ロジスティクス日本郵便は25日、郵便局での点呼業務の不備により、国土交通省から一般貨物自動車運送事業の許可取り消し処分を受けたと発表した。処分により、26日から1トン以上の車両約2500台が使用できなくなるが、同社は他の運送会社への業務委託や軽四車両への切り替えで郵便サービスの継続を図る。
今回の処分は、複数の郵便局で乗務前・乗務後の点呼が日常的に実施されていなかった問題に端を発している。同社が総務省に提出した報告書によると、「点呼と運行はセット」という運送事業者としての基本認識が現場に浸透せず、業務繁忙や管理者の監督不足により点呼未実施が常態化していた。
特に深刻だったのは、実際には点呼を実施していないにも関わらず、点呼記録簿上はすべて実施済みとして虚偽記載が行われていた点だ。同社の調査では、「帳票が形式的に整っていれば検査で発覚しない」という意識が郵便局に広がり、法令遵守や安全管理よりも帳票整備が優先される風土が深く根付いていたことが分かった。
乗務後のアルコールチェックについても、「自分は飲酒しない」「勤務中に飲酒する社員はいない」との思い込みにより、乗務前に比べて実施率が大幅に低下していた。これは飲酒リスクを軽視し、乗務後のアルコールチェックを不要と考える文化が形成されていたためとされる。
管理・監督機能の不全も重大な問題として指摘された。本社や支社は帳票を中心とした確認に頼り、点呼が不適切だった実態を長期間把握できなかった。郵便局の管理者も「社員が帳票を提出していれば実施しているとみなす」運用を日常化させ、職場実態の把握を怠っていた。検査部門による監査も、点呼記録簿の確認と定点での実査、ヒアリングに留まっており、実態把握には不十分だった。こうした複数の監督機能の欠陥が、問題の長期化と拡大を招いた。
日本郵便は再発防止策として、すべての点呼を局内の防犯カメラに映る位置で対面実施する体制に転換した。管理者による点呼執行状況の映像確認を日次で行い、不備発見時には速やかに支社社員が現地指導に入る仕組みも作った。
全社レベルでは、社長以下関係役員が出席する「点呼不備事案に係る対策推進会議」を定期開催し、全支社に支社長を本部長とする「点呼対策推進本部」を設置した。本社には支社担当制を導入し、再発防止策の進捗を継続的に確認する体制を整えた。
技術面では、人為的ミスや虚偽記載の防止を目的とした点呼関連システムの導入を進めている。4月から一部支社で試行を開始し、6月以降は集配業務を行うすべての郵便局への導入を予定している。遠隔点呼や業務後自動点呼の実施についても段階的に拡大していく方針だ。
制度面では、車両鍵交付の手順を見直し、従来の「車両鍵交付→日常点検→点呼」から「点呼→車両鍵交付→日常点検」に変更することで、点呼を実施しない限り車両鍵を交付しない取り扱いに改める。
国交省は日本郵便に対し、許可取り消し処分に加えて輸送の安全確保命令も出した。子会社の日本郵便輸送には報告徴収命令が出されている。総務省からも郵便のユニバーサルサービスなどの確実な提供や再発防止策の着実な実施を命じる監督上の命令を受けた。
日本郵便は「今回の行政処分等を厳粛に受け止め、運送事業者として確実な点呼の実施をはじめ、運行の安全および運転者・お客さまの安全を確保する体制構築を徹底し、信頼回復に全力で取り組む」とのコメントを発表した。