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「ロジスティクスソリューションフェア2026」、目指すは「JILSの文化祭」

CLOとして何にどう取り組むか、手探りでも前へ

2026年1月15日 (木)

イベント「CLO(物流統括管理者)を選任すれば、物流は回る」

もし、そう考えている企業があるとすれば、ことしはその幻想が最初に崩れる年になる。

制度は整っても、意識や運用は手探りのまま──。この“静かな危機”をどう乗り越えるのか。

日本ロジスティクスシステム協会(JILS)が主催する「ロジスティクスソリューションフェア(LSF)2026」が、2月12日・13日の2日間にわたり開催される。会場は東京ビッグサイト(東京都江東区)西4ホール。CLO選任の義務化を4月に控えた、まさに“制度実装直前”のタイミングだ。

このLSFを単なる「企業PR・情報収集イベント」と捉えるのはあまりにももったいない。ことしは、CLO制度が始まる年であると同時に、制度が“形だけ”で運用されてしまうリスクが一気に顕在化する年となるかもしれないからだ。

LSF開催を前に、JILS理事でありJILS総合研究所所長の北條英氏に話を聞いた理由は明確だ。制度が始まった瞬間に現場で何が起きるのかを、構造として語れる立場にあるからである。

▲JILS総合研究所 北條英所長

特定荷主は想定より多く、準備は想定より浅い

政府は、CLO選任義務の対象となる特定荷主事業者を3200社程度と見込んできた。だが北條氏は、JILSがIR資料や統合報告書などから独自に推計した結果として、「3600社に上る可能性がある」(北條氏)と指摘する。

一方で、3600社のうち、物流改革に一定の取り組み意識を持つとされているJILSの会員企業は220社程度にとどまると推計する。制度を知らないというより、「うちは特定荷主だと思っていない人がどれくらいいるのか。そこが一番心配」(北條氏)だといい、「準備も“ムラがある”。これまでロジスティクスに向き合ってきた企業と『え、うち特定荷主なの』という層の間で、明確な差が出ている」(北條氏)と現状を分析する。特定事業者として届け出るべき事業者が、その役目を果たさないというケースも頻出するはずだ。

制度初年度に生まれるのが、こうした環境下で誕生する“手探りCLO”だ。法対応のために肩書きは与えられても、どこまで踏み込み、何を判断すべきかの前例はない。右を向けばいいのか左を向けばいいのか、どちらに足を踏み出していいかさえわからないというCLOが多数誕生してもおかしくはないが、これは決して個人の力量の問題などではない。

発荷主・着荷主、どちらも変わらなければ前に進まない

壁にぶつかるのは手探りのCLOだけではない。改正物流法、CLO制度の本質は、義務が発荷主だけでなく、着荷主にも及ぶ点にある。サプライチェーン全体として物流をつなぎ直すためには不可欠な改革だが、ここで多くの企業が直面する壁がある。

特定荷主の判断基準となる年間の取扱貨物重量については、発荷主としては出荷量や積載効率の把握が比較的進んでいる一方、着荷主側では「自社がどれだけの物量を扱っているのか」を定量的に捉える文化が乏しいと思われる。また発荷主としての貨物量は把握していても、調達物流における着荷主としての側面があることに気付いていなかったという話も聞こえる。発・着の両面でサプライチェーン全体を見渡す視点が不可欠だと北條氏は強調し、調達条件、納期設定、発注ロットなどを経営判断として見直さなければ、CLOは制度対応に追われるだけで終わってしまう。

「CLOにできることはいっぱいある」

24年度に予想された輸送力不足の問題は、全国一律の物流パニックという形では顕在化しなかった。これは、貨物量自体の減少に加えて、積載効率が向上したことによるもの。意識の高い企業によるリードタイム延長や条件調整といった取り組みが進み、商慣行の見直しが一定程度進展したことも貢献したと見られる。

だが北條氏は、それを楽観視しない。

高齢化の進行、小口化、地域偏在といった構造要因は確実に続き、悪化する。26年以降は、物流が詰まる企業と、踏みとどまれる企業の差がはっきりと可視化される局面に入る。

北條氏は、あえて挑発的な言い方をする。「法が求める積載効率の向上や荷待ち・荷役時間の削減というKPIを守るだけなら、CLOでなくてもできるという企業があったっていい」と。見方を変えれば、ただ法対応のためだけにCLOを用意しても、それがうまく機能することなどあり得ないということ。何のための法改正なのかを理解し、企業としてロジスティクスに取り込む姿勢で臨まなければ、その先にあるフィジカルインターネットが目指す世界観や、持続可能性を軸としたサプライチェーン再構築にも、企業として応えきれない。制度対応を“守り”で終わらせるか、ロジスティクスを経営の武器として“攻め”に転じられるかが問われている。

CLOでなくてはできない役割がある、それに気づいているかどうかが、物流を変革する推進力になるはずだ。

なぜCLOが必要なのか、答えは明確だ。KPIの先にある目的を動かせるかどうかである。
CO2削減、ドライバーのQOL向上、レジリエンスの強化、企業価値向上──これらは現場単独では動かない。部門横断で意思決定を行い、経営の言葉に翻訳する役割として、手探りCLOもまずその意識改革に向き合わなければならない。

