調査・データフェデックスエクスプレス(東京都江東区)は10日、日本を含むアジア太平洋地域の9市場で中小企業の貿易活動に関する調査を実施したと発表した。前回調査(2016年)と比較すると、日本の中小企業のアジア太平洋地域外への輸出が増加し、輸出先も多様化していること、テクノロジー面では、Eコマースが今後の収入増加に貢献するとして注目され、サプライチェーンの効率化のための新たな技術に期待が寄せられていることがわかった。
今回の調査では、日本の中小企業が輸出から得る収入額は平均69万8000米ドルで、全体収入の41%を占めており、16年の35%から増加しているため、輸出の重要性が増していると推察。輸出先については、16年に続きアジア太平洋地域が最も多いものの、その割合は98%から57%と減少している。輸入も、アジア太平洋地域以外との取引が64%にのぼり、輸出入ともに取引先が多様化している。
フェデックスは「貿易の懸念事項として、輸出入どちらでも為替の動きを挙げる中小企業が最も多く、貿易相手国が多様化するなかで、為替リスクが企業収入に大きな影響を与えると捉えている」と分析した。
輸出に関する懸念事項についての回答では、顧客開拓を挙げる企業が上位を占める中(3位、27%)、その対応策の一つとして、Eコマースが寄与。新規顧客獲得のためにデジタルコマースを活用する日本の中小企業の多くは、今後1年間でEマースによって収益が増加すると見込んでおり(45%)、デジタル活用が更に大きく成長する可能性を秘めているとしている。
一方で、日本の中小企業のデジタル活用率は低く、Eコマース利用率は40%、ソーシャルコマースは28%、モバイルコマースは23%に留まる。これらの利用率はアジア太平洋地域全体の平均の半分以下で、日本の中小企業がデジタル活用でほかのアジア太平洋地域の市場からは遅れていることがわかった。
物流や配送も、輸出入の懸念事項の上位に挙げられているが(輸出4位:24%、輸入2位:25%)、ニューテクノロジーについては、多くの日本の中小企業がサプライチェーンや物流チャネルを効率化するために役立つと回答している(54%)。ソフトウェアオートメーション、モバイル決済、ビッグデータ、それによる高度な分析がテクノロジーの中でも最も利用されており、アジア太平洋地域の平均と同じ順位となった。
しかし、その利用率は同地域平均よりかなり低く、ニューテクノロジー全体の利用率では日本の中小企業はアジアパシフィック地域の半分以下の利用率(22%。アジアパシフィック地域平均は57%)となっている。
これらのことから、「収入の増加やコスト削減のために輸出入の重要性が増大し、輸出入対象国が拡大するなかで、為替変動の影響や、新たな顧客の獲得、新たな物流・配送ソリューションやオプションの導入などのさまざまな課題が生じている。この中で、Eコマースやニューテクノロジーの活用は大きなカギを握っており、輸出入ビジネスを成功させるポイントとして、さらなる成長が見込まれる」とした。
この調査は16年に続き、各国でそれぞれ500社の中小企業を対象に行なわれたもの。調査期間は18年3月26日から4月9日で、中国、香港、日本、マレーシア、フィリピン、シンガポール、韓国、台湾、ベトナムの従業員数249人以下の中小企業の上級管理者4543人(うち日本企業507人)を対象としている。
■調査レポート
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