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二者択一/ドライバー日誌第14回

2023年6月20日 (火)

(イメージ)

話題マンションの敷地に入ろうとしたものの、軽バンを止めるスペースはほとんどない。建物の入り口付近にわずかなスペースがあるものの、そこに入れてしまえば入居者が出入りできなくなるおそれもある。

無理にでも入り口に寄せるか、それとも少し距離はあるもののマンション近くの道路脇に置くか。この2つの選択肢しかないように思えた。それも時間に余裕があるわけではない。ここはあえて。機械的に選ぶほかになさそうだ。

入り口に止めれば、配送員は楽に作業できる利点がある。雨ならばなおさらだ。とはいえ、入居者に不便を強いることになる。軽バンに商品名や会社名は表示していないとしても、箱にはブランド名が書かれてある。それを抱える配送員が不適切な駐車をすれば、ブランドイメージに傷が付くおそれは十分にある。

▲マンションでの配送は、事前準備がより重要だ。より慎重に対応する

マンション近くの道路脇ならどうか。距離があるため雨への対策をより丁寧に施す必要があるが、ビニール袋を二重にかぶせて台車で運べば、そんなにも支障は出ないだろう。むしろ、ここで迷っている時間が長ければ長いほど、事態は悪化するのだ。

私は、マンション近くの道路脇を選択した。素早く軽バンを停車させると、リアゲートを開放してビニール袋をかぶせる作業に取りかかる。路上駐車であるから、できる限り迅速に動かなければならない。伝票を表紙付きのバインダーで閉じる。エレベーターのある物件の4階が顧客宅であることを伝票で確認しておいた。建物に入れば、スムーズに作業を進められる。

配送先では家人がインターホンに応答してくれた。ビニールを外して箱を玄関に置かせてもらい、サインを受け取る。すでに私の体には汗が伝っていたが、「雨なのに大変やね」と声をかけてもらったことで、どれだけ心が安らいだか分からない。配送の仕事は人間同士の心の交流の場でもあるのだ。(つづく)

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