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配送アプリ「ダイヤク」運営のセルート、入館方法や接客例を参照できる機能を開発

新サービスが浮き彫りにする配達員の「質」

2021年7月6日 (火)

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ロジスティクス「この高層ビル、どこから入ればいいの?」「渋滞で配達が遅れてしまった。どう説明すればいいか」――。シェアリングエコノミー配送アプリ「DIAq」(ダイヤク)を運営するセルート(東京都新宿区)が、高層ビル・商業施設の入館方法や接客時の対話例など、ダイヤクに登録した配達員が必要な知識を共有できる機能「DIAq wiki」(ダイヤクウィキ)を開発した。新型コロナウイルス感染症の拡大などを契機とした消費動向の変化に伴い、個人宅だけでなくオフィスへの配達需要も増加するなかで、注視されているのが配達員の「質」だ。こうした動きを反映したこのアプリは、まさに「ウィズコロナ」時代の配送サービスのあり方を問いかけている。

個人宅やオフィスへの配送需要が高まる一方で、スマートフォンの普及や企業の副業解禁により、インターネットを通じて単発の仕事を受注する「ギグエコノミー」と呼ばれる働き方が急速に広がっている。ダイヤクのアンカー登録者数は、ことし6月時点で8300人と急増している。一方で、ギグエコノミーで報酬を得る「ギグワーカー」はそれぞれ独立した個人事業主であり、スキルや情報を自由に共有する機会を得にくいのが現状だ。

宅配員が注目されるようになったのは、「Uber Eats」(ウーバーイーツ)が普及したのがきっかけだ。コロナ禍も追い風となり、便利なサービスとして注目を集める一方で、配達員の身だしなみや接客時の応対、商品の扱い方などへの苦情がSNS(コミュニティ型の会員制サービス)に投稿されるようになった。ある有名人が「配達員が汚い」ことを理由にウーバーイーツを使わないと発言したことも、話題となった。

ダイヤクウィキは、配達員が、配達時の行動だけでなく接客時の会話例を参照できることから、こうした配達員のイメージを改善できるシステムと捉えることができそうだ。

(イメージ画像)

入館方法が特殊な高層ビルや商業施設をはじめ、さまざまな建物の情報を確認できる。住所やビル名による検索のほか、現在地から近い建物の情報を探して確認することも可能で、配達時に迷ってしまうトラブルを減らせる。配送先が見つからない場合や、交通事情による遅延など、シーンに合わせたメッセージテンプレートも収録し、丁寧な接客につなげられる。

ダイヤクウィキの開発に中心となって携わったのが、セルートの実践型インターンシップに参加する劉敬安(リュウ・ケイアン)さん(22)。「徹底したユーザー目線と柔軟な発想で発案した企画」(セルート)という。

「空き時間を使って働きたい」と願う配達員と、接客にも「品質」を求める顧客。社会の変化で生まれた新しいマッチングビジネスは、さまざまなイノベーションを巻き起こしている。ダイヤクウィキは、こうした動きを象徴したサービスとして、注目を集めそうだ。(編集部・清水直樹)