「法律コンプライアンスは大事。でも“守ってるだけ”はやめてほしい。ロジスティクスにはできることがいっぱいある」(北條氏)

JILSがつなぐ、制度と現場

北條氏は、26年だからこその「JILSに求められる役割」についても言及する。

JILSがこれまで取り組んできた「全日本物流改善事例大会」など、先行する企業の活動報告は、手探りのCLOにとっては“宝の山”だと語る。そのほかにも「ロジスティクス大賞」や各種研究会、講座やセミナーなどの人材育成事業を通じて蓄積してきた知見やリソースを、CLO体制の実務にどう接続するかを今年度の大きなテーマに据える。

手探りCLOが「相談相手を持てる」「判断軸を持ち帰れる」場をどう設計するか。今回のLSFは、そうした試みの一つとして見ることもできる。

LSFでは「Whatを掴み、Howを選ぶ」、CLOとしての一歩

ロジスティクスソリューションフェア2026のコンセプトについてJILS総合研究所第1部リーダーの織田峻央氏は、同じくJILSが運営に携わる「国際物流総合展」との違いで説明する。

▲JILS 織田峻央氏

「国際物流総合展では主にハード、LSFは主にソフトをどう使い、どう変わるかを考える場」(織田氏)。特にCLO制度初年度の直前においての開催では、手探りCLOにとっての道案内となるような、判断の材料と実装のヒントを提示することが重要なテーマだ。CLOにはいっぱいできることがあり、DX(デジタルトランスフォーメーション)だけではなく、GX(グリーントランスフォーメーション)、HRM(人的資源管理)など一歩先の対応が見える仕掛けだ。

織田氏は、LSFの歩き方を「WhatとHowの往復」と表現する。展示だけではなく、充実したロジスティクスカンファレンスや出展者によるセミナーを用意して、学びと気付きの機会を用意する。

まずカンファレンスやセミナーで、“コンセプトや戦略(What)”を掴み、その上で展示を見て、“どう実装するのか(How)”を検証する、あるいはその逆もいいだろうと織田氏はいう。手探りCLOにとっての道標を見つけるには、「まずフラットな視点で会場全体を歩いてまわり、気になるものを見つける」のが有効ではないかと提案する。

今回のテーマには、「持続可能なロジスティクス構築への道標 ~“新たな労働力”活用のヒントはここに~」が掲げられた。ここでいう新たな労働力とは、人手不足を補うだけの存在ではない。人、機械、システム、外部パートナーを含め、次代のロジスティクスを支えるリソース全体を再定義する未来志向の概念だ。異業種からの出展やスタートアップなど、これからの物流を変えるための新しいヒントが得られるかもしれない。

ロジスティクスカンファレンスでは、25年度のロジスティクス大賞の受賞事例紹介や、「ロジスティクスイノベーション推進特別委員会」「女性活躍推進研究会」などJILSの活動から派生したセッションが用意されている。また、26年ならではの課題感として、CLO体制の立ち上げ、先進企業によるサプライチェーン連携と技術活用の事例、企業間の垣根を超えた協業設計などを扱うプログラムにも注目だ。

手探りのCLOにはまず、12日に開催される“物流効率化法改正による荷主の義務”に関するセッションからはじめの一歩を踏み出すことをお勧めしたい、と織田氏はいう。物流効率化法改正の意義、取り組みのポイントについて確認できるとともに、講演会後には懇親イベントを開催して、“外交”を担うCLOのスタートを後押しする。CLOに求められるすべてを最初から担うことは無理でも、どこから着手するか、自分には何ができるかを整理して、手探り状況から抜け出すきっかけになるのではないか。「ロジスティクスカンファレンスは定員制。興味を持ったセッションを見つけて早めに聴講事前登録を行うことも、LSF参加のスタート」(織田氏)となるだろう。

それぞれが物流改革の主役として「JILSの文化祭」の舞台へ

手探りのCLOにとって、まだ足元もおぼつかない状況でのスタートとなるのだろう。だからこそ重要なのは、「正解を教えてもらう」のを待つのではなく、自分で見つけること。どんなに優れた先例があっても、それだけが最適解とは限らない。

北條氏は、「来場者一人一人がお客さんの立場ではなく、プレイヤーであり、主人公になってもらいたい」と締めくくる。受け身ではなく、考え、比べ、つながり、主役となるための、次の一歩を決める舞台は用意された。「目指すのはJILSの文化祭。今回、そこに一歩だけ近づいた気がする」(北條氏)

制度は始まる。しかし、物流が本当に変わるかどうかは、その先の行動にかかっている。
ロジスティクスソリューションフェア2026は、その行動を始めるための“起点”となる場である。

イベント概要:ロジスティクスソリューションフェア2026
会期:2026年2月12日(木)-13日(金)
会場:東京ビッグサイト 西4ホール(東京都江東区)
公式サイト:https://jils-lsfair.jp

「ロジスティクスカンファレンス」スケジュールはこちら
https://jils-lsfair.jp/seminar/conference.html