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スタートアップ向けの幅広い物流需要に対応

西濃運輸、他社機能も活用する新サービスを開始

2021年10月14日 (木)

▲「Ippo」のサイトトップページ(出所:西濃運輸)

ロジスティクス西濃運輸は14日、LOGISTICS TODAYの取材に対し「自社のインフラにこだわらず、案件に応じて他社の機能を活用」して荷主に最適なサービスを提供する新たな取り組み「Ippo」(イッポ)を今月から開始したと明かした。

Ippoは、西濃運輸が10月4日から提供を開始した新サービスで、顧客の物流課題に対し、西濃の全国輸送網を基盤としながらも「自社のインフラ機能」のみにこだわらず、必要に応じて温度帯輸送などの他社が持つ物流機能を活用する取り組み。

これにより、同社グループが提供しきれない物流機能であっても同社が顧客の「物流の窓口」としてコンシェルジュのようなサービスを提供することにより、荷主に最適な物流サービスを提案する。

具体的には、輸配送、倉庫保管、国際物流、人材派遣、金融など、物流が関連する幅広い「困りごと」を抱える企業による利用を想定。特に、新規に事業を始めるスタートアップ企業などに適したサービスとして売り込む。

西濃運輸を中核とするセイノーグループでは「オープン・パブリック・プラットフォーム」(O.P.P.)を掲げて物流業界全体としての効率化を目指しており、Ippoはこれを具体化する取り組みのひとつに位置づける。

同社は「困ったら当社にお声掛けいただける、そのような、顧客との末長い関係づくりを行っていきたい」と話している。

物流業界で会社の壁がなくなる日がやってくるのか

西濃運輸が、他社機能も活用した荷主への最適サービスを提供する取り組みを始めた。自社のインフラ機能にこだわらず、最適な物流サービスを提供することで、荷主への最適な物流をコーディネートする役割を果たす。物流サービスを荷主に提供する新しいアプローチとして注目に値するとも考えるが、課題は物流サービスの「コンサルタント力」ではないだろうか。

特別積合せ事業のパイオニア的存在として知られ、戦後いち早く長距離路線トラックを走らせたことで知られている西濃運輸。輸配送や保管をはじめとする物流業の全体像を把握している強みを生かした新サービスとして打ち出した取り組みだ。消費スタイルの多様化に新型コロナウイルス感染症の拡大を経て、物流業界の構造は大きく変わった。物流サービスへのニーズが高度化・多様化するなかで、単独の企業で荷主の要請を満足しきれないことを認識して、コーディネート役を買って出たという印象だ。

とはいえ、西濃運輸が踏み出した取り組みは、物流業界を活性化する意味では大きな意味を持つのは確かだろう。差別化が難しい業界である物流で、今後はサービス内容を競うよりも強みを集めて顧客に提供する方が得策と考えるのは、むしろ当然の帰結かもしれない。今後の業界再編にさえも波及しかねない、大きな第一歩になる可能性も感じずにはいられない。(編集部・清水直樹)