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ヤマトHD、1300億円投じ、羽田に20万平米の巨大物流施設

2010年10月25日 (月)

話題羽田物流ターミナルの完成予想図ヤマト運輸は25日、取得していた10万2772.11平方メートルの用地に、羽田物流ターミナルを着工することを決めた。羽田空港の隣接地に、ヤマトグループの国内配送ネットワーク、フォワーディング、ロジスティクスの各機能を融合させた国内最大級のターミナルを建設することで、国内外の一貫物流を実現し、顧客の利便性向上を図る。2011年1月に着工し、2012年7月竣工、同年10月に稼動を開始する。

 

用地は9月末に取得を完了しており、2011年1月に着工、12年7月に竣工し、同年10月から稼働を開始する計画で、土地・建物の取得価額が845億円、建設費用と荷役機器取得費用が合わせて458億円で、総額1303億円を投じる。

 

ヤマトHDでは、羽田物流ターミナルを「今後のアジア圏の物流を取り巻く大きな環境変化に対応し、アジア全域での顧客のサプライチェーンマネジメントのニーズに対応するための統合ソリューション・ターミナルであり、ヤマトグループの企業理念を具現化したショーケース・ターミナル」に位置づける。

 

新ターミナルでは、海外から入荷した商品を国内の倉庫に在庫化することなく、到着後すみやかに通関、流通させる「ダイレクト輸送機能」により在庫拠点の圧縮を実現。物流コストの低減と効率化を提供するほか、海外から入荷した商品を小口仕分けし、素早く出荷する「グローバル・クロスドック機能」により、在庫回転率の向上と在庫量の極小化を実現。変化する市場へのスピーディな対応で、効率的な生産、販売態勢の確立を支援する。

 

また、国内外にわたる複雑な物流モデルに、多彩な輸送手段を提供する「マルチ輸送機能」で、顧客のニーズにあわせた陸海空にわたる最適な輸送モードを提供。国内外を問わず、物流工程に製品加工やキッティング、メンテナンスなどを付加する「製品・流通加工機能」により、エンドユーザーまでのスピーディで安全、確実な配達を実現する。

 

さらに、ヤマトグループがもつ多様な機能を羽田に一元的に集約することで、リードタイムの短縮、流通の見える化、在庫の極小化を実現するソリューションを提供する。国際貨物も施設内で迅速に通関を行い、そのまま国内輸送にダイレクトに接続することが可能となることから、同社では「今までにないスピードと品質を提供できる」と強調している。

 

新ターミナルに入居するグループ会社はヤマト運輸のほか、ヤマトロジスティクス、ヤマトパッキングサービス、ヤマトグローバルロジスティクスジャパン、ヤマトマルチメンテナンスソリューションズ、ヤマト包装技術研究所、ヤマトホームコンビニエンス、ヤマトシステム開発、ヤマトフィナンシャル、ヤマトグローバルエキスプレス――の10社。

 

グループ企業が集中することで各社の機能を組み合わせ、(1)海外の工場、生産拠点から、ダイレクトに日本国内の店舗や顧客に商品を届けるソリューション(2)国内外の工場、生産拠点から羽田物流ターミナルへ在庫を集中させることで、流通在庫の圧縮を図るとともに、マージ配送によるコスト削減を実現するソリューション(3)サードパーティーマニュファクチュアリング・ソリューション――といった、物流を核とした複合ソリューションを提供する方針。

 

施設面では物流棟を中心に、総延床面積約20万平方メートル(約6万坪)、東京ドーム4個分の広さとなる同ターミナルは、ヤマトグループ内で最大規模であるとともに、最新の環境対策と地域貢献施設を備えた、ヤマトグループを象徴する施設とする。

 

具体的には、羽田空港の隣接地に、ヤマトグループの国内配送ネットワーク、フォワーディング(輸出入貨物の工程管理)、ロジスティクス(物流戦略)を融合させた国内最大級のターミナルを建設するとともに、企業理念を具現化するターミナルとして、施設内の大規模な緑地化や最新の環境設備の導入、地域貢献ゾーン「和の里パーク」を併設し、地域社会へ貢献するものになるという。

 

和の里パークには障がい者の雇用と自立を支援するスワンカフェ・ベーカリー、地域住民が利用できる託児所、体育館のほか、夏にはカブトムシがいる里山を模した広場を配置し、子どもや高齢者の憩いの場所として、災害時の避難場所として活用できるようにする。

 

中核施設となる物流棟は、総延床面積約17万平方メートル(約5万1000坪)、地上6階(縦114メートル、横240メートル、高さ48.6メートル、12階建てビルに相当)からなる。

 

複数のグループ会社が入居し、各社の機能を効果的に融合するためにフロア間を縦につなぐループ状の接続ベルト、一つひとつの荷物の底面をスライドさせることで丁寧に仕分けする「大物仕分け機」、従来は機械化が困難だった非定型の小物用「小物仕分け機」など、最新鋭のマテハン機器を複合的に導入する。また、マテハンのラインを左右対称の配置とし、時間帯や用途によって可変性の高い稼動を実現、新オペレーションを導入することで、仕分け効率を飛躍的に向上させる。

 

これらの設備を導入することで徹底的な自動化を図り、荷物処理能力を約50%向上させるとともに、200台を越えるトラックバースと連携し、物流に関わる時間と移動距離を最小化する。自動化による作業人員、労働時間の低減率は約44%となる見込み。

 

また、ターミナル内の荷物の物量、作業状況を把握するシステムや、敷地内の車両を的確に誘導するシステムなど、最新のシステム導入を計画。国内外の顧客に「次世代の物流ターミナル」を実感してもらうためのプレゼンテーション施設や、施設見学コースも配備する。

 

地域貢献施設である和の里パーク(地域貢献ゾーン)には、里山を模した広場やフォーラム(体育館)、宅急便センターを配置し、地域住民が自由に利用できるようにするとともに、待機児童のニーズに対応する託児所、障がい者の雇用促進と自立支援を推進するスワンカフェ・ベーカリーを併設する。

 

環境面では、敷地内の大規模緑化と長寿命建築をベースに、特に物流棟内には「ボイド」と呼ばれる穴をあけて、そこから入る自然な光や地中からの冷えた空気を利用することにより、使用電力の削減を図る。地域貢献施設では太陽光発電を積極的に活用し、地域貢献施設内の照明電力をすべてまかなう。また、雨水を利用した打ち水によって車路低温化を図り、ヒートアイランドを防止、施設全体でゼロ・エミッションに取り組む。

 

これらの各種環境設備を導入することで、施設全体のCO2排出量は約46%の低減が見込め、年間で約1万4000トン(ブナ天然林3200ヘクタールに相当)の削減となる。同社ではこうした取り組みにより、CASBEEで最高位の「S」を目指す。

 

ターミナル周辺エリアでは、宅急便集配の環境先進モデル地区として台車や新スリーター(リヤカーつき電動自転車)を利用した集配の拡大とEV集配車の積極導入により、エリア内集配でのCO2排出量をゼロにする。

 

ヤマトHDでは、「日本を含むアジア全域で企業のサプライチェーンのボーダレス化が加速するとともに、クロスボーダーEC市場の成長で生活者を起点とする物流や決済、情報など、より安全で効率的なソリューションへのニーズが一層高まると考えられる。ヤマトグループでは、かねてからアジアと日本をひとつの経済圏としてとらえ、その域内で物とお金と情報がシームレスに行き来する”結節点”が必要であると考えてきたことから、羽田物流ターミナルの新設に至った」と説明している。