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船橋市、物流施設2か所のクラスター「終息」と判断

2020年12月7日 (月)

拠点・施設千葉県船橋市は3日、市内のデイリートランスポート習志野物流センターと松岡船橋物流センターで発生したクラスター(集団感染)が終息したとの見方を示した。11月7日時点で当該センターの全作業者の出勤を停止していたデイリートランスポート(同市)は、市の見解を受けて終息を発表し、現在は営業を再開している。

10月から11月にかけてクラスターが発生した2つの物流施設では、合計142人の感染が報告された。その内訳は、デイリートランスポート習志野物流センターで106人、松岡船橋物流センターに入居する昭和倉庫(大阪市都島区)の事業所で21人、松岡(山口県下関市)の事業所で8人、その他の事業所で7人となっている。

デイリートランスポート習志野物流センターでは、市保健所が当初「全従業員は700人程度」と認識していたが、最終的に検査対象者が915人であることが判明し、これまでに861人の検査を終えたが、54人は連絡が取れずに検査を実施できなかった。

感染者数の推移を見ると、最初は1人ずつ感染者が見つかり、後に爆発的に感染が広がっていたことが分かる。市保健所は、各事業所の従業員が作業中にマスクを着用していたことを確認しており、「マスク着用時に爆発的に感染が広がるのは考えづらい」「昼食や休憩時間、喫煙室などで感染が広がったのではないか」との見方を示していた。

■船橋市内2施設の感染判明数推移(市発表に基づき編集部作成)
 デイリートランスポート
習志野物流センター
松岡船橋物流センター
合計1062187
10月15日1
10月16日1
10月17日1
10月19日9
10月20日6
10月21日16
10月22日25
10月23日10
10月24日10
10月25日7
10月26日1
10月27日3松岡船橋物流センター内
10月28日2昭和倉庫松岡その他事業所
10月29日31
10月30日1
10月31日222
11月1日13
11月2日61
11月3日1431
11月4日11
11月5日13
11月6日1
11月9日1
11月10日2

市保健所は、デイリートランスポートに対して(1)従業員に対する感染予防・クラスター予防説明会の実施(2)説明を受けていない従業員を出社させない管理体制の構築(3)休憩室に仕切り板の設置(4)喫煙所の廃止(5)健康チェック表の作成(6)事業所から保健所への報告体制の構築――といった指導を実施。

松岡船橋物流センター内の2事業所に対しては、(1)休憩室・応接室のパテーション設置(2)更衣室・喫煙所の過密対策(3)休憩室・更衣室・トイレの消毒(4)健康チェック表の作成(5)事業所から保健所への報告体制の構築――といった指導を行い、該当の3事業所がこれらの指導を実行していることを確認している。

個別対応・対処指導の情報共有を

各地の施設での新型コロナウイルスのクラスター発生と事後処理の情報が、無秩序な状態で流布されている。もちろん個別事案の原因追求や収束までの顛末経緯の開示は不可欠であるし、リスク意識の喚起にも有効だ。

しかし、せっかく事態の終始を時系列にして原因追求と事後対処の具体的方策までを保健所が公表しているにもかかわらず、その共有が不十分と思えてしかたない――だれかが意図的に看過・放置しているわけでもないのに、だ。情報の集約化と類型化のうえ、発信して周知させる主役は誰が務めているのか。

その情報を受信して、自らの拠点や業務範囲にかかわる施設などでの(1)公表された対処策の理解(2)準じた運用の実施の有無(3)不備の確認とそのルーチン化、などの公的もしくは業界団体などの巡回監視や実施確認の方法や頻度などの規定や実行組織の存在が見当たらない。

保健所や医療機関などの情報発信者側は広報作業よりも現場対応に追われ、われわれ物流業界をはじめとする受信者側は「自己責任での適正対応」という放任に戸惑いながら、我流での「それなりに」「できることは全部」「精いっぱい」などの言葉でしか現状の説明ができないのが実情だ。

防疫の最前線にある当事者に任せっぱなしではなく、一歩下がった位置にいる行政組織や業界団体が、緊急時ゆえの強権発動を是とする気概で出張ってもらいたい。(企画編集委員・永田利紀)