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熟練ワーカーの偏在配置を解消して生産性を安定化

二層構造のセンターでの「スマートグループ」活用術

2026年11月5日 (木)

話題食品卸系3PLであるA社の中部事業所は2026年4月、汎用型センターから地元食品スーパー向け専用センター(一括物流センター)に機能を変更した。しかし、リニューアル直後に想定物量と人員配置のミスマッチが発生。作業の生産性低下や稼働時間超過に見舞われ、派遣会社などへの外注費が大きく膨らんでしまった。転機となったのは、タイミーの「スマートグループ機能」の活用だ。稼働状況に応じて自動でグループ分けするとともに、あえてフロアの垣根を越えて熟練ワーカーを配置する。この運用によって、半年というスピードで大幅なコスト削減と現場の安定化を実現しつつある。

汎用センターから専用センターへ機能転換

大手食品卸グループ傘下の物流会社A社が中部エリアに構える事業所はもともと、親会社の複数の取引先に商品を供給する汎用型物流センターとしての役目を果たしてきたが、その機能の大幅なリニューアルを実行した。26年4月以降は、地元の食品スーパーB社向けの専用センター(一括物流センター)として稼働している。

専用センターとして生まれ変わった同事業所からB社の各店舗に供給しているのは、加工食品、酒類・飲料を中心としたドライ(常温)アイテムだ。事業所のフロアは2層構造で、1階部分では飲料や砂糖類といった重量品をメーンに扱い、2階部分ではそれ以外の食品やB社のPB(プライベートブランド)商品などを管理する。立ち上げ当初は各商品を一時保管した後に出荷するDC型(在庫型)センターとして機能していたが、現在では一部商品を対象にTC型(通過型)での運用ニーズにも対応しているという。

▲イメージ

庫内オペレーションは入荷から始まる。全国各地のメーカーから届いた商品は、入荷検品を経て1階、2階それぞれのラックに格納される。一方、出荷の工程だが、店舗からのオーダーに従い、作業スタッフがハンディ端末を活用して商品をピッキングし、専用のかご台車に積み込んでいく。かご台車は店舗ごとに割り当てられており、1階・2階それぞれで作業を終えた後、かご台車を1階に集約。店舗別のエリアへ寄せて並べる。最終的にかご台車の数量を確認したうえでステージングし、ルート配送を担う運送会社のドライバーに翌朝に引き渡すという流れだ。およそ100店舗分の入出荷作業を、日々80人から100人のスタッフで処理している。

立ち上げ当初に直面した深夜までの混乱

汎用型センターは複数の荷主、複数の業態の荷物を同じ屋根の下で扱う分、ある荷主の出荷が落ち着いている時期に別の荷主の繁忙期が重なるといったことが起こりやすく、センター全体で見れば物量の波が均(なら)されやすい。荷主が複数いる分、出荷の締め時間もいくつかに分かれるため、作業のピーク自体が一日の中で分散する構造になる傾向がある。

これに対して、専用センターは、荷を持つ相手が1社に絞られている分、入出荷量はその荷主の店頭での売れ行きにそのまま左右される。特売を打った翌日や来店客が増えた週末には物量が跳ね上がり、締め時間もセンター全体でひとつに集約されるため、限られた時間帯に作業が集中しやすい。その分、必要な人員を見誤ったときの影響も大きく出やすいとされている。

A社の事業所も例外ではなかった。機能変更に伴い、汎用センターにはない専用センター特有の運営の難しさに直面した。出荷の波動は日々の曜日差だけでなく特売の有無によっても大きく振れ、作業スタッフの配置や確保量の調整がうまくいかないことが専用センター化直後の大きな悩みとなった。

専用センターとして稼働した当初、慣れない業務も多く、現場は混乱した。既存の従業員に加えて人材派遣会社からの派遣スタッフやスポットワーカーを動員し、なんとか翌朝の引き渡し時刻までに荷揃えを間に合わせる、という綱渡りの運用が続いたという。

同事業所でスタッフのシフト調整を担当するC氏は「4月、5月あたりは本当に厳しかった。深夜0時、1時の求人を毎日10人分ぐらい出して、それでもぎりぎりだった。作業が終わるのが翌朝のトラックが引き取りにくる直前ということも少なくなかった」と振り返る。

現場の混乱は、専用センター立ち上げにありがちな2つのずれに起因している。ひとつは、事前に見込んでいた物量と、実際に稼働し始めてから明らかになった物量との差。もうひとつは、実際に作業をしてみるまでは分からない、現場の生産性そのものの見えにくさである。この2つのずれが重なったことで日々の作業生産性が安定せず、それを埋め合わせるために人員を積み増さざるを得ない状態が続いた。

現場改善にも並行して取り組んではいたものの、混乱が収まるまでには時間を要した。こうした運用が続いた結果、外注費、つまり派遣やスポットワーカーにかかる人件費は当初予算よりも大きく膨らんでしまったという。

経験値をもとに自動でグルーピング

この状況を変えるきっかけになったのが、タイミー側からの「スマートグループ機能」の提案だった。スマートグループ機能とは、稼働回数などの条件をあらかじめ設定しておくと、条件を満たしたワーカーをシステムが自動でグループへ振り分ける仕組みだ。
タイミーの柳澤氏は「ワーカーの派遣費用負担が大きくなったとしても、出荷量そのものは絶対に落とせないということであれば、過去に働いた経験のある方を狙って働きに来てもらう仕組みを作ろうと考えた」と提案の経緯を語る。

