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JR東、「新幹線レールゴー・サービス」9月末で終了

2021年8月23日 (月)

ロジスティクス東日本旅客鉄道(JR東日本)は23日、東京と仙台・新潟間で実施している小荷物輸送「新幹線レールゴー・サービス」をことし9月30日で終了すると発表した。新幹線を活用した荷物の迅速な輸送手段として一時は高い人気を誇ったが、宅配便の急速な普及と輸送リードタイムの高速化などを受けて、駅まで荷物を持ち込む必要がある新幹線レールゴー・サービスの優位性が低下。輸送ニーズの多様化を反映する形で、姿を消すこととなった。

JR東は、東京ー仙台間と東京ー新潟間をそれぞれ東北・上越新幹線を活用してレールゴー・サービスを展開。新幹線の高い定時性を生かして、車両の専用スペースで荷物を輸送していた。

ルーツは、国鉄時代に全国の駅で受け付けていた手荷物サービスだ。主に個人向けの荷物輸送サービスを手がけており、専用の荷物車も存在していた。その後開業した東海道・山陽新幹線や東北・上越新幹線にもサービスを拡充。当時は高速道路網も地方エリアではまだ未開通区間が多かったことから、新幹線のレールゴー・サービスの優位性は高く、ビジネスマンを中心に高い人気を誇った。

しかし、国鉄末期の経営悪化に加えて、ヤマト運輸をはじめとする、集荷機能も持つ宅配便サービスが急速に普及すると、駅まで持ち込まなくてはならないレールゴーサービスの利便性は相対的に低下した。国鉄は1986年に新幹線を除く小荷物輸送から撤退。その後もインターネットの急速な普及などで需要は減少の一途をたどり、東海道・山陽新幹線でも2006年にレールゴー・サービスを廃止するなど、使命は既に終わろうとしていた。

JR東は、新幹線レールゴー・サービスに代わる新しい輸送サービスを検討中で、ことし9月に公表するとしている。

新幹線による荷物輸送は新時代に

かつて「夢の小荷物輸送」ともてはやされた新幹線レールゴー・サービスは、その役目を終えた。未だにスピードの優位性はあるものの、集荷機能がないことが致命的となり、インターネット普及による書類文化の退潮も重なって、存在理由が解消したのが理由だろう。

山陽新幹線が開業・延伸した1970年代には、新幹線を使った貨物輸送計画が持ち上がり、本格的なダイヤ検討もなされたという。しかし実現には至らなかった。国鉄の経営悪化や民業圧迫などさまざまな理由が取り沙汰されている。いわば折衷案の形で登場したのが新幹線レールゴー・サービスだったのだろう。

一方で、新幹線を使った貨客混載による輸送サービスが急速に広がり始めている。こちらは小荷物の輸送ではなく農産品の産地直送が主なビジネスだが、新幹線の定時性と高速性を売りにしているのは変わらない。しかし、貨客混載ビジネスが通年の本格的なサービスとして定着するか否かは、正直なところ見通せないのも実情だ。人件費や輸送コスト、輸送量などクリアしなければならない課題もある。新型コロナウイルス感染症の拡大がある程度収束して旅客が戻ってきた際に、貨客混載サービスを存続させる判断をするかどうか。鉄道事業者の判断が注目だ。

新幹線を使った輸送サービスは、国内における運輸サービスのトレンドの変化だけでなく、政治や世相に翻弄されてきた歴史だ。その象徴が新幹線レールゴー・サービスだったとは言えないか。(編集部・清水直樹)