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SBSHD鎌田正彦社長に聞く、東芝ロジ買収の狙い

2020年5月27日 (水)

話題SBSホールディングスと東芝は26日、東芝が物流子会社「東芝ロジスティクス」の株式66.6%をSBSに199.8億円で売却することで合意し、株式譲渡契約を結んだと発表した。これにより、SBSグループの売上規模は3620億円に達する。

売上構成が異なる海運系を除く物流企業の売上高を比較した場合、SBSは2555億円で業界13番手となるが、東芝ロジ(売上高893億円、2019年3月期)のほか、TLロジサービス(同124億円)、東芝ロジスティクス米国(48億円)などその子会社15社を傘下に収めることになるため、鴻池運輸(2941億円、19年3月期)、福山通運(2930億円、20年3月期)、上組(2788億円、同)を抜き去り、3620億円で業界トップ10入を果たす。東芝ロジを買収する目的、今後の展望を同社の鎌田正彦社長に聞いた。(赤澤裕介)

SBSが売上規模を追求するのは、目先の利益を増やしたいというのとは異なる理由がある。同社は2004年に雪印物流(現SBSフレック)、05年に東急ロジスティック(現SBSロジコム)、06年に全通(現SBSゼンツウ)、10年にビクターロジスティクス(現SBSロジコム)、18年にリコーロジスティクス(現SBSリコーロジスティクス)と、大型合併を繰り返して成長してきた。

■売上規模追求は「受託可能な案件」を拡大するため

M&Aによって売上規模を追求する狙いについて、鎌田社長は「現在の売上規模では、まだ受託しきれない物流案件が存在する。物流センターの運営を含めた物流受託は、どれほど大規模な案件でも対応できる水準となったが、あくまで単一拠点で考えれば、ということ。複数の拠点運営を一括してサプライチェーンまるごとの物流運営を委託し、本業に集中したいという企業ニーズに対応しようとすれば、さらに売上規模を拡大し、対応できる保管・輸送メニューを広げていく必要があった」と話し、さらに大規模な物流案件を受託するための手段として、東芝ロジスティクスを買収したことを強調する。

当初、SBSは今期の売上が2650億円程度に増えるとの見通しを発表していたが、今回のM&Aによって21年1月からは東芝ロジとその子会社を連結化することにより、1050億円程度を上積みし、3700-3800億円になることが想定される。

M&Aの対象として東芝ロジを選んだことで、売上拡大のみにとどまらない利点も見えてくる。例えば、東芝ロジの強みとして、これまでSBSが対応しきれなかった超大型・超重量物の輸送がある。受託する案件の規模に加え、「SBSロジコムの前身である東急ロジスティックは鉄道車両の道路輸送を得意としていたが、今後は日本の物流企業で数社しか対応できないようなプラント向け超重量輸送をサービスメニューに加えることができる」(鎌田氏)と、輸送・保管サービスそのもののレベルを引き上げることにもつながりそうだ。

■東芝ロジの海外ルートにほかの貨物乗せる狙いも

東芝の連結売上高(19年3月期)3兆7000億円のうち43%、1兆6000億円を海外事業が占めているが、これを物流面で支える東芝ロジの海外拠点展開も、SBSに新たな事業機会をもたらすことになろう。

鎌田氏は「東芝ロジの海外展開を活用してSBSリコーロジスティクスの大型貨物を国際輸送したり、グループ内で展開している物流サービスを欧米やアフリカなどに広げていくということも選択肢に入ってくる」と話し、グループの既存事業との相乗効果もM&Aの狙いの一つだったと明かす。

東芝ロジが企業物流の一括受託に荷主のロジスティクス戦略の企画といった「コンサルティング要素」を加える「4PL」を前面に打ち出し、3PL以上に幅広く深い領域の物流受託を掲げていることも、3PLビジネスを主力事業としてきたSBSには、より深く広い営業戦略が可能になるという意味で好都合だ。さらに、「東芝ロジが利用している延べ10数万坪の物流拠点のうち、可能なものはSBSグループが運営する拠点に統合していくことで利益を増やしながらグループ間の協業体制を広げていく」ことも検討するという。

■「融合」3年以内に終え、売上5000億円台も視野に

今後は既存事業会社との早期の「融合」が求められることになるが、この点について鎌田氏は「SBSグループ企業の本社を一つの建物に、できれば1つのフロアに集約したい」と話す。

「これによって企業間のやり取りが日常的に行われる職場環境を3年以内に整え、グループ営業を軌道に乗せたい。これらをいかに円滑にできるか、が当面の課題となる。そうすればいよいよ売上5000億円台を目指すチャンスが見えてくるのではないか」(鎌田氏)

SBSの売上高は00年度、156億円だった。東芝ロジが加わることで、その規模は単純合算で24倍の3700億円に膨らむこととなる。20年前にメディアで「物流業界の風雲児」と呼ばれた鎌田氏が、不動産事業と組み合わせた3PLモデルを柱に複数の相乗効果を獲得する独自のビジネスモデルを追求していくため、さらにM&A戦略を加速させるのは間違いない。

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