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ドライバーの試練の場、タワマン/ドライバー日誌第25回

2023年8月10日 (木)

(イメージ)

話題いわゆる「置き配」のできないオートロックの集合住宅。顧客に商品を手渡すために、ドライバーは限られた時間の中で知恵を働かせる。新人ドライバーである私は、訪問時間帯を工夫することで顧客と面会できる機会をできる限り高めようとしている。

時間帯に加えて、判断材料としているのが天候だ。平日でも雨の場合は夜も比較的早めに帰宅する可能性がある。全体の配達ルート設定にもよるが、配達の進捗とも相談しながら、それを大きく崩さない範囲でオートロックマンションを回る順番を入れ替えるなどの調整を行う。臨機応変に対応することで、より効率的に各戸を巡り在宅時に訪問できる確率を高めることができるのだ。

こうしたオートロックの集合住宅の中でも、特に配送計画を左右するのが、タワーマンションだ。数十階建てのタワーマンションは、大都市の中心部から郊外へとその勢力を広げてきている。私が飲料水の配送エリアとしている大阪府の北東部でも、JRや私鉄の主要駅前にこうしたタワーマンションの開発が進んでいる。

▲タワーマンションでの配送。まずは目的の棟を探し当てて車を寄せるところから

タワーマンションは宅配ドライバーにとって、まさに「試練」の場所であると言えるだろう。複数棟で構成されている場合は、どの建物に訪問先があるかを確認しなければならない。棟別にオートロック機能があるため、間違って呼び出してしまうことになりかねないからだ。棟に近いところへ軽バンを駐車する必要があるが、こうしたタワーマンションでも荷さばきスペースが確保されているところは少ない。台車を使って少し離れた場所に駐車場所を確保することになる。

棟が分かりオートロックの玄関を解錠してもらう。しかし、試練は続く。高層ビルなのでエレベーターが移動手段になるのだが、こうしたタワーマンションは住民用と私のような宅配事業者用で別のエレベーターホールを設定していることが多い。宅配事業者用のエレベーターは台数が少なく、30階付近を上昇しているとなれば、1階に降りてくるのが5分後ということも珍しくない。ここははやる気持ちを抑えて、どっしりと構えて待つことにする。(つづく)

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