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物流危機回避へ解決具体策の骨子案、国交省など

2022年12月14日 (水)

行政・団体国土交通省、経済産業省、農林水産省は13日に開催した「持続可能な物流の実現に向けた検討会」の第4回会合で、人手不足や多重下請け構造など物流業界の課題解決に向けた施策を示す「中間とりまとめ」の骨子案を示した。3省は骨子案をもとに、2023年1月17日に開催予定の第5回会合で中間とりまとめを提示する予定。23年中に最終的な取り組みとしてまとめる方針。

骨子案の中では、物流の持続可能性を高める観点から「物流の危機的状況に対する消費者や荷主企業の理解が不十分」とステークホルダーの幅を広げた議論の重要性を指摘。社会的な「物流の2024年問題」の認知度の低さや経営層の意識向上をポイントに挙げた。

具体的には、非効率な商慣習や多重下請け構造、取引の適正化といった各種ガイドラインに実効性を持たせるよう、新たなインセンティブの打ち出しを提言。類似の法令を参考に、規制的な措置なども検討するべきとした。

(イメージ)

物流プロセスの課題としては、荷待ちの待機や荷役作業に係る労働時間の削減をはじめ、納品回数の減少やリードタイムの延長といった平準化を図る措置の検討、契約条件の明確化などを明記した。貨物自動車運送事業法に基づき、荷主への協力を働き掛けることも盛り込んだ。

また、省力化や脱炭素化といった社会課題に対して、デジタル技術を活用した共同輸配送や帰り荷確保を実施。荷主企業や消費者の意識改革についても推進する方針なども示した。

物流業界における構造的問題の解決に向けた「骨子案」、消費者や荷主を交えた全体最適の発想を促す契機にしたい

スマートフォンの操作で自宅にいながらあらゆる商品を購入できる。届く時間も指定できる。そんな生活が、いつの間にか当たり前になった。こうした消費スタイルに適応するため、小売店や飲食店は宅配サービスをさらに充実させようと躍起になる。こうした商流の動きに呼応して、荷主企業は物流事業者にさらなる輸送品質の向上を求める――。

新型コロナウイルス感染拡大などを契機とした物流業界の繁忙さは、EC(電子商取引)サービスの拡大や人手不足に起因する。昨今の物流業界における構造的な問題における検証と言えば、おおむねこうした文脈で語られているのだろう。しかし、それはあくまでもある「真因」の結果として発生している事象なのであり、本質的な検証にはなっていないと考えるのが妥当だ。

国土交通と経済産業、農林水産の3省が示した、人手不足や多重下請け構造など物流業界の諸問題の解決に向けた施策を示す「中間とりまとめ」の骨子案。こうした真因を探索して根本的な問題解決に挑む姿勢を明確にした意味で、行政もいよいよ本腰を入れ始めたと感じる。

それを象徴するのが、3省が骨子案に盛り込んだ「物流の危機的状況に対する消費者や荷主企業の理解が不十分」との文言だ。物流という概念は、輸送や倉庫といった業務に直接携わる事業者だけでなく、その恩恵を享受する消費者や実務に有形無形の影響を与える荷主の存在を含めた機能であることを明文化することで、問題解決には連帯して取り組む必要があると訴えているからだ。

物流という仕事は、産業界を含めた社会における「黒子」と認識されてきた。ECサービスの普及だけでなく、自然災害における復旧・復興への取り組みなども広く国民に認知されることで、物流を「社会に不可欠なインフラ」であると実感できる機会が近年相次いだことも、幸運だった。カーボンニュートラルへの対応という新たな観点も、それを後押ししたと言えるだろう。

持続可能な物流は、一次的な当事者である現場従事者による業務の効率化・最適化だけでは実現しないのは、もはや自明のことだ。ところが、どうも物流の利害関係者の顔が見えないまま、現場業務の問題解決策が語られてきたように思えてならない。こうした状態こそ、まさに部分最適の発想なのであり、「木を見て森を見ず」の議論になっていないか。今回の骨子案に基づく、全体最適を見据えた施策が必要だ。(編集部・清水直樹)

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LOGISTICS TODAY編集部
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