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アート、ヤマト引越会社を来年1月に連結子会社化

2021年8月2日 (月)

M&Aヤマトホールディングス(HD)は2日、傘下のヤマトホームコンビニエンス(東京都中央区)の発行済株式の51%をアートコーポレーションに譲渡すると発表した。2022年1月に譲渡手続きが完了した段階で、ヤマトホームコンビニエンスはアートコーポレーションの連結子会社となる。ヤマトホームコンビニエンスはヤマトHDの連結子会社から外れる。アートは、今回のヤマトホームコンビニエンスの連結子会社化で、業界トップクラスの引越事業グループに躍進することになる。国内引越業界の勢力地図を塗り替えることで、業界再編の「呼び水」になる可能性も出てきた。

アートはヤマトホームコンビニエンスの発行済み株式の過半数を取得するが、ヤマトHDも49%を継続保有することで、一定の経営的な関与の余地を残す。しかしながら、アートの傘下に入ることで、ヤマトホームコンビニエンスの経営の主導権がアートに移ることは確実で、事実上の「事業譲渡」の色彩も濃い。

迷走の末に事実上の「譲渡」となったヤマトの引越しビジネス

ヤマトの引越事業は、かつては日本通運に次ぐ収益を稼ぎ出すリーディングポジションに君臨していた。ヤマトホームコンビニエンスは、旧ヤマト運輸引越事業部と物販事業を手がけていたヤマトホームサービスを合併して分社化。ヤマトは、経営資源を投入して引越事業を強化する方針だった。

そんな折に、代金の過大請求問題が表面化。2018年8月には引越サービスの新規受注を中止する事態となった。その後、事業体制の再構築を行い、単身者向け引越に事業を事実上絞って再開に踏み切ったものの、2022年1月の持株会社化への移行に伴うヤマトHD内の事業ポートフォリオの再構築の過程で、結果的に収益柱とすることを断念した。

ヤマトHDとアートは、2020年10月に引越事業に関する協業に向けた協議を開始。業界内の影響力をさらに高めたいアートと、引越事業の位置付けを明確化したかったヤマトHDの意向が合致する形で、今回のヤマトホームコンビニエンスの株式譲渡に至った。

アートは、ヤマトホームコンビニエンスの連結子会社化により、国内引越業界の売上高ランキングで、トップに肉薄することになる。現在はサカイ引越センターが首位を独走するが、後塵を拝してきたアートがヤマトホームコンビニエンスとの連合でほぼ肩を並べることになる。引越専業のアートは、かつてはサカイを突き放して国内トップに君臨していたが、その後サカイに首位を譲ってからは、低迷が続いていた。今回、ヤマトホームコンビニエンスを傘下に置くことで、アートは捲土重来のチャンスと位置付け、巻き返しを誓う。