドラインの作成や小口保冷輸送サービスに関するPAS規格の普及、ISO化に向けた取り組みも検討していく。

トラックドライバーの高齢化や労働力不足の深刻化に対しては、トラック産業で「取引環境・労働条件を改善し、その担い手を確保すること」を課題と捉え、トラック事業の経営環境改善や女性運転手の確保などを引き続き推進。「働き方改革」の一環として、新技術の活用などによる荷待ち・荷役時間の短縮、再配達の削減、中継輸送方式の普及などのトラック運送業の労働環境改善、多様な人材の確保・育成――に取り組む。

消費者のライフスタイルの変化に応じた物流へのニーズの変化については、輸送の小口・多頻度化による輸送効率の低下を懸念するとともに、物流に附帯するサービスの範囲が拡大しているとして「複雑化するニーズ」へ的確に対応するため、荷主、物流事業者などの関係者が連携・協働して物流の効率化、付加価値の向上を図るという方向性を示す。

そのために、物流総合効率化法の枠組みの活用、官民による検討の場を通じ、データや荷姿などに関する事業者間における共通ルールの設定、全体での標準化の促進――を推進する。

また、三大都市圏環状道路などの高規格幹線道路網の整備など、物流を支えるハードインフラの整備については、「今後は、さらなる既存インフラのストック効果の最大化を図るとともに、インフラ間を繋ぐモーダルコネクトの強化を促進することが重要」だとし、ピンポイント渋滞対策の強化などの道路輸送の機能強化や国際コンテナ戦略港湾での大水深コンテナターミナルの整備などによる海上輸送の機能強化などを図る。また、空港、港湾、鉄道駅などとの拠点と高速道路のアクセスの強化や高速道路と施設の直結の促進などによるモーダルコネクトを強化する。

IoT、ビッグデータ、AIなどの新技術に対しては、「第4次産業革命時代に入り、データの活用などによる大幅な生産性向上が期待される状況となっている」として、物流分野の課題解決に向けて新技術の活用を重視。トラックの隊列走行の実現やドローンの活用など、新技術を活用することでサプライチェーン全体の効率性・生産性向上を図るとともに、人手不足の課題解決にもつなげる。

地球環境問題への対応については、物流分野のCO2排出量は減少傾向にあるとしながらも「国際約束を順守しつつ、我が国経済の成長を持続させるためには、その基盤となる物流が環境面でも持続可能である必要がある」として、地球温暖化対策を着実に進めることの重要性を確認。「地球温暖化対策計画」に掲げる日本の温室効果ガス削減目標の達成のため、再配達の削減、モーダルシフトの推進、自動車の単体対策、鉄道・船舶・航空・物流施設での低炭素化の推進――などを行う。

震災などの自然災害への対応については、熊本地震への対応で「支援物資輸送を担う多様な関係者の役割分担が明確でなかった」「輸送拠点から避難所などに至るラストマイルの輸送の混乱が生じた」といった課題が顕在化したことを受け、緊急物資の輸送・保管を自治体、物流事業者などと輸送協定の締結を促進し、物流事業者によるBCPの策定も促す。また、輸送拠点から避難所に至る「ラストマイルの着実な輸送」を含めた支援物資輸送の円滑化を図る。