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中東情勢受け航空貨物激震、世界の容量18%減

2026年3月2日 (月)

国際米国・イスラエルによるイラン大規模空爆と報復攻撃の激化で、ドバイ、アブダビ、ドーハの主要ハブ空港が止まっている。世界の航空貨物キャパシティは前週比で18%縮小した。本誌既報の通りホルムズ海峡も事実上の封鎖状態にあり、ブレント原油は80ドルを突破。ここにトランプ政権が2月24日に発動した全輸入品15%の臨時関税が重なり、物流の現場は空と海の両方から揺さぶられている。(編集長・赤澤裕介)

空域閉鎖でアジア-欧州の貨物ルートまひ

(出所:エミレーツ航空)

2月28日、米国とイスラエルがイラン国内の少なくとも9都市を空爆した。ハメネイ最高指導者の死亡が確認され、イランはペルシャ湾岸の米軍基地やイスラエル、UAE、クウェート、カタール、バーレーン、サウジアラビアにミサイル・ドローンで報復した。衝突は3月2日現在も続いている。

世界最大級の国際ハブであるドバイ国際空港(DXB)、アール・マクトゥーム国際空港(DWC)は「追って通知があるまで」全便を止めた。アブダビのザイード国際空港ではドローン攻撃の破片で1人が死亡、7人が負傷。DXBでもコンコースの一部に被害が出てスタッフ4人が負傷した。カタールのハマド国際空港も空域閉鎖にともない全便を一時停止している。

航空データ分析会社シリウムによると、中東向けだけで1800便超がキャンセルされた。エミレーツ航空は3月2日15時(UAE時間)まで全便停止、カタール航空も再開時期は未定としている。エティハド航空、フライドバイも同様だ。

UAE、イラク、クウェート、バーレーン、イラン、イスラエルの空域はほぼ飛行機が飛んでいない状態で、EU航空安全機関(EASA)は中東・ペルシャ湾上空を「民間航空にとって高リスク」と警告した。

▲中東情勢悪化に伴う主要空港・空域の閉鎖状況(3月2日時点)(クリックで拡大)

アジア-欧州、アジア-中東、アジア-アフリカの航空貨物ルートが広い範囲で止まった。オランダの調査会社ロテイトによると、中東キャリアの運航停止とほかのキャリアの中東回避が重なり、世界全体の航空貨物キャパシティが前週比18%減った。

カタール航空カーゴはボーイング777型フレイター29機を運航する世界有数のフレイター事業者だが、全便が止まっている。エミレーツ・スカイカーゴも777型フレイター十数機の運航を停止した。航空貨物で最大級のこの2社が同時に止まった影響は大きい。

代替ルートとしてはロシア上空を経由する北回りやアフリカ経由の南回りがあるが、飛行時間は数時間から10時間以上延びる。燃料消費が増え、重量制限で積める貨物量も減る。ロテイトによれば、制裁やロシア空域閉鎖の影響を受けないアジアのフレイター運航会社が中東を避けてロシア上空経由で欧州に向かう動きも出ている。

海外物流メディアの報道では、大規模なキャンセルが続けばアジア-欧州を中心に航空貨物運賃が急騰するとの見方が強い。戦争リスクサーチャージや緊急紛争サーチャージの導入も広がっている。

海上輸送も深刻だ。本誌既報の通り、ホルムズ海峡ではイラン革命防衛隊(IRGC)がVHF無線で全船舶に通過禁止を通告。海外メディアによると2月28日時点で通過船舶は7割減り、APモラー・マースク(デンマーク)、MSC(スイス)、CMA CGM(フランス)、ハパックロイド(ドイツ)の世界大手4社が全便停止を発表した。日本郵船、商船三井、川崎汽船の邦船3社もホルムズ海峡の通過を止めている。ハパックロイドはペルシャ湾向け貨物に1TEUあたり1500ドル(冷蔵・特殊コンテナは3500ドル)、CMA CGMは1FEUあたり4000ドルの緊急サーチャージをそれぞれ導入した。紅海経由のスエズ運河ルートへの復帰計画も白紙に戻り、船で運ぶ手段がどんどん狭まっている。

ブレント原油は3月1日の取引開始時に一時81ドル超まで跳ね上がり、その後も80ドル前後で推移している。米エネルギー情報局(EIA)の2月時点の予測では2026年の平均を58ドルとしていたが、紛争が長引けばこの水準は維持できない。ホルムズ海峡は世界の海上原油輸送の2割を担っており、通航停止が長引くと航空燃料コスト(運航コスト全体の3割前後を占める)が大きく上がる。

日本への波及も避けられない。成田空港の26年1月の国際航空貨物量は16万1970トン(前年同月比10%増)と22か月連続のプラスだったが、これは危機前の数字だ。日本発のアジア域内路線は比較的影響が小さいものの、欧州・アフリカ向け貨物の一部はドバイを中継しており、ハブ停止の余波は3月以降の実績に表れてくる。台湾の桃園空港ではエミレーツやエティハドなど中東便が複数キャンセルされ、台湾キャリアのエバー航空(長栄航空)やチャイナエアラインズ(華航)はイラン空域を避けて運航を続けているものの、迂回で時間もコストもかさんでいる。

ここに重なるのが米国の関税だ。2月20日に連邦最高裁が国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく関税を違憲と判断したが、トランプ政権はすぐに1974年通商法第122条を使い、24日から全輸入品に臨時関税を課した。当初は10%だったが22日に法定上限の15%へ引き上げられ、現在はこの税率で適用されている。150日間(7月24日まで)の時限措置で、医薬品や航空宇宙製品など一部品目は対象外だ。

25年は関税引き上げ前の駆け込み輸入(フロントローディング)が目立ったが、その反動で26年の米国向け輸入需要は全体として鈍っていた。ただし半導体やAI関連の高付加価値貨物はデータセンター建設ブームを背景に堅調で、航空シフトが続いている。供給に余裕があった航空貨物市場が、中東の混乱で一気にひっ迫した形だ。

▲地政学リスクの顕在化と物流への影響整理(クリックで拡大)

荷主やフォワーダーにとっては、欧州・アフリカ向けの代替ルート確保、戦争リスクサーチャージ・燃料サーチャージの契約条件の確認、在庫戦略の見直しが待ったなしの課題だ。

主要船社、ホルムズ海峡を全面停止【3月2日】

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