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国際的な医薬品サプライチェーン構築に弾み

日通、関空の貨物温度管理施設でGDP認証を取得

2022年2月16日 (水)

メディカル日本通運(東京都千代田区)は16日、関西国際空港の国際貨物上屋内で運営する医薬品をターゲットにした温度管理施設において、医薬品の適正な流通基準であるGDP(Good Distribution Practice)の認証を取得したと発表した。同社が進める、世界の主要空港の近くでワクチンや医薬品を保管できる物流施設整備の一環で、同社は今年度中をめどに世界23か国・地域の31拠点で整備を計画している。国際的な医薬品サプライチェーン構築へ弾みがついた格好だ。

今回GDP認証されたのは昨年7月、関西国際空港内に、厳格な温度管理が可能な国際航空貨物の物流拠点として新設された温度管理施設「NEX-PHARMA Logistics Hub Kansai Airport」(ネックスファーマロジスティクスハブカンサイエアポート)だ。

▲施設の内観(出所:NIPPON EXPRESSホールディングス)

この温度管理施設は、床面積568平方メートルで、輸出入貨物の一時保管や梱包、通関などのサービスを担う。

温度管理における特徴として、医薬品定温エリアとして、15~25度(定温)、2~8度(冷蔵)の温度帯に対応▽5度(冷蔵)、マイナス20度(冷凍)の一般品保冷エリアを併設▽温度を常時システム監視することで、バリデーション(検査・分析の方法やその作業プロセスなどが適切であるか科学的に検証すること)結果の提示が可能▽設定温度条件から逸脱した場合には、システムによる警告発報で即時認識が可能――であることを挙げている。

このほか、品質の確保についての特徴として、ドックシェルターの設置▽非常用バックアップ電源の設置(2021年8月末稼働開始)▽定温庫内で温調コンテナの給電が可能▽防塵、防虫、内壁帯電防止仕様――を掲げている。

セキュリティーの強化としては、施設内に監視カメラシステムを設置しているほか、全室ICタグにより入退室を管理していることを特徴としている。

同社によると近年、医薬品については、世界的にGDPをはじめとした品質基準への厳格な対応が求められており、輸送・保管中の温度管理についても、求められる品質水準が高まりつつあり、海外では法制化も進められているという。

この温度管理施設は、医薬品産業貨物の取り扱いを主軸としており、2018年12月に厚生労働省から発出された「日本版GDPガイドライン」に準拠した対応を目指している。

▲施設の入口(出所:NIPPON EXPRESSホールディングス)

同社はまた、IATA(国際航空運送協会)が提唱する医薬品輸送品質認証「CEIV Pharma」(The Center of Excellence for Independent Validators in Pharmaceutical Logistics)の取得を目指し、関西エアポートが主催するKIX (関西国際空港の空港コード)Pharmaコミュニティに参画している。

この認証を取得した際には、国内で初めて空港内にGDP関連認証を取得した施設を運営する航空貨物フォワーダーとなり、自社体制でGDP認証施設を運営することとなる。それにより、西日本のゲートウェイである関西国際空港において、安全かつ高品質な温度管理輸送サービスの提供が可能になる。

同社が進める世界の主要空港近くでの物流施設の整備は、新型コロナウイルス感染拡大前から増加する医薬品やワクチンの国際物流量の増加傾向に対応したものだ。

同社は、国内においてもGDPの法制化の可能性があるとして、昨年2月までに埼玉県や大阪府など国内4か所にGDP基準を満たした医薬品センターを設立している。

日本通運を傘下に置くNIPPON EXPRESSホールディングス(NXHD)は、23年度を最終年度とするグループ経営計画で、国内外における体制の整備により、医薬品物流の売上高を21年度の400億円から23年度に700億円へ引き上げる方針を示している。

NXグループ、医薬品輸送ビジネス強化で経営基盤を盤石に

NXグループが、医薬品サプライチェーンの増強に向けた取り組みを強めている。グループ経営計画で、医薬品物流の売上高を23年度に21年度実績の75%増とする方針を掲げる。国内を含めた先進国における少子高齢化に加えて、新興国における経済成長による医薬品需要の世界的な高まりを見据えた動きと見るべきだろう。

医薬品物流は、参入障壁が高いものの、ポートフォリオに組み込むことに成功すれば収益の高いビジネスになる領域だ。法規制を含めた、繊細な温度管理や輸送品質の確保が必要であることから、先行投資の拠出も迫られる。参入の権利を得られるプレーヤーは、意外にも限られるのだ。

しかし、参入を果たし事業化できた暁には、グローバル輸送サービスの根幹を成す領域として収益化を見込むことが可能だ。航空機で効率的に輸送できる利点があるのはもちろんのこと、何よりも成長産業の代表格だからだ。NXグループは、拠点空港における医薬品輸送に向けた各種施策を次々と講じている。ここで確実に医薬品輸送の需要を握ることにより、成長戦略を磐石にする狙いがある。(編集部・今川友美、清水直樹)