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行政処分後に想定される日本郵便の次の一手

2025年6月17日 (火)

▲記者会見で頭を下げる日本郵便・千田社長

ロジスティクス日本郵便は17日、都内で記者会見を開き、国土交通省から5日に通知された一般貨物自動車運送事業の許可取り消し処分を全面的に受け入れると表明した。千田哲也社長は「当社は今回の行政処分に異議を申し立てる立場にはない」と述べ、18日に予定されていた聴聞を辞退。事実上の白旗を掲げるかたちとなった。

行政処分の執行後、全国330か所の郵便局で使用してきた1トン超の車両2500台の運行が不可能になる。これを受けて、日本郵便はヤマト運輸、佐川急便、西濃運輸といった大手物流会社や、グループ傘下となるトナミ運輸、さらに地場のトラック運送会社への業務委託と、自社保有の軽四輪車両(3万2000台)を活用することで、郵便物や「ゆうパック」などの現行サービスを維持するとしている。

会見では、失われる輸送力を業務委託58%、自社の軽四車両使用42%でカバーできるとの試算を提示した。しかし、これは既存の軽四車両が引き続き使用可能であることを前提としており、国交省が軽四車両にも点呼義務の監査強化を進めている現状では、見直しを迫られる可能性が高い。

1トン超車両2500台に加え、一定数の軽四車両が使用停止となれば、業務委託比率はさらに上昇し、外注コストの激増は必至だ。委託運賃は自社運行に比べ割高であり、年間数十億円から数百億円規模のコスト上積みが避けられず、業績への負の影響は計り知れない。

日本郵便は「郵便料金やゆうパック運賃の値上げは一切考えていない」と強調するが、外注費増大分を社内コスト削減だけで吸収する具体策は打ち出せていない。仮に値上げに踏み切れば、利用者や世論からの厳しい反発を免れまい。

処分対象車両2500台を運行してきた自社ドライバー4000人については、軽四車両への配置転換を含む社内異動で雇用を維持する方針を明らかにした。一方、対象車両は売却処分を検討し、保有資産の流動化を進める計画だという。

事業許可再取得まで想定される5年間、外部委託を中心としたネットワーク維持には限界がある。次なる一手としては、親会社・日本郵政グループの豊富な資金力を背景に、地方の中堅路線トラック会社や地場運送会社のM&Aを本格化し、既存エリアを補完しつつ経営基盤を強化していく可能性が高い。

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日本郵便会見「物流業界の一員として恥ずかしい」

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LOGISTICS TODAY編集部
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