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三井倉庫HD社長、投資抑制強調「大掛かりな再編」検討も

2017年12月5日 (火)
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話題三井倉庫ホールディングスは5日、ことし6月に就任した古賀博文社長が新中期経営計画の狙いを説明する記者説明会を開き、これまでの積極的なM&Aによる拡大方針から、コスト削減を中心とした利益重視へ転換していく考えを示した。また、従来以上の「大掛かりな事業再編」についても検討していることを明らかにした。

古賀社長は2013年3月期から18年3月期(今期)までを対象期間とした“前”中計の“結果”について「M&Aで645億円、物流施設を中心とする売上投資で267億円の912億円を投資し、売り上げは1482億円から2255億円へと拡大した」と規模の拡大が進展したことを強調。

しかし、営業利益は54億円から一時33億円まで低下し、その後58億円まで戻したものの、「これだけの投資にもかかわらず、利益が横ばいという状況だった」と述べ、投資によって利益を生み出せなかった反省から、最終年度を待たずに新中計(18年3月期-22年3月期)策定に至った背景を説明した。

前中計の成果として「物流事業が拡大したことで不動産からの脱却が進んだ」ことを挙げたが、「最終年度に110億円」を掲げた営業利益目標の達成は困難で、14年3月期の1100億円程度から17年3月期には1689億円まで積み上がった有利子負債の削減が、377億円まで減少した自己資本の回復と併せて重要な経営課題として浮上。

積極的なM&Aで、保管中心の従来の強みに、既存顧客に別のサービス提供するなど前後工程を「一気通貫」で提供し、隙間領域を深掘りするという前中計の数少ない成果を生かしつつも、新中計では財務基盤の立て直しに注力しながら、投資回収に力点を移していくとの方針を明らかにした。

今後は最終年度に営業利益100億円を最重要目標として設定し、「顧客から真っ先に相談してもらえる企業」を意味する「ファーストコールカンパニー」を目指す。最初の3年で抜本的な事業収益力の強化と財務基盤の立て直しに取り組むこと、4年目から顧客起点の統合ソリューションサービスを実績として「収穫していく」ことを掲げる。

▲三井倉庫ホールディングス古賀博文社長

具体的には、「チャレンジ20」と名付けたコスト削減策を推進し、グループ全体で20億円超のコストを減らすほか、財務基盤再建へ「不要不急の投資」を抑え、効率の悪い資産を見直して自己資本の回復につなげる。また、事業間の隙間を埋めて未取引事業分野へ横展開していく取り組みとして、18年4月にも持株会社に「戦略営業部」を新設する考え。

古賀氏は、「営業利益100億円」を達成する目算として「現在の実力ベースの営業利益は65億円。これにチャレンジ20で20億円のコストを削減し、投資を伴わずに売り上げを10億円増やすことで、最終的に100億円が達成できる」と説明するとともに、営業利益目標の達成が有利子負債1300億円などのほかの目標も達成できる“カギ”になるとの見方を示した。

■主な質疑応答
――財務基盤の再建について、現時点でどんな内容を考えているか。

古賀博文・三井倉庫ホールディングス社長:基本的には「抜本的な事業収益力強化」と連動していると考えている。投資をきちっと刈り取る。いらない、急がない投資を3年間は抑える。

――前中計で掲げた量的拡大方針をストップするということか。

古賀氏:前中計ではかなり拡大に注力した。これによって確かに不動産事業への依存度が下がったが、新中計ではいったんストップして、きちっと耕すことに力を入れる。売り上げにこだわらず、利益にこだわる。物流を伸ばして不動産を下げる方向は変わらない。

――事業会社の再編も考えているのか。

古賀氏:体制の変更、再編を頭に入れ、具体的な計画も検討している。重複する機能を集約する再編はこれまでも取り組んできたが、新中計ではもう少し大掛かりなことも念頭に置いている。ただ、今はまだ話せる状況にない。

――設備投資を抑えるということだが、3年間でどの程度予定しているのか。

中山信夫専務:ラフに言って300億円を上回り、400億円を下回る水準だ。IT、ロボット含む投資に100億円、物流施設、賃貸不動産のメンテナンス投資に2百数十億円ですべて。(営業利益100億円の成算については)不動産事業の利益は50億円が実力といったところだが、物流は利益率3%で少なくとも60億円は見えてくる。コスト削減と合わせれば、最終年度に100億円の営業利益は十分達成可能だと思っている。質の高いソリューションを提供し、適正料金をもらうことに尽きる。

――(前期、160億円ののれんの減損に伴う特別損失を計上した)三井倉庫ロジスティクスの今後の立て直しについて、どう考えているのか。

古賀氏:三井倉庫ロジは160億円の減損損失を計上した。2012年の買収当時は家電量販店に勢いがあり、その時に利益を想定して買ったものの、その後予想以上にインターネット通販などが増えたことで、家電量販店の売り上げが落ち込んだ。当初予想していた利益に行かなかったということで、その差額を減損損失に計上したということであり、グループ内の他社と比べても利益は出している。

宅配大手は「大きな荷物を顧客宅へ配達し、例えばクーラーを設置する」ということができないが、三井倉庫ロジは家電以外も含めてできる体制がある。コーヒーメーカー製造のフランケとの業務提携も、このノウハウを強化するものだ。

――戦略営業部の規模と設置時期は。

古賀氏:事業部か営業部かはわからないが、できれば数字を背負うという意味で営業部にしたい。新設時期は4月1日と考えている。事業会社同士が組んで営業することも不可能ではないが、「ほかの事業会社のために働こう」というインセンティブがききにくいと考えた。規模は具体的に決めてないが、10人程度から。事業会社から1人ずつきてもらって、プラスアルファで立ち上げる。こういう営業ができるということを事業会社に知ってもらうのが目的の一つ。最終的にはグループのワンストップ営業に持っていくのが目標。

――ICT、ロボットなどへの対応は。

古賀氏:AI、自動倉庫、自動運転はいま一生懸命勉強しているが、われわれが開発するというものではない。どこと組むか、というのが基本的な考え方。(導入が)早すぎると「後でもっとすごいもの」が出てくるし、遅すぎても追いつけなくなる。現在は「あるセクション」が外に出て勉強している。IT投資は更新含めて100億円だ。