国際世界のトラック運転手不足が構造的に深刻化している。国際道路輸送連合(IRU)が2025年3月に公表した最新レポートによると、調査対象36か国で360万人分のポストが埋まっていない。28年までに700万人超に倍増するとの予測もある。日本の24年問題は世界的なドライバー不足の一断面にすぎず、各国が異なる規制環境のもとで同じ構造問題に直面している。(編集長・赤澤裕介)
高齢化と若年層の参入不足が共通課題
ドライバー不足の規模は地域によって大きく異なるが、「高齢化」と「若年層が入ってこない」という構造要因は世界共通だ。IRUの調査では、25歳未満のトラック運転手は全体の6.5%にとどまり、23年から24年にかけてさらに5.8%低下した。55歳超は31.6%を占め、こちらは1.6%上昇している。今後5年間で340万人が退職する見込みだ。
注目すべきは、給与水準が不足の主因ではないという点だ。IRUによると、全地域でトラック運転手の平均給与は生活コストの1.3〜2.35倍の水準にある。欧州7か国の運転手1100人への調査では81%が「仕事に満足している」と回答した。問題は待遇そのものより、職業への参入障壁(免許取得費用、年齢制限、訓練期間)と労働環境(休憩施設の不備、荷受け先での扱い)にある。
各国が直面する「規制強化×ドライバー不足」の構図は共通しているが、規制の中身と影響のかたちは異なる。
日本は24年4月に施行されたトラックドライバーの時間外労働上限規制(年960時間)が直接の引き金だ。ドライバーの総労働時間が制限されることで、同じ人数でも動かせる物量が減る。政府は30年時点で輸送力が14%不足すると試算している。
米国は移民政策と安全規制の複合だ。FMCSAが26年3月16日に施行する非居住CDL規制で、19万4000人の外国籍運転手が段階的に免許を失う。英語力要件の厳格化(25年末までに1万人が運行停止)や薬物・アルコール検査データベースによる資格停止(20年以降で18万人超)も重なり、供給側が複合的に縮小している。
EUは20年から段階施行している「モビリティパッケージ」が東西格差の構造問題を生んでいる。越境輸送の運転手にも受入国の賃金水準を適用する規則や、車両を8週間ごとに母国に戻す義務は、ポーランドやルーマニアなど東欧の運送事業者の人件費を最大30%押し上げるとされる。26年7月には2.5t超の小型商用車にもタコグラフ(運行記録計)装着と運転・休息時間規制が拡大される。EU域内のカボタージュ(他国内の国内輸送)市場でポーランドが45%のシェアを持つなど東欧勢の存在感が大きいだけに、規制強化の影響は広範囲に及ぶ。
英国は21年にBrexit(欧州連合離脱)後のEU出身ドライバー大量離脱でHGV(大型貨物車)危機が発生した。ガソリンスタンドへの供給が滞り、スーパーの棚が空になる事態にまで発展した。その後、ビザの一時緩和や待遇改善で最悪期は脱したが、構造的な不足は解消していない。
共通するのは、どの規制も「安全」「労働者保護」「公正競争」といった正当な目的を持っていることだ。日本の時間外労働規制はドライバーの健康を守るため、米国のCDL規制は交通安全のため、EUのモビリティパッケージは東欧ドライバーの待遇改善のためにある。しかし、いずれも短期的にはドライバー供給を絞る方向に作用し、物流コストの上昇圧力になっている。
こうして並べると、米国もEUも英国も、争点の中心にあるのは「外国人ドライバーをどう受け入れ、どう扱うか」だ。米国は安全を理由に外国籍運転手を排除する方向に動き、EUは東欧ドライバーの待遇を西欧並みに引き上げようとし、英国はBrexitで失った労働力の穴を埋めきれていない。いずれも自国の運転手を「守る」規制が、結果としてドライバー供給を絞るというジレンマを抱えている。
日本も動き始めている。2024年3月、政府は特定技能の対象分野に「自動車運送業」を追加し、25年3月から本格運用が始まった。トラック、タクシー、バスの運転手として外国人を正社員雇用できる制度で、5年間の受け入れ上限は2万4500人。全日本トラック協会も受け入れ体制の整備を進めており、運送会社の間で関心が広がっている。
ただし、世界のドライバー人材は有限だ。IRUも第三国ドライバーの受け入れ促進を主要な提言に掲げるなか、各国が同じ人材プールを奪い合う構図が強まっている。日本が特定技能で想定する送り出し国(ベトナム、フィリピン、インドネシアなど)は、韓国や台湾、中東諸国とも人材を取り合う関係にある。制度を作っただけでは人は来ない。待遇、言語サポート、キャリアパスを含めた「選ばれる国」になれるかどうかが、日本の物流の持続可能性を左右する。
日本では24年4月のトラックドライバーの時間外労働上限規制(年960時間)の適用で輸送力不足が顕在化し、荷主・物流企業ともにモーダルシフトや積載率向上などの対応を迫られている。米国の非居住CDL規制は、安全と移民政策の交差点で生じた問題であり、背景は異なるが「規制強化→ドライバー不足→輸送力ひっ迫→運賃上昇」という因果連鎖は共通している。米国の物流コスト上昇は、日本企業のサプライチェーンにも間接的に影響を及ぼす可能性がある。
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