ロジスティクス東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催中の「物流DX EXPO 2026 夏 東京」は会期3日目を迎え、特別企画「物流DX未来会議2026 AFTER ACTION IN TOKYO」が行われた。そのなかで、Sustainable Shared Transport(SST、東京都中央区)社長の高野茂幸氏が登壇し、LOGISTICS TODAYの赤澤裕介編集長がモデレーターを務めるセッション「サプライチェーンの持続可能性に欠かせない共同物流の実践」が開催された。
セッションでは、CLO(物流統括管理者)をはじめとした法改正対応が求められる荷主企業や物流事業者などの視点から、持続可能なサプライチェーンの実現に向けた共同物流プラットフォームへの参画価値や、物流機能の再構築について議論が行われた。

SSTは、荷主企業や物流事業者が参加できる、主にパレット単位のオープンな共同物流プラットフォームを提供する企業。高野氏はヤマト運輸に籍を置きながら、ヤマトグループが大株主となっている同社の代表を務めている。同社は2024年5月に設立され、およそ1年をかけて事業を開始した。物流の効率化や持続可能性向上に向けた流通業務総合効率化法(物効法)の改正に伴い、国土交通省が物流企業に対して出資を行える新たな支援制度がスタートしたが、SSTはその第一号案件として同省からの出資を受けている。また、内閣府のSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)において「メーカー・卸・小売間での情報分断が物流の非効率を招いている」という課題認識が示されたことも大きな契機となっているという。
設立の背景には、ヤマトグループが培ってきたサステナビリティ関連のノウハウを社会へ還元する狙いがあるが、SSTは単なるヤマトの事業ではなく、多様な事業者が参加できる公共性の高い事業を目指す。

▲Sustainable Shared Transport社長の高野茂幸氏
実運用として、現在SSTは宮城から熊本までの範囲で、大型トラックによるパレット単位の共同・リレー輸送を実施。40社ほどの地域の物流事業者とパートナーシップを締結し、さらにおよそ1600社の中小物流事業者が加盟する日本ローカルネットワークシステム協同組合連合会とも連携協定を結び、ネットワークを構築している。
セッションでは、具体的な利用事例として2つが紹介された。空調機器メーカーの事例では、東北・北海道でのエアコン需要増加に伴い、関西から宮城方面へ多頻度・小ロットで補修部品を送るニーズに対応した。2-3パレット分の荷物を他社貨物と積み合わせることで、関西の午前中に出荷し、翌日午前中に東北へ届けるというサービスレベルを実現している。JR貨物(日本貨物鉄道)との連携である「パレットレール便」では、需要の偏りによって空のまま回送されるコンテナ内のスペースを、パレット単位で提供する取り組みを行っている。貨物駅までの輸送と駅からの配送は、SSTの地域パートナーが担う。本年度に開始したばかりのトライアル段階であり、すでに大手食品メーカーによる利用事例がある。
高野氏は、モーダルシフトの推進において「多様性」と「分業性」が重要であると強調した。鉄道輸送をトラックの単純な代替とするのではなく、トラック確保が困難な時などに備えて荷主が複数の輸送手段を持つこと(多様性)と、長距離の幹線輸送と地域配送をそれぞれ得意な専門事業者が分担すること(分業性)が、持続可能な物流につながるという見解を示し、「幹線輸送は専門の事業者が担い、地域のラストワンマイルはその地域を得意とする事業者が担う。この分業を徹底し、長距離を小型トラックで無理に運ぶような非効率な運用は見直していくべきだ」と語った。

▲LOGISTICS TODAYの赤澤裕介編集長
SSTは、情報分断の課題を解決するため、SIPの取り組みで富士通が主導して構築したデータ基盤を活用。異なる荷主や物流事業者のシステムで形式が異なるデータをAPIなどで標準化し、一元管理につなげている。共同物流で懸念される他社への情報開示については、ブロックチェーン技術などを活用したセキュリティー基盤を構築している。物流データのコードには、国際標準であるGS1 JAPANの「SSCC」を採用している。発注時から最終納品まで同一のコードで管理することで、取引先ごとのIT調整や倉庫でのデータ紐付けの手間を省き、配車情報と貨物情報の非連携といった課題の解消を目指す。集荷、積み下ろし、積み込み、納品の各拠点でスキャンを行い、パレット単位で貨物の所在を一つのコードで追跡できる仕組みを備えている。
特定荷主に対して物流効率化の計画提出が義務付けられ、2024年4月からはCLO(物流統括管理者)の選任も義務化された現状について、モデレーターの赤澤編集長が言及した。高野氏は、多くの企業が法令対応を進める一方で「本質的に何に挑戦することが社会的責任を果たすことにつながるのか、各社ともその具体策を模索している段階にある」と指摘した。
共同物流は、積み合わせによる輸送費上昇やリードタイムの延長、調整負担の増加といったデメリットが普及の障壁となってきた。しかし高野氏は、「標準化されたルールと基盤の上で共同物流を行うことで、デメリットをゼロにはできなくとも、メリットが上回る状態へと近づけられる」と語る。また、「日本のトラック事業者の99%を占める中小事業者が効率的に働ける環境づくりが、共同物流の進展に不可欠である」とした。
今後の展望としては、経済産業省が2040年までの実現目標を掲げて推進している「フィジカルインターネット」への貢献が挙げられた。現在は標準化の進めやすさから同業種内での共同物流が多いが、高野氏によれば「今後は東から西へ荷物が流れる業界と、西から東へ流れる業界を組み合わせるなど、異業種間での連携にこそ価値がある」という。SSTは業種を問わず利用できるオープンな仕組みを志向しており、物流事業者に加えて荷主や業界団体、ITベンダーなどとの協調領域を形成し、利用者との対話を通じて実践可能な形を共に模索していく方針を示した。
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