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日中韓物流大臣会合、3目標を含む共同声明を採択

2021年8月23日 (月)

国際日中韓の物流のあり方について議論する「第8回日中韓物流大臣会合」が20日、日本の主催でオンライン形式で開催された。「強靭な物流ネットワークの推進」と「シームレス物流システムの実現」「環境にやさしい物流の構築」の3点を目標とする共同声明を採択。強靭で円滑かつ環境負荷低減を意識した物流の推進に向けた連携強化を推進することで一致した。今後の3か国における物流連携の方向性が注目される。

会合に出席した各国(出所:国土交通省)

会合には、赤羽一嘉国土交通相と中国の李小鵬(リー・シャオペン)交通運輸部長、韓国の文成赫(ムン・ソンヒョク)海洋水産部長官が出席。赤羽国交相は、新型コロナウイルス感染症の拡大をはじめとする世界的なリスクの発生時にも途切れることのない「強靭な物流」の必要性を強調。物流DX(デジタルトランスフォーメーション)化などによる「シームレスな物流」の必要性や、カーボンニュートラルをはじめとした近年の気候変動問題を踏まえた「環境にやさしい物流」について、3か国で連携して推進する重要性を訴えた。

中国の李部長と韓国の文長官も賛同し、共同声明を発出するとともに、今後の継続的な議論を進めることでまとまった。次回の会合は中国の主催で実施することを決めた。

共同声明では、「強靭な物流ネットワークの推進」について、実現を阻害する課題に3か国で協力して対応するため国際物流政策における連携の重要性を認識し、各国の担当官に対し、国際・国内物流政策の経験やベストプラクティスの共有を継続的に行うよう促すべきとした。「シームレスな物流システムの実現」については、物流DX推進の前提として物流の各要素の標準化が重要であることから、物流の標準化がサプライチェーン全体の最適化につながることを認識し、3か国におけるパレットなど物流資材の標準化に向けて引き続き協力することが必要とした。またコールドチェーンの国際標準化への協力やトレーラーシャーシの相互通行の利用促進などにも積極的に取り組むことを確認した。

最後に「環境にやさしい物流の構築」については、モーダルシフト推進を通じた更なる物流効率化や、各輸送モード・物流施設におけるカーボンニュートラルの促進などによる地球環境の持続可能性の確保に取り組み、各国の政策の共有や環境にやさしい物流のための共同研究の強化を通じて、3か国と官民の協力を強化するとした。

日本は3か国の物流連携で主導権を握るべし

今回の日中韓物流大臣会合は、日本が主導する形で共同声明の発表にこぎ着けた。消費スタイルの多様化や新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う物流ニーズの拡大と高度化が、今後もさらに加速することを見据えて、戦略的な連携要素を含めた内容となったことは、一定の評価ができると考える。

今後は、より具体的な連携策を構築し、具体的な成果を示すステージに入る。世界第2位の経済大国になった中国が、圧倒的な貨物取扱量をかさに存在感を誇示してくると予想されるなかで、物流品質で世界に冠たる実績を誇る日本が主導権を握る形で議論を進めていくべきだ。

3か国の貿易総額は2020年実績で世界の総額の18.7%を占める。政治的に不安定な要素を相互に抱える3か国だが、隣国として経済的な結びつきは強く、互いの経済発展には物流連携の強化が不可欠なのは言うまでもない。今後の事務レベルを含めた具体的な協議の行方こそが、日中韓における物流連携の真価を問われることになる。日本は主導的な役割を果たし、3か国の物流の最適な姿を世界に示してほしい。(編集部・清水直樹)