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トランコムが高精度測位実験に成功、物流活用へ

2020年7月6日 (月)

調査・データ安定した高精度測位によって、物流分野にも恩恵をもたらすことが期待されている準天頂衛星システム「みちびき」。物流現場の変革を促す存在として今後、さまざまな仕組みに活用されていくとみられているが、活用レベルはどこまで進んでいるのか。運輸デジタル・ビジネス協議会(TDBC)が主催するワーキンググループのプレゼンテーションから、その現在地を探る。

みちびきは日本版GPSとも呼ばれる。これまでの衛星測位サービスは米国が運用するGPS衛星を利用しており、視界に入る衛星数が少ないなどの理由から、安定したサービスが受けられていない現状があった。

その点、みちびきはGPSと一体で利用できるため、安定した高精度測位を行うための衛星数を確保することができ、加えて安価に受信機を調達できるため、地理空間情報を高度に活用した技術開発が期待されている。

■誤差10センチの追跡を実現

トランコムを中心とするワーキンググループは、みちびきを物流分野に活用する取り組みを実証するため、今年度は「宅配分野で正確な位置情報を取得し、どのように活用していくか」と「屋内外で継ぎ目なく使える正確な位置情報システムの利便性検証」の2つのテーマについて、実証実験を行う計画だという。

▲トラックのフード内に対応アンテナを設置し、高精度測位を行った(出所:トランコム)

まずは宅配分野への活用。2020年3月下旬に関根ロジスティクスのラストワンマイル車両に受信機とアンテナを設置し、埼玉・千葉・東京地区の40キロ四方を走行する実験を行った。結果、車両が片側二車線のうちどちらの車線を走行したか、交差点でどのように車線変更をして曲がったかなど、各地点の走行軌道を車線レベルを超える精度(誤差10センチ程度)で確認することができた。

トランコムによれば、この実験結果を踏まえた物流現場への活用方法については検討中とのことだが、車両の駐車位置まで正確に把握することが可能なため、よりシームレスかつリアルタイムな物流管理が期待される。

また2020年度後半に第二東名での無人隊列走行の実証実験が予定されているが、みちびきを使った正確な位置情報が自動運転や隊列走行の実現を早めることが期待されている。

■倉庫内の荷物移動も正確に把握

▲トラックの走行を追跡した様子(出所:トランコム)

「屋内外の正確な位置情報を継ぎ目なく取り込む利便性」についてはどうか。この実験については、屋外から倉庫までのトラックの走行と駐車位置を追跡するものと、倉庫内の荷物をパレット単位で追跡するものの、2つの実験を行った。

1つ目の実験では、長野県安曇野市の倉庫から近くの道の駅までを往復走行し、倉庫内のトラックバースへの到着を確認できるかを検証。結果、トラックが倉庫を出発後、道の駅を折り返して倉庫内のトラックバースに入り、駐車したことを確認することができた。

2つ目の実験では、フォークリフトとパレットに送受信機を設置し、倉庫1階に着荷した荷物を2階のある場所までパレット単位で追跡できるかを検証した。結果、荷物が1階からエレベーターで2階に移動して目的の場所に置かれたことを確認。倉庫内の詳細な移動についても追跡できることが実証された。

これにより、荷物の位置情報を川上から川下まで(調達→製造→倉庫→店舗)継ぎ目なく追跡することが可能であると確認され、屋外・屋内両方の物流現場において、みちびきを使った新技術の適用は可能であると実証された。

ただし、この技術を具体的にどういった場面で活用するかはまだ決まっていないため、今後はより具体的な場面設定とその実証が必要とされている。また、費用対効果についても現時点では不明であるが、TDBCは実証から実展開に向けたチャレンジは不可欠であると考えており、今後より具体的なチャレンジが期待される。