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本誌イベント「災害多発時代の新しい運行管理」にフジトランスポートとSpectee登壇

災害時の最適な運行管理、必要なのは「情報の共有」

2023年2月2日 (木)

▲オンラインイベント「災害多発時代の新しい運行管理」の配信の様子

話題LOGISTICS TODAYは2日、オンラインイベント「災害多発時代の新しい運行管理」を開催した。実際に災害で混乱する輸送現場を経験した「幹線輸送の変革者」であるフジトランスポート(奈良市)と、災害・事故の情報をいち早く入手して運行の維持を促す先進システムを提供することで「DX(デジタルトランスフォーメーション)の旗手」の地位を確立しているSpectee(スペクティ、東京都千代田区)。業界の異なる立場の2社が自然災害・事故時の実例を挙げながら、最新の動態管理と防災テックの掛け合わせによる対応のあり方について議論を繰り広げた。

▲Spectee CEOの村上建治郎氏

今回のイベントは、大雪による交通支障に直面したフジトランスポートの輸送現場の事例を検証。それを踏まえて、災害時における最適な運行管理を実現するうえでどんな情報が必要であるかを考えた。さらに、それを提供するスペクティが独自開発の危機管理情報サービス「Spectee Pro」(スペクティプロ)の具体的な機能ともたらす効果について解説。最後に、物流に携わる事業者が取り組むべき災害時の運行管理について意見を交わした。

災害時に必要な取り組みとして討論のなかで浮かび上がったのは、「適時での必要な情報の提供」「同じレベルの情報に関する関係者間での共有」の2点だ。

フジトランスポート奈良支店の乗務員である木田雅裕氏は、2021年1月に輸送業務中の北陸自動車道で大雪に遭遇して立ち往生した経験を語った。極寒の天候下での寒さ対策や周囲のドライバーの動向などについて当時を振り返りながら、「最新の正確な情報が届くこと。災害に直面したドライバーにとって、それがいかに大切であるかを実感した」と強調した。


▲フジトランスポート社長の松岡弘晃氏(左)と石川支店運行課長の柴野治彦氏

石川支店運行課の柴野治彦課長は「社内でも運行管理者やドライバーなど全員が、同じ情報を共有することで、適切な対応を講じることができる」と指摘。松岡弘晃社長も「『今日は危ない』『いや行ける』といった判断をするためにも、リアルタイムの情報は欠かせない」と話した。

こうした指摘に対して、スペクティの村上建治郎CEO(最高経営責任者)は「タイムリーな情報を必要に応じて入手できる環境があることで、先手を打つことができる」として、こうした取り組みを支援する機能としてSpectee Proの有効性を説明した。

災害時における輸送現場の最善策、その精度を高めるのは「情報の共有力」だ

ドライバーをはじめとする輸送の現場従事者は、災害による交通支障に直面した時にある選択を迫られる。安全を最優先に踏みとどまるか、あるいは荷主との約束を守るために強行するか。「災害時だから運べない」のか、それとも「災害時だからこそ運ばなければならない」のか。

ドライバーの安全第一なのは言うまでもない。とはいえ、社会に不可欠なインフラとしての役割が最も期待される災害という局面で、ギリギリの選択を迫られる最前線を担う人間の「使命感」のあり方について、もっと議論があってもよいと感じている。

▲フジトランスポート奈良支店乗務員の木田雅裕氏

今回のイベントは、まさに災害時における運送事業者のあるべき対応とその実現に向けた対策がテーマだった。北陸自動車道の大雪で立ち往生を経験したドライバーの体験談は、情報不足への懸念を赤裸々に指摘していた。しかし強く興味を抱いたのは、必ずしも当局やメディアなどが発するものだけでなく、むしろ社内での情報共有の難しさをも示唆していた点だった。

社内における情報共有。イベントで、現場のドライバーは交通情報で有意な立ち往生の情報を得ることができなかったと証言した。先行車が渋滞を後続車に知らせるハザードランプを点滅させても、それが立ち往生の始まりを意味するとは到底、想定できなかったという。高速道路を走行中にそんな事態を予測できるわけがないのは当然だろう。

今回の討論では、スペクティのCEOも登壇した。「今何が起きているかリアルタイムでわかる」とのコンセプトで展開しているサービスであるSpectee Proは、情報の「提供」とともに「共有」する手段としての機能を持つ点に留意する必要があるだろう。

(イメージ)

視聴者からの質問コーナーでは、フジトランスポートが活用するGPS(全地球測位システム)とSpectee Proの連携の可能性に関するものもあった。ITシステムの特性として、単独で存在するよりも複数で連携することで、より高い効果を発揮する能力があるという。

今回のイベントを契機として、新たなシステム連携による情報共有のさらなる円滑化の実現にも期待したい。それを促すのは、事業者による「情報共有」の認識の度合いにかかっている。(編集部・清水直樹)