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ホワイト物流推進運動、荷主や卸小売の賛同鈍化

2022年11月18日 (金)

環境・CSRトラック輸送の生産性向上やドライバーの労働環境改善などを目指す「ホワイト物流」推進運動で、賛同を表明する荷主や納品先企業側の動きが鈍化している。同運動のホームページ(HP)が公表している統計によると、賛同企業数は全業種で計1472社(2022年9月末時点)で、運輸・郵便業に比べると、製造業や卸売・小売業は伸び率が小幅だ。同運動は「荷主企業と物流事業者が相互に協力して物流改善を」と呼び掛けており、業種の垣根を越えた一体的な取り組みが求められる。

同運動HPによると、賛同表明した企業数は現在、運輸・郵便業が3年前から3.8倍の789事業所と伸長している。一方で、荷主・納品先側は製造業が390事業所、卸売・小売業が121事業所といずれも1.6倍程度にとどまっており、運輸・郵便業が過半数を占め、製造業は26.4%、卸売・小売業は8.2%。

(イメージ)

ホワイト物流推進運動は、国土交通、経済産業、農林水産の3省が主導するもの。ドライバー不足を背景に、物流の生産性向上や働き方改革の両立に向けて、荷主や納品先、物流などを巻き込んだ国民運動としてスタートした。具体的には、荷待ち時間の削減や荷役作業の負担軽減を目指し、全上場企業と主要企業6300社に参加を要請。19年9月末時点で559企業が、目標の実現に向けた「自主行動宣言」の必須項に合意し、賛同を表明した。

同運動の実施期間は、トラック運転手の時間外労働の上限規制が導入される2024年4月1日まで。事務局は、賛同を表明している荷主企業を招いた啓発セミナーやSNSによる情報発信、経済団体への周知を通じて荷主側らへの協力要請を強化している。

荷主企業らの賛同表明が低調になっている背景として、販売環境の厳しさが増していることが挙げられる。直近2年間は新型コロナウイルス禍で店頭販売の自粛・抑制に加えて、今春から続く原材料やエネルギーコストが上昇。消費者の節約志向も相まって、経費上昇分の価格が製品に転嫁ができない事態が続いており、物流の見直しにまで着手できていない可能性もある。

同運動事務局を務める国交省自動車局貨物課の担当者は「運動は各社による任意での取り組みで強制ではない」とした上で、物流の2024年問題を念頭に「ホワイト物流の推進は働き方改革にもつながる。各業界での成功事例を知ってもらえるよう周知活動を継続していく」と話している。

ホワイト物流の推進、まずは現場の「矛盾」解決が先ではないか

物流の2024年問題などを念頭とした、物流業界における「働き方」を巡る議論が加熱するなかで、推進に向けた動きが鈍化しているホワイト物流。国交省など行政が推進する輸送現場の業務改善策の一環だが、必ずしも思惑通りには進んでいない。背景には、現場における生産性向上と働き方改革の両立の難しさ、さらには荷主企業と物流事業者の間における温度差もあるようだ。

EC(電子商取引)サービスの急速な普及により、輸送現場で取り扱う荷物が急増。一方で、輸送品質の維持に向けた要請は変わらない。こうした相反する動きに対応するため、輸送現場では生産性の向上が喫緊の課題になっている。

同時に機運が高まっているのが、ドライバーの就労環境の改善だ。しかし、長時間勤務の抑制や休息時間の確保が叫ばれるなかで、業務の繁忙さはまさに「とどまるところを知らない」のが実情で、こちらも矛盾をきたしている。

ただでさえ実現へのハードルが高いホワイト物流。追い討ちをかけるのが、荷主の思惑だ。コスト上昇分の負担を物流事業者が荷主に転嫁しにくい状況は、エネルギー価格が高止まりの状況にある今も変わらない。荷主の立場からすれば、消費者への配慮から製品への価格転嫁は絶対に避けたい。「物流現場への配慮は二の次」なのが本音だ。

ホワイト物流を推進する前提として、こうした輸送現場における矛盾の解決が欠かせないだろう。荷物の山を目の前にして、輸送現場は足元の業務への対応を優先せざるを得ない。もちろん、「鶏が先か、卵が先か」の議論の側面もあるのだが。(編集部・清水直樹)

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