話題LOGISTICS TODAYが3月14日に開催したオンラインセミナー「首都圏の新たな物流適地、茨城県常総市のポテンシャルを徹底解説」では、物流不動産マーケットの有識者や物流施設開発のキーパーソンが集結し、常総エリアの物流ポテンシャルについて、より専門的かつ多角的な議論が繰り広げられた。本稿では、セミナーで語られた内容を深掘りし、常総市が秘める可能性とその背景にある識者たちの見解を詳細にレポートする。
セミナーには、LOGISTICS TODAY編集部の鶴岡昇平、イデアロジー(東京都新宿区)代表取締役社長兼CEO(最高経営責任者)の坂本哲朗氏、グッドマンジャパンインベストメントディビジョンリーシング&ビジネス・ディベロップメントゼネラルマネージャーの坂本聖司氏の3人が登壇。データ分析、市場動向、そして開発の最前線というそれぞれの立場から、常総エリアの真価と未来について熱い議論が交わされた。

▲(左から)LOGISTICS TODAYの鶴岡昇平、イデアロジーの坂本哲朗社長、グッドマンジャパンの坂本聖司氏
────────────────────
アーカイブ視聴申し込みはこちら
────────────────────
データが示す常総市の真価:コスト競争力と戦略的立地
セミナー冒頭、常総市の広大な面積と2017年の首都圏中央連絡自動車道(圏央道)・常総インターチェンジ(IC)開通が、物流拠点としてのポテンシャルを飛躍的に高めた点が強調された。これに対し、イデアロジーの坂本哲朗氏は、茨城県内2位の物流倉庫供給量、坪単価3000円台後半という首都圏近郊では異例の賃料水準、そして周辺エリアと比較して低い人件費という具体的な数値を提示し、常総市の圧倒的なコスト競争力を改めて強調。「2万坪以上の広さの物流施設を坪単価3000円台で探そうとすると、現状、茨城県以外にはほぼ選択肢がない」と指摘した。
さらに坂本哲朗氏は、常総エリアの賃貸物流施設の開発の歴史について、初期は南部の内守谷工業団地周辺での中規模な開発が中心であったものの、圏央道開通以降は北部エリアで「グッドマン常総」シリーズのような大規模物流施設が次々と誕生したと解説。最新の大規模な物流施設が次々と誕生しているにもかかわらず、なお賃料水準が坪単価3000円台後半で維持されている点は、常総エリアの特筆すべきコスト競争力を示すものと言えるだろう。
議論は、圏央道・常総IC周辺を大規模開発した「アグリサイエンスバレー」がもたらす新たな物流ニーズへと展開。坂本哲朗氏は、この構想が単なる農業振興ではなく、「農業と、それから食品加工、あるいはバイオテクノロジーといったところを核にした」官民連携のプロジェクトであると説明。これにより、これまで顕在化していなかった新たな物流の流れを生み出す可能性を指摘。「特に、地域で生産された新鮮な農産物の効率的な輸送・保管、高度な加工技術を駆使した食品の物流、さらにはバイオテクノロジー関連製品の温度管理や品質管理が求められる特殊な輸送ニーズなど、多岐にわたる物流ニーズに対応できる常総市のポテンシャルに期待している」と語った。
また、2024年問題を契機とした物流コスト上昇の潮流のなかで、常総市が果たすべき役割についても議論が白熱した。坂本哲朗氏は、物流コストの大部分を占める配送費と保管費を総合的に考慮した際、都心近郊の倉庫の値上がりや人件費の高騰を踏まえると、多少配送距離が伸びても、常総市に拠点を置くことでトータルコストを抑えられる可能性は十分にあるとの見解を示した。
この動きをさらに加速させる要因として、荷主企業の意識変化が挙げられた。これまで物流を外部委託していた荷主企業が、サプライチェーン全体の最適化という視点から、自社の物流戦略を根本的に見直す動きが活発化しており、その中で、これまで注目されてこなかった常総市のようなエリアにも関心が集まっているという。
グッドマンジャパンが語る常総の可能性
イベント後半では、グッドマンジャパンが常総エリアで展開するグッドマン常総シリーズの成功事例について、坂本聖司氏に話を振った。坂本聖司氏は、「グッドマン常総1」に入居するアパレル企業の事例を紹介。「単に賃料が安いだけでなく、圏央道へのアクセスが良いこと、そしてまちづくりと一体になった開発による周辺環境の充実と物流施設内の環境整備により、若年層や女性の従業員が多い。アグリサイエンスバレーは、植物工場や観光農園、道の駅、従業員や地域住民が利用できる温浴施設や商業施設、そして地域活性化に貢献する道の駅なども含まれており、さらに、TSUTAYA BOOKSTOREやジェラート店といった多様な店舗も存在し、物流施設との連携によって、より人が集まりやすく、働きやすい、魅力的な環境が形成されることが期待される」と語った。
続いて、完成したばかりの「グッドマン常総2」の詳細な情報が共有された。坂本聖司氏は、最新の物流ニーズに対応した施設設計に加え、太陽光発電システムやEVステーションの導入など、環境負荷低減への積極的な取り組みを紹介。「これは、テナント企業のESGへの意識の高まりにも合致するものであり、常総市に進出する企業にとって大きなアピールポイントとなる」との見解を示した。
また、人材確保という重要な側面についても議論が交わされた。坂本聖司氏は、「常総市が都心へのアクセスも比較的容易でありながら、周辺には住宅地も存在し、住環境が整っている点が、多様な人材を引き付ける魅力になっている。物流施設だけでなく、周辺の商業施設や住宅環境の整備も進むことで、さらに働きやすい環境が実現できる」と分析した。
常総市がけん引する新たな物流の潮流
セミナーを通じて、常総市は単なるコストメリットだけでなく、戦略的な立地、成長産業との連携、そして先進的な物流施設の開発によって、首都圏のサプライチェーン再編を牽引する可能性を秘めていることが明確になった。識者たちの熱い議論からは、常総市が物流業界の新たな潮流を生み出す中心地となる未来が垣間見えた。
LOGISTICS TODAYでは、本セミナーの模様を収録したアーカイブ配信の視聴申込を受け付けている。当日参加できなかった方はもちろん、常総市の物流ポテンシャルについてさらに深く理解したい方は、ぜひ下記よりお申込みいただきたい。