ロジスティクスフィジカルインターネットセンター(JPIC)は16日、オンラインセミナーを開催、本誌LOGISTICS TODAYの赤澤裕介編集長が登壇し、「顕在化した2024年問題の実影響」をテーマに講義した。
赤澤編集長は、働き方改革は物流業界にとって必然の取り組みとしながら、そこから派生した課題として、人件費など物流コストの上昇、これまで当たり前だった納期の見直し、配送遅延など、すでに顕在化した課題、これから発生するであろう課題を整理した。
すでに顕在化しているものとして、製造業ではジャストインタイムの生産計画が崩れ、生産体制や配送網、委託先の見直しなども進む状況だ。
荷主・製造の業種ごとでは、食品や医薬品における影響の大きさを指摘。産地・水揚げ地からの夜間長距離輸送も困難になり、コスト高騰は加速する。受ける小売業も納品回数の削減などは必須、コンビニエンスストアチェーンにおいても配送網の統廃合が進展する。医薬品においても、遠隔地・緊急時の配送などの強靭性が低下し、必要な時に必要な薬品が手に入らないこともあり得ると警告する。
自動車業界への影響も深刻だという。関わるサプライヤーも多いだけに、多数の部品や原材料のやり取りへ波及する。関連する部品メーカー、タイヤメーカーなど広範囲にわたる業種の再編も現実のものとなっているという。
一方、物流・運送領域では、ドライバー自体の確保が課題となり、中小運送事業の経営が成り立たない状況も、倒産数増加という形で明らかになっている。
さらに赤澤編集長は、「これから起こりうるリスク」として、トラック適正化二法の見直しによる、運送業を取り巻く環境変化を上げる。運送事業許可更新制度の導入、多重下請け構造を2次受けまでに規制する努力義務などが、さらなる事業者削減を招くこともあり得ると注意喚起する。6万3000社以上とされるトラック運送事業者が半減以下まで落ち込むとの予想もあるが、これはかつて24年問題で指摘された輸送力不足に組み込まれていない新たなリスクであると、状況の深刻さを訴える。現在、運賃規制の施行に向けて、最低運賃水準が検討されているが、荷主にとって現状とかけ離れた運賃規制となれば、事業に与える影響は計り知れない。
これまで通りの物流サービス水準を維持することは難しい状況で、さらに厳しい状況も予想される。赤澤編集長は、サービス品質基準の見直しや、運賃値上げの対応なども、これからは業界全体で足並みをそろえることを意識することも重要ではないかと訴えた。
また、自動化、DX(デジタルトランスフォーメーション)は、荷主・運送・物流の各事業者共通の前提となる。そのための投資を含めた事業戦略を基盤とした、効率化レベルの底上げや裾野の拡大、また、消費者サイドの意識変容も、引き続き訴え続けることが求められるとともに、先進的事例による劇的な改革ではなく、現状の解決策、企業間の連携を深めることによる現実的な解決策の追求を呼びかけた。
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