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日本気象協会と倉敷青果荷受組合

出荷予測誤差55%削減、気象データとAI活用

2019年8月26日 (月)

産業・一般日本気象協会(東京都豊島区)と倉敷青果荷受組合(岡山県倉敷市)が、昨年9月から12月までカット野菜の出荷量予測に気象データとAIを用いた実験を行った結果、予測誤差を最大55%削減することに成功したことがわかった。

同協会と倉敷青果は昨年9月22日から11月16日にかけ、協会が開発したAIを用い、気象データを基に商品別の出荷量を予測する机上実験を実施。倉敷青果が従来から行っていた「出荷データを基にした予想」と比べ、予測誤差を最大55%、平均37%改善することに成功した。

倉敷青果はこれまで、大量発注に備えカット野菜の加工を見込み生産で行っていたが、見込みが外れると大量の在庫を廃棄しなければならないことが課題となっていた。そこで日本気象協会が気象データとAI、倉敷青果の出荷実績データを用いて解析し、出荷量予測モデルを構築、その予測結果を従来の倉敷青果の予測結果と比べて検証した。

今回の結果を踏まえ、同協会と倉敷青果は「予測が必要な全商材」に予測対象を広げる方針で、19年度は4品目から10品目へと対象商品を拡張する。また18年度は9-11月の秋に限定した検証だったが、19年度は業務への導入を想定して通年で精度検証を行い、予測精度の改善によるコスト削減効果の試算を行う。

■出荷予測誤差、千切りキャベツ54%・キザミネギ55%削減
実験ではコンビニエンスストア向けミックスサラダ、同千切りキャベツ、外食向けキザミネギ(1キロ)、レタスミックス(1キロ)の「翌日の商品別出荷量予測」を行った。

この際、倉敷青果は出荷実績データ、得意先データ、商品マスターデータ、日本気象協会は気象の観測・予測データをそれぞれ提供。実験の結果、AIを用いた予測誤差は、倉敷青果が単独で行った予測誤差に比べ、ミックスサラダ32%、千切りキャベツ54%、キザミネギ55%、レタスミックス18%――それぞれ削減できた。

この結果を受け、同協会は「出荷量予測を活用することで、カット野菜の加工段階で生じる廃棄や廃棄に伴うコスト」の削減につなげることが可能と判断。将来的に出荷量予測の精度が向上することにより、外食・小売などの「業態ごとに野菜の総需要量を把握」し、調達計画の最適化を図ることができるとの見方を強めた。

実験は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の採択事業「農作物におけるスマートフードチェーンの研究開発」の一環として、産業技術総合研究所、農業・食品産業技術総合研究機構、日本気象協会が共同で実施した。