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地方における物流施設開発の「あるべき姿」提示する7年越しのプロジェクト

大和ハウス「DPL長野千曲」が示す2つの利点

2022年8月22日 (月)

(イメージ)

話題日本三大河川のひとつに数えられる信濃川。新潟市で日本海に注ぐこの川は、長野県に入ると千曲川とその名を変える。その名のとおり曲線を描きながら信濃の街を南北にめぐり流れるその流れは、この地にこれまで多くの恵みをもたらしてきた。この千曲川を間近に望む長野県千曲市の産業団地に、県内最大級の物流施設が誕生する。

大和ハウス工業が2023年4月の完工を予定するマルチテナント型物流施設「DPL長野千曲」。千曲市との「公民連携」で21年8月に造成が完了した敷地面積14万4000平方メートルの産業団地「Dプロジェクト長野千曲」で進む、地域密着型の物流施設開発プロジェクトだ。

7年越しの夢、「信州の物流拠点」の獲得

大和ハウス工業にとって長野県で最初の物流施設開発となるDPL長野千曲は、用地の確保から含めるとDPL長野千曲の完工まで実に7年越しのプロジェクトだ。このプロジェクトを途中から引き継ぎ、上司と二人三脚で進めてきた長野支店建築営業所の山崎大輔課長は土地取得の経緯をこう語る。「開発条件を模索するなかで不可欠な要素と位置付け、上司が土地を取得するうえでこだわっていたのが、長野県における交通の要衝である『更埴ジャンクション(JCT)』に近い立地でした」。用地選定の条件として高速道路によるアクセス性の高さを最優先事項と考えていた。

▲DPL長野千曲の完成イメージ

更埴ジャンクションは、千曲市にある長野自動車道と上信越自動車道の結節点だ。西は松本市を経由して中央自動車道を経て名古屋方面へ、北は長野市から新潟県上越市へ、南は関越自動車道を介して首都圏に至る。まさに県内における道路輸送網の要衝だ。

周辺には工場や事務所など企業の関連施設が多く進出。「信州の物流適地」として高いポテンシャルがあるエリアだ。大和ハウス工業が千曲市との公民連携事業に参画した狙いもそこにある。

首都圏と日本海側の「中継拠点」という役割

大和ハウス工業がこうした好立地に開発するDPL長野千曲。ここで、長野県に物流施設ネットワークを広げる目的を確認しておこう。一般的には、長野県における広域物流機能は、首都圏の拠点が管轄するケースが多い。長野県に新たに物流施設が整備されることで、どんなメリットが生まれるのだろうか。

「大きく2つの利点があると考えています。まずは、首都圏と新潟県など日本海側の各地を中継する拠点としての機能です」(山崎氏)。確かに、首都圏と日本海側の新潟県上越地方から富山県、石川県を結ぶ輸送ルートでほぼ中間に位置するのが千曲市だ。

▲首都圏と北陸3県をつなぐ中継輸送に適した立地を誇る

自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限が960時間に制限されることで生じる「物流の2024年問題」も視野に、ドライバーの就労環境を改善する対策として注目される中継輸送。保管や仕分けなどの荷扱い機能に加えて、新たな物流施設の役割として期待されている。

もう一つのメリット「県内物流拠点の集約の受け皿に」

もう一つのメリット。それは県内交通の要衝である更埴JCTに近い立地に関係しているという。「県内各地に点在する物流拠点をDPL長野千曲に集約したい。こうしたニーズが我々の想定以上に高いことがわかってきたのです」(山崎氏)

▲「『県内各地に点在する物流拠点を集約したい』とのニーズの受け皿になる」と話す、大和ハウス工業長野支店建築営業所の山崎大輔課長

山地の占める割合が高く県土の広い長野県を地盤とする物流事業者は、県内の主要都市に拠点を置いて県域をカバーする事業戦略を築いてきた。とはいえ、高速道路網が発達した今、こうした拠点体制の集約は経営コスト削減と業務効率化の観点からも、避けて通れない命題になっている。とはいえ、自社で大型の物流施設を新たに設けるのも現実的ではない。そこで注目されるのが、DPL長野千曲のような賃貸型の大型倉庫というわけだ。

こうして考えると、更埴JCTに近く県内移動が容易な立地の優位性は極めて高いことがわかるだろう。

地元自治体との「災害協定」締結で被災時の住民受け入れを決定

DPL長野千曲の機能面はどうか。地上2階建てのボックス型で、1階と2階を活用したメゾネット仕様だ。冬季の積雪に配慮して、建物の中央に車路とバースを設けた構造とする計画で、ここは信州ならではと言える。「季節を問わずスムースな荷物の積み降ろしを実現できる環境を整える狙いです」(山崎氏)

最後に、特筆すべき機能として2階に設けたラウンジについて紹介する。大和ハウス工業はことし3月、千曲市との間で「災害時等における避難者の受け入れに関する協定」を締結。DPL長野千曲を指定緊急避難場所と位置付けて、災害発生時にラウンジと1階・2階の廊下など共用部を住民に提供し、計48人を収容する。


(クリックで拡大)

「2019年10月に発生した千曲川の決壊による洪水を契機に、開発地の地盤面を2.3メートルかさ上げしました。こうした取り組みの結果、BCP(事業継続計画)対策はより高水準になりました。まさに地域密着の物流施設を目指すDPL長野千曲の象徴というべき活動です」(山崎氏)

地方にも特有の経済が存在する。それが日本という成熟した国家の強みだ。大和ハウス工業は、こうした地域の産業を支える物流ニーズを的確に抽出することで、地域に貢献していくビジネスモデルを全国で構築しようとしている、ここ長野での取り組みは、その代表例となることだろう。それは、大都市圏から離れた地方部における物流施設開発の「あるべき姿」を示唆しているのではないだろうか。

DPL長野千曲紹介ページ(大和ハウス工業ウェブサイト)

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