ピックアップテーマ
 
テーマ一覧
 
スペシャルコンテンツ一覧

NSU海運、真価が問われるのはこれから

2021年1月5日 (火)

ロジスティクスNSユナイテッド海運(東京都千代田区)はこのほど、同社ホームページ上に谷水一雄社長による新年のあいさつを掲出した。あいさつの要約は次の通り。

(以下要約)

■安全第一
まずは、コロナ禍が長引く中で、引き続きBCP対応と感染対策には万全を期し、従業員やご家族の安全確保に努める。そして海上勤務の方々、年末年始も休みなく安全運航への尽力に感謝したい。コロナ禍は、あらためてわれわれ海運の社会における位置づけと、船員の皆さんの頑張り、そして安全や健康の意味を深く考える機会となった。一方で、大変残念なことに、大型船の衝突事故が発生してしまった。幸い人命や環境に関わる最悪の事態には至らなかったものの、荷主や関係する方々に大変なご迷惑をおかけすることになったことは大いに反省しなければならない。Uブランドの挽回につなげるべく、もう一度気を引き締めていきたい。

■取り巻く事業環境
世界経済は少しずつコロナ禍の落ち込みから回復途上にあり、中国はいち早くV字回復を実現したが、他国は回復具合にばらつきがある。そのような中で鉄鋼業では需給改善が鮮明になり、明るい材料もでてきたことで、今年のバルカー海運市場にプラスに効いてくると期待している。ただ、ひとつだけ言えるのは、中国の存在感が大きくなり、中国を中心とした経済は隣国としていい面もあるが、気を付けるべき面もあることは頭に入れておく必要があるだろう。鉄鋼業にとって昨年はこれまで経験したことのない事態で、中国の鉄鋼生産が年率10億トンを超えて推移する一方で、日本の多くの高炉が一時休止や閉鎖をするというコントラストは、コロナ禍による需要の減少だけでなく、次代に向けた構造転換の開始となりそうである。また海運造船も、大きな正念場を迎えている。特に造船は中国との競争で、これまで培ってきた日本の優位性が試される局面に入り、内外で再編の動きが加速化している。これは船づくりを通して一緒に歩んできたわれわれ海運にとってのチャレンジであり、こういった動きは、日本の産業構造の地殻変動と捉える必要がある中で、私たちは今後どんな絵を描いていくか。現在の文脈における産業構造の転換とは、それはかつてのような、例えば工業から情報産業へということではない。重要なことは、同じ産業の中での不断の見直しであり、新たな視点での企業価値の創出ではないだろうか。簡単なことではないかもしれないが、時代とともに競争優位の前提も変わっていく中で、私たちとしてもこれまでと同じでいいのか、考えていかなければならない。

■中期経営計画
このような認識の下で、昨年私たちは統合10年の節目を迎え、次の中期経営計画を、時間軸を長くとり2030年に向けてということで策定した。これまでを振り返り、次の10年を見据えいま何をすべきか、誕生から自立に向けてどんな準備が必要かを検討してきた。企業理念でもある「収益性と社会性を備えた企業を目指す」という目標をあらためて確認し、事業環境・市場環境の変化や気候変動を中心とした環境問題に対応していくための6つの重要な経営上のマテリアリティ(安全運航・環境保全・顧客満足・イノベーション・人材・ガバナンス)を定め、課題解決には船隊整備などハード面だけでなくソフト面、支える人と技術にフォーカスすることが重要であると認識した。ESG(環境・社会・ガバナンス)については息の長い取り組みで、組織や企業文化にもつながるものであり、職場の理解活動も行っていく。この取り組みはUブランドそのもので、いかに私たちの企業価値の拡大と持続可能な社会への貢献につなげていくことができるか、サステナブルな事業構造やレジリエントな経営基盤に結び付けられるか真価が問われる。

■今年の取り組み
第一は、安全運航の再確認で、特に11月にブラジルで発生した他船との衝突事故は水先人による誘導中とはいえ、あってはならない事故で、私たちにとってシンボルともいえる大型鉱石船での事故は大いに反省しなければならない。さらに最近の動きとして、海運会社として法的責任だけでなく社会的な責任を問われる時代になりつつあり、今後の運航に当たっては一層の安全意識の喚起、スキル向上、支えるサポート体制強化が求められる。第二は、厳しくなる事業環境変化への準備で、中期経営計画において、事業環境の構造変化を想定したが、足下では遠景が近景に、また不確実性が増してきている。希望的観測は排し、もう一度耐性を正面から見つめ直すことが必要となっている。

最後に、統合10年を経て真価が問われるのはこれから、広がる海にどんな絵を描くか。目線を上げて、次の10年に向けて、次への準備、次なる前進に向けて、確実な一歩となるよう頑張っていきたい。