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鉄道物流トンキロ目標未達、積載率など課題残る

2025年5月13日 (火)

ロジスティクス日本貨物鉄道(JR貨物)は13日、国土交通省の「今後の鉄道物流のあり方に関する検討会」中間とりまとめ(2022年7月)に基づき設定した、KGI(重要目標達成指標)とKPI(重要業績評価指標)の2024年度実績と25年度の取り組みを公表した。

最重要指標であるコンテナ輸送トンキロは、24年度実績が163億6000万トンキロとなり、年度目標の175億トンキロには届かなかった(達成率93.5%)。2024年問題を背景とした鉄道シフトの動きから輸送トン数自体は前年比2.8%増と増加したものの、中距離輸送への注力や一部長距離輸送の他モードへのシフトなどにより平均輸送距離が短縮したこと、さらに自然災害や輪軸組立作業不正行為、列車脱線に伴う運休が響いた。25年度は必達目標196億トンキロの達成に向け、グループ総合力での輸送力拡大を掲げる。

(青実線:実績値、赤破線:目標値、クリックで拡大、出所:JR貨物)

24年度のコンテナ輸送トンキロは、目標未達ながらも23年度実績(162億8000万トンキロ)比では0.5%増と微増だった。JR貨物によると、24年問題への対応や環境意識の高まりから鉄道への関心は高まり、清涼飲料水、食料工業品、紙・パルプ、特積み貨物など多くの品目で輸送トン数が前年を上回った。しかし、営業戦略として中距離輸送の強化を図ったことや、北海道発着の輸送量減少、一部の長距離貨物が航空・船舶へシフトしたことで、コンテナ貨物1個あたりの平均輸送距離が前期の899キロから879キロへ短縮したことが、トンキロベースでの伸びを抑制した。これに加えて、頻発した自然災害による輸送障害、深刻な輪軸不正問題とそれに伴う列車脱線事故による長期運休も、輸送実績に大きな影響を与えた。

25年度の必達目標196億トンキロの達成に向けて、JR貨物は「ロジスティクスソリューションプロバイダー」を目指した体制構築を急ぐ。グループ会社の倉庫機能を結節点として、あらゆる輸送モードやサービスをトータルで提案・提供できる体制を整備し、稼働させる。また、貨物駅の物流結節点機能強化のため、レールゲートや積替ステーション、パレットデポの展開を加速。データ分析に基づく戦略的な営業活動の展開、ニーズの高い大型コンテナや定温コンテナ、中距離帯輸送の増送、需給バランスが偏っている区間や低積載区間への弾力的な運賃設定などにより、輸送量の拡大を図る方針だ。

(青実線:実績値、赤破線:目標値、クリックで拡大、出所:JR貨物)

主要KPIの24年度実績を見ると、貨物鉄道の競争力強化に関する項目では、全日平均の積載率が72.3%(23年度は70%)と2.3ポイント改善したものの、25年度の必達目標76.5%にはまだ距離がある。JR貨物は、災害や輪軸不正による輸送力減少の影響を除けば71.2%だったとしており、引き続き改善の余地が大きいと認識。25年度は新たな総合物流体制の構築やデータ分析に基づく営業などで積載率向上を目指す。

(青実線:実績値、赤破線:目標値、クリックで拡大、出所:JR貨物)

定温コンテナ輸送の対20年度比伸び率はプラス1.1%(25年度目標はプラス11.2%)、「31フィートコンテナ輸送」は同プラス7.2%(同17.4%)と、いずれも目標未達だった。食品関係を中心とした災害忌避による他モードへの転換や、輸送障害、一部事業者の輸送体系変更などが響いた。25年度は、片道輸送の解消やラウンドマッチング提案、新規顧客開拓などを強化する。「中距離帯輸送」は同プラス8.1%(7.8%)と目標を達成。25年度もニーズの高い区間の輸送力増強や、返送コンテナの実入り化などで拡大を図る。

(青実線:実績値、赤破線:目標値、クリックで拡大、出所:JR貨物)

積替ステーションの設置は24年度に5駅で実施し、累計15駅(25年度目標22駅全駅完了)となった。25年度に残る7駅に設置し目標を達成するほか、協力会社の施設を「積替ステーションに準ずる施設」として全国展開し、利用拡大を図る。国際海上コンテナ輸送は、24年度の輸送実績が目標を大幅に下回った。ドレージ運賃の高止まりや主要荷主の業績不振が要因。25年度は港湾運営会社の補助金活用や荷主への直接営業で事業性の再確認を進める。

「誰でもいつでも利用できる体制づくり」としては、ホームページでの輸送日数・料金・CO2排出量検索画面のリリースなどでIT化が進展。25年度はJR貨物ロジ・ソリューションズが主体となり、ニーズ調査からグループ一体で新たな輸送サービス構築に取り組む。「パレットデポ設置」は24年度に1駅増の累計14駅(目標22駅)。25年度に残り8駅に設置し完了させる。

社会・荷主の意識改革に向けた取り組みでは、「CO2排出量概算手法の策定」はホームページでの検索機能リリースなどで目標を達成。25年度は計算手法の確立と機能連携を進める。「荷主インセンティブ案の確定」は、CO2削減量証書の素案決定に留まり、24年度目標は未達成。25年度は素案の早期発行とJクレジット登録への調整を行う。

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LOGISTICS TODAY編集部
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