話題LIGO(リーゴ、東京都港区)が運営する、荷主と運送会社のマッチングメディア「ハコプロ」。2024年8月に本格スタートしたばかりだが、2か月で累計10万PVを超えるなど、その勢いには目を見張るものがある。LIGOの代表を務める長妻潤氏には「運送業界に恩返しがしたい」という想いがある。業界への熱い想いはどこからくるのか、その根拠を深掘りした。

▲LIGO代表の長妻潤氏
運送業界に恩返しがしたい
長妻氏は高校生の頃から「いつかは起業したい」と思っていたという。大学卒業後は、新卒採用支援や転職支援などの人材サービスを提供するクイックに入社し、営業や管理職を経験。独立を決意したのは20年、入社15年目のことだった。成長の機会を与えてくれた会社には感謝していたが、悔いを残さないためにも独り立ちを決めた。
「独立したい」と申し出たところ、クイックの和納勉会長は快諾するだけでなく、支度金や創業後の仕事まで用意してくれた。営業マンとして育ててくれただけではなく、温かく送り出してくれたクイックには今も感謝している。
ノウハウのある人材系のサービスで一旗揚げようとしたのも束の間、会社設立後すぐコロナ禍に見舞われる。外出自粛などで日本経済が停滞するなか、新進の企業にとっては苦しい状態が続いた。ほとんど仕事を取れない日々のなか、ようやく採用支援の依頼を取り付けたのが、とある運送会社だった。
はじめは運送業界をターゲットにしていたわけではなく、興味もなかった。しかし、仕事で関わるうちに、運送という仕事に興味が湧き、そこで仕事をする人々が好きになっていた。その「好き」という気持ちが、ハコプロをはじめとした運送・物流特化のサービスにつながり、事業を軌道に乗せる原動力になったという。取材中、長妻氏の口からは「運送業界に恩返しがしたい」という熱い想いがこぼれ出た。
荷主と運送会社とのベストマッチング目指す
そのような経緯から生まれたハコプロは、荷主と運送会社をマッチングするウェブメディアだ。運送会社はハコプロに自社の情報を掲載し、強みや実績をPRする。情報欄には所有車両や得意な輸送品を掲載することも可能だ。荷主側は掲載情報を参考に、荷物を預けられる運送会社を探す。ハコプロは運送に特化し、ニッチなニーズに応えることで、荷主と運送会社とのベストマッチングを目指している。

▲ハコプロのトップページ
長妻氏は具体例として、札幌-釧路間で農産物を輸送する運送会社を探していた荷主と、釧路市の小さな運送会社がマッチングしたパターンを挙げる。荷主は農産物を丁寧に扱える運送会社を探していたが、そういった細かな情報はなかなか表に出てこない。一方、今回マッチングした運送会社も規模が小さいため、ホームページ制作などまで手が回らず、農作物の扱いに長けているという強みをアピールできずにいた。両者はハコプロがあったからこそ出会うことができた。
特に食料品は臭い移りの防止や細かな温度管理が求められるため、荷主も運び手の経験やスキルには敏感だ。その点、運送会社の得意分野や実績が把握できれば、安心して依頼できる。
また、できるだけ気軽にサービスを利用してもらうために、ハコプロは運送会社から掲載料や登録料などは一切取らない。会社の収益は広告料でまかなっている。ここにも、長妻氏の「恩返しがしたい」という想いが込められている。
ドライバーの顔が見える安心感
自慢のドライバーを紹介できる「ドライバー名鑑」の枠があるのもハコプロのユニークな点だ。ドライバーの経歴や趣味、仕事への想いなどを載せることで、職場の雰囲気をより端的に伝えることができる。
特に女性や若いドライバーの掲載は、荷主に対する訴求力が高いという。若手や女性が定着するのは「働きやすい職場」であることの、判断材料の一つだからだ。もちろん、すでに退職したドライバーがいつまでも掲載されているような事態を防ぐために、LIGOはこまめに情報を更新している。
ページを自分で制作する分には、料金は一切かからない。設定された項目を埋める程度のことなので、専門知識も必要ない。有料ではあるが、LIGOに依頼すればページ制作を肩代わりしてもらうこともできる。情報発信の仕方で迷ったときは、ノウハウのある同社に頼むのも手だろう。どちらを選ぶかは、会社の実情に合わせればいい。
LIGOという社名に込めた想い
社名の「LIGO」は「Life is Good」に由来する。「いつだって自分の人生を決めるのは自分でしかない。それならいつだって自分の人生は最高だ、と言いたい。社名にはそんな思いを込めた」と長妻氏は笑う。名前負けしないよう、同氏は社内がいつもポジティブな雰囲気になるよう気を配っている。社員には「この会社が好きだ。自分の子どもも働かせたい」と思ってもらいたい。

▲LIGOはポジティブな社風を大切にしている
長妻氏は当面の目標として、売上200億円、営業利益35億円を掲げている。人材ビジネスを主軸にしつつ、ハコプロで運送会社との距離をさらに縮めたい考えだ。また、今後はさらに積極的に人材を採用し、組織を大きくしていきたいと思っている。長妻氏は会社の成長が社員の利益になると信じている。
「組織が大きいほうが報酬も多くできるし、社員のキャリアの幅や人生の選択肢も増える。休みも増やせるかもしれない。売上と営業利益の目標は、私が退職したときのクイックの規模と同じ。やはりクイックという会社が私の目標であり、経営の原点になっている」(長妻氏)
もちろん、経営が苦しい時期に助けられた運送業界への恩も忘れたことはない。
「私たちは、ハコプロを通じて運送業界で働く人たちと深く関わってきた。現場を知っているだけに、業界に対する想いも強い。この点だけは、ほかのマッチングメディアには負けない」。そう話す長妻氏の言葉からは、ある種の迫力すら感じられた。
一問一答
Q.スタートアップとして、貴社はどのステージにあるとお考えですか?
A. 今は採用に力を入れて、組織を大きくしようとしている段階です。必要に応じて資金調達も考えていきます。
Q. 貴社の“出口戦略”、“将来像”についてお聞かせください。
A. 会社の存続を考えると、いずれはIPO(新規上場)に挑戦したいと思っています。私達のビジョンを達成するには、さまざまな手段が必要です。上場もその一つだと考えています。