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ESR、名古屋湾岸部でマルチ型物流施設を今秋着工

2022年4月11日 (月)

拠点・施設ESR(東京都港区)は11日、マルチテナント型物流施設「ESR名古屋南ディストリビューションセンター2」(名古屋南DC2、名古屋市港区)の開発を決定したと発表した。中京圏の湾岸エリアでは、伊勢湾岸自動車道沿線を中心に物流倉庫の開発が急ピッチで進んでいる。消費スタイルの多様化に伴う物流ニーズの高度化に対応するため、中京圏でもこうした倉庫の新設が今後も加速しそうだ。

▲ESR名古屋南ディストリビューションセンター2完成イメージ(出所:ESR)

名古屋南DC2は、地上4階建てで1階にトラックバースを備えたマルチテナント型物流施設として整備。ことし11月に着工し、2023年10月の完成を予定している。総投資額は110億円。

ESRによる物流倉庫開発は、中京圏では6件目のプロジェクト。名古屋市中心部から12キロに位置し、名古屋市中心部や周辺部を結ぶ高速道路をはじめとする主要道路のアクセスも良好だ。名古屋市中心部などの近距離配送だけでなく、北陸や関西など広域アクセス拠点としての活用にも適した立地が強みだ。

名古屋港飛島ふ頭北コンテナターミナルまで14キロ、中部国際空港まで34キロと、海上や航空輸送拠点への移動も容易であることから、輸出入貨物配送における倉庫機能としても活用しやすい。さらに、近隣には住宅地や鉄道駅もあり、従業員確保の観点からも優位性が高い。

最小賃貸区画は1万4620平方メートル(4430坪)、賃貸区画は1階を3区画に分けてそれぞれ2階、3階、4階の1フロアとの2層で提供。最大3テナントへ分割賃貸が可能な仕様とする。各区画は荷物用エレベーターと垂直搬送機で高い縦方向の搬送能力を整備。倉庫エリアの床荷重と柱スパン、梁下天井有効高はいずれも最新型物流施設の仕様とし、幅広いニーズに対応できる汎用性と保管効率を確保する。

ESRは、名古屋南DC2の開発においても基本理念「HUMAN CENTRIC DESIGN.」(人を中心に考えたデザイン)を踏襲。駐車場を十分に確保するとともに、休憩室を備えるなど施設利用者が快適に過ごせる職場環境の創出を意識する。

環境への対応策は、全館LED照明や外壁への断熱性能の高いサンドイッチパネルの採用、ヒートポンプ式空調や節水器具など省エネルギー最新設備・機器の導入など、脱炭素に配慮した建築計画を推進。自家消費型の太陽光発電システムを導入してグリーンデザインも積極的に取り入れるなど、再生可能エネルギー性能を高めテナント企業の運営効率の向上を図る。BCP(事業継続計画性)対策として、建物を耐震構造とするとともに非常用自家発電設備を備えて、停電時でも防災センターや荷物用エレベーター、トイレなどが一定時間使用可能とするなど、災害機能を維持できる機能を設ける。

■ESR名古屋南ディストリビューションセンター2の概要

▲所在地(クリックで拡大、出所:ESR)

所在地:名古屋市港区本星崎町字南3998-9他
敷地面積:1万8396平方メートル(5565坪)
延床面積:4万8753平方メートル(1万4748坪)
完成予定:2023年10月31日
交通:国道23号(名四国道)「⻯宮インターチェンジ(IC)」1.8キロ、名古屋高速3号大高線「笠寺IC」2.8キロ、名古屋高速4号東海線「船見出入口」3キロ、伊勢湾岸自動車道「東海ジャンクション(JCT)」6キロ/名鉄築港線「東名古屋港駅」800メートル、名鉄常滑線「大江駅」1.6キロ

■ESRの名古屋南DC2開発、東海道メガロポリスにおける物流の新しい機能を意識している

新東名高速道路と新名神高速道路を両端で結節する伊勢湾岸自動車道は、中京圏だけでなく、東海道メガロポリスを貫く輸送の大動脈として君臨している。国内最大の物流網を構成する、極めて重要な路線である。その沿線では、物流施設の開発が目白押しであるが、それでも旺盛なニーズへの対応は決して磐石ではない。

ESRは、製造業が高度に発達し、首都圏・関西圏に続く裾野の広い経済圏を抱える中京圏に新拠点を構えることで、中京圏における物流ニーズの獲得とともに、東海道メガロポリスにおける中継拠点としての役割も見込んでいるようだ。

物流開発事業者は、東海道メガロポリスにおける物流拠点配置について、頭を悩ませている。全ての大都市に物流施設を置くのはあまりにも非効率的だ。とはいえ、主要都市圏に集中させるのも、BCPや物流における汎用性の観点から合理的ではない。結果として、機能を分散させてリスクを回避しながら、収益も確保できる都市圏の近郊に開発地を選定する形に落ち着く。

(イメージ)

ESRは、中京圏での物流施設開発を強化する意図として、荷主企業による「中継拠点」ニーズを想定している印象が強い。トラックドライバーの労務管理や物流オペレーションの効率化の観点から、起点と終点の途中に中継機能を設けて荷物のみ直行させる取り組みが全国の主要高速道路などで試行されている。

中京圏や滋賀県の新名神沿線は、こうした大都市圏の中継拠点としての機能を見越した開発プロジェクトを手がける動きが目立ってきている。東海道メガロポリスをめぐる物流の姿は、荷物の量だけではないさまざまな要素で変遷を遂げている。まさに、「物流は時代を映す」所以だ。(編集部・清水直樹)