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ラストマイル輸送手段にドローン、安中市で実証

2023年2月10日 (金)

ロジスティクスエアロネクスト(東京都渋谷区)は10日、セイノーホールディングス(HD)、群馬県安中市とともに、地域課題の解決に寄与する新スマート物流の構築に向けたドローン配送の実証実験を2月8日に実施したと発表した。10年、20年後を見据えた取り組みで、小学校、ゴルフ場、病院の3か所を結ぶ計3ルートについて、レベル3飛行(無人地帯での補助者を配置しない目視外飛行)で農作物や食品、処方薬などを、常時積み荷を空にすることなく運ぶなど従来にない複数の試みを行った。

実証では、旧小学校跡地を物流サービス拠点であるドローンデポとして仮設。ドローンの機体が離着陸する起点と終点として、地元農家の野菜や調理された弁当、オンライン服薬指導を受けた患者の処方薬などをデリバリーした。ラストワンマイルの輸送手段にドローン配送を組み込んだ。

▲新鮮な農産物と新幹線で届いたアンコウで調理されたから揚げ弁当とドローン(出所:エアロネクスト)

飛行距離は片道5〜10キロ、飛行時間は10〜15分程度。届けた弁当は、糸魚川から新幹線で届いたアンコウと地元産野菜を使ってレストランでシェフが調理したり、電動自転車で運んで店頭に陳列したりと特色のある内容となった。

実証は、3者が昨年10月に締結した包括連携協定に基づく第1弾で、国土交通省の「CO2削減に資する無人航空機等を活用した配送実用化推進調査事業」も活用して行われた。

セイノーHDとエアロネクストは、両社が開発を推進するドローン配送と陸上輸送を融合させた新スマート物流「SkyHub(スカイハブ)2」の社会実装を目指している。今回の実証終了後、安中市の旧松井田町エリアで新スマート物流の2023年度中実装を推進するとしている。

複数の輸送モードの組み合わせによる新たな付加価値の創出、それが次世代の輸送体系のあるべき姿だ

複数の輸送モードを組み合わせることで、新たな付加価値を生み出す。セイノーHDとエアロネクストが実用化を目指す新スマート物流の目玉は、貨客混載とドローン配送を組み合わせることにより、持続的な地域社会の継続に向けたさまざまな問題の解決に挑む取り組みと言える。

少子高齢化がさらに加速する近い将来、社会的な機能の確保が実質的に困難となる地域が各地で生まれると危惧されている。輸送事業者は、こうした地域住民の社会インフラを提供していく使命感はあるとしても、現実的に現在と同水準のサービスを提供し続けることは難しいのが実情だ。「全体最適」という大義名分も援用する形で、サービスの縮小に踏み切る局面が既に現実のものになろうとしている。

とはいえ、こうした“最適化”を少しでも緩和できないか。持続的な輸送サービスを維持する方策はないものか。こうした観点から生まれた発想が、輸送モードを横断的に解釈することによる新発想の輸送体系の構築だ。

輸送業界は、陸運や空運、海運といった領域ごとに細部化され、相互の連携は限定的だった。それぞれ特有の風土や流儀が出来上がり、同じ輸送ビジネスを展開する業界とは思えないほど独自の進化を遂げている機能も少なくない。

既存の社会システムが単純に継続して成長を続けているならば、こうした細分化した業界構造がより高いパフォーマンスを発揮できただろう。しかし、大きな変革を迫られる局面が急速に押し寄せる現状にあっては、社会に不可欠なインフラであるがゆえに柔軟な対応力が求められるようになった。

ドローン宅配が今後の輸送ビジネスで鍵を握る存在になり得ることは、周知の通りだ。とはいえ、物流ドローンはあくまでラストワンマイルをはじめとする体系の一翼を担うに過ぎず、単独での輸送モード構築はあまりにも非現実的な話だ。陸運との組み合わせが、ドローンの機能を最大化させるとの検証結果が確立するのであれば、それが最適解なのだ。(編集部・清水直樹)

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LOGISTICS TODAY編集部
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