(クリックで拡大、出所:タイミー)

同事業所では、スポットワーカーの稼働回数に応じて「初心者グループ」(1~4回)、「中級者グループ」(4~9回)、「熟練グループ」(10回以上)の3段階に分類。さらに、通常は直近30日ほどの実績を基準にするところを、この事業所では直近2か月の実績を基準に設定した。専用センターとして立ち上がったばかりという事情を踏まえ、対象期間を広げることでより多くのワーカーに求人を届けられるようにする狙いだ。

「スマートグループ機能」活用の肝になっているのが、2階で直近2か月に10回以上稼働し習熟度の高いスタッフに、1階の求人も自動的に案内される設定にしている点だ。背景にあるのは、1階と2階の作業環境の違い。1階はトラックの荷降ろし口(バース)があり、外気の影響を受けやすく、空調が効きにくい。ハンディ端末を使って商品をピッキングし、かご台車に積むという作業内容は1階も2階も変わらないが、1階の暑さを知る経験者ほど、涼しい2階の求人を選ぶ傾向があった。
柳澤氏は「作業内容は同じなのだから、両方できるマルチプレイヤーを増やせないかと考えたのが発想の出発点だった」と話す。

▲タイミー 広域物流事業部 東海物流G 東海物流2チーム 柳澤秀保氏

あわせて、求人を公開する順番にも工夫を凝らした。1階の求人を先に公開し、2階の求人はやや遅れて公開することにした。同時に公開すると涼しい2階に応募が偏りやすいため、人員が必要な1階の枠から先に案内するようにした。経験豊富なワーカーの中から新人教育を担う「ワーカーリーダー」という役割も設け、専用の求人を1か月単位でまとめて公開する運用も並行して進めている。
この仕組みにたどり着くまでには試行錯誤もあった。当初はグループごとに段階的に求人を公開する方法を試したが、思うように応募が集まらず、現在は3グループ同時に公開するスタイルに切り替えているという。

生産性改善で外注費を大幅に圧縮

この間、前述した通り、事業所では現場改善も並行して進められていた。ピッキング指示の札の置き場所を分かりやすく配置し直したり、作業動線に合わせてかご台車の置き場を見直したりと、地道な工夫を積み重ねた。柳澤氏は「スマートグループでワーカーの作業の習熟度を平準化させる一方で、現場側のこうした改善もセットで進めてもらえたのが大きかった」と振り返る。

この運用が定着し始めたのは、専用センター化から2か月ほど経った時期からだ。深夜から翌朝まで作業が続いていた状態は徐々に解消され、生産性が安定するにつれて荷揃えにかかる時間も短縮されていった。C氏は「6月ぐらいから、ようやく『普通』と呼べる状態になってきた」と語る。

新人教育に費やす時間も大きく減った。以前は新人ひとりに30分から1時間ほどかけて端末の使い方などを教える必要があったが、リピーターの中から自然発生したワーカーリーダーが教育を担うようになり、社員が付きっきりで教える場面はほぼなくなった。C氏は「今はもう、簡単な指示を出すだけで、あとはワーカーさん同士で現場を回してくれる。教育の手間は限りなくゼロに近づいた」と明かす。

コスト面の効果も明確だ。専用センター化から半年足らずの間に、外注費を1000万円規模で圧縮できた。現在の人員構成は、直接雇用が全体の5~6割を占め、タイミーを通じてマッチングしたスポットワーカーになっており、タイミーの比率が人材派遣の比率を上回っているのが特徴だ。あわせて独自に生産性を数値化する仕組みも運用しており、基準を下回るワーカーには改善を促すなど、コスト削減と並行して品質面の管理にも力を入れている。

ツールの活用の仕方で変わる成果

この事業所での取り組みは、A社内でも注目されている。もっとも、現事業所においても、課題が完全になくなったわけではない。日によって物量を読み切れない難しさは残っており、人員を厚めに手当てした日に限って作業が早く終わり、逆に人が余ってしまうこともあるという。

柳澤氏は「お客様から実際の出荷数量が知らされる朝の時点で、人数が多かったか少なかったかを実感することがある。より精度高く、確実に来てくれるワーカーをアサインできるサービスに育てていきたい」と話す。

今回の活用事例が示すのは、スマートグループ機能を作業内容が共通する複数のエリア間で、あえて経験者を横断的に呼び込む仕掛けとしても活用できるという点だ。

人気のない持ち場にスタッフが集まらないのは、多くの現場に共通する悩みだろう。だが、「作業内容が同じなら、経験者はどちらのエリアでも即戦力になり得る」という視点に立ち、稼働条件をわずかに調整すれば、母集団を分断せずに済む。求人を出す順番を工夫し、埋めたい枠から先に人を誘導するという小さな運用ノウハウも含め、同じように複数エリア・複数工程を抱える物流現場にとって、参考にできる余地は大きいはずだ。

「新規ワーカー」を必ず1人入れて将来の戦力を育成

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