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ヤマトHD、効率的な共同輸配送へ新会社設立

2024年5月21日 (火)

▲新会社SSTのロゴ(出所:ヤマトホールディングス)

ロジスティクスヤマトホールディングス(HD)は21日、物流の2024年問題などに直面する施策として、荷主企業や物流事業者などをつないで効率的な共同輸配送を実現するため、新会社「Sustainable Shared Transport」(SST、東京都中央区)を設立した、と発表した。業界の課題を解決していく上で、重要視されている商慣行の見直しなどを大幅に進展させていく狙いがある。許認可などの調整を経て、24年度中の事業開始を予定している。

国土交通省で発表会見を開いたSSTの髙野茂幸社長は「宅配などの物流では、24年問題の課題を抱えてはいるが、標準化や効率化などがかなり進んでいる。だが、いわゆる法人輸送、BtoBの国内物流は、海外に比べて圧倒的に標準化、効率化が進んでいない領域だ」と背景を指摘。その上で「この領域について、宅配便のノウハウを活かしながら、自分たちだけでなく、パートナー企業などとともに新しい物流の形を作っていきたい」と思いを語った。

▲会見で記者の質問に答えるSSTの髙野茂幸社長(左)と、ヤマト運輸の福田靖執行役員

SSTでは、ヤマトグループが宅急便事業で培ってきた法人顧客約160万社や、パートナーシップを持つ約4000社以上の物流事業者などに参加を呼びかけるなどしていく。今年度中は、東京や名古屋、大阪で、主にヤマトグループが主体となって1日40線便の運行を予定し、さらに25年度末に1日80線便に拡大させる。開始3年後には、1日200線便に載せて、事業の黒字化を図る計画だ。

▲SSTの目指す姿(クリックで拡大、出所:ヤマトホールディングス)

共同輸配送には、荷物事故の際などに責任所在が不明確であったりする課題が指摘されているが、同社は「業種ごとに商慣行などが異なり、異業種間の取り組みが難しい」ことを重要視している。事業者に共同のオープンプラットフォームを提供することで、こうした課題解決を一気に進展させていく狙いだ。

SSTの事業について、髙野社長は「リアルとデジタルの両方が一緒に動いていく世界観を目指していく」と説明する。
具体的には、共同輸配送のオープンプラットフォームを提供し、プラットフォーム上で、荷主企業の出荷計画や荷姿、荷物量などの情報と、物流事業者の運行計画などの情報をマッチングして、需要と供給に合わせた物流を構築する。実際の輸配送は、ヤマトグループだけでなく、登録した物流事業者も担うことになる。
基盤のシステムについては、すでに富士通と共同で開発を進めており、24年冬ごろの利用開始を予定する。同業他社からの閲覧防止やアクセスなども制限して、安心安全なシステムに仕上げる。

また、幹線輸送を中心に、個社ごとに貸切チャーター便が多く、帰りが空状態になりがちで積載率が40%程度と低い点などを考慮。パレット規格の標準化を行って複数社による混載輸送を実施し、積載率も70%を目指す。さらに、今回の特徴的な取り組みとして、幹線拠点からの定時運行を行い、積み合せなどをを促していく。セミトレーラーやダブル連結トラックなどの高積載車両も活用するほか、短中距離リレー輸送を行い、ドライバーの負担も軽減させ、稼働率を高める。

幹線輸送拠点までをつなぐ地域物流網でも複数のネットワークを集約して、これまで低積載で幹線輸送を手がけてきた地域の物流事業者が、効率的に域内の複数社の集荷を担う役割をもってもらうことで、地域内の持続可能な物流網を構築する。「物流のリソースを地域の方に寄せていく」(髙野社長)取り組みだ。

こうした効率化が進めば、温室効果ガス(GHG)排出量が、25年度末には従来と比べ42.2%の削減率が見込めるなどの効果が出るという。SSTは今年度中に第三者割当増資を行う予定で、荷主企業や物流事業者だけでなく金融業など幅広い事業者からの出資を募っていく。

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LOGISTICS TODAY編集部
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