ピックアップテーマ
 
テーマ一覧
 
スペシャルコンテンツ一覧

青函トンネルで年末年始に新幹線高速運転実施へ

2021年10月15日 (金)

(イメージ)

行政・団体国土交通省は15日、年末年始の一部時間帯で、北海道新幹線が青函トンネル内で高速走行を実施すると発表した。ことし12月31日から2022年1月4日までの5日間、貨物列車と新幹線の走行時間帯を区分することで、現行の時速160キロメートルから210キロメートルに引き上げる。

北海道新幹線をめぐっては、2030年度末に新函館北斗駅と札幌駅間の延伸を控えて、青函トンネル内の高速運転が課題となっている。国交省は、貨物列車を運行する日本貨物鉄道と協議しながら、高速運転に向けた時間帯区分の段階的な拡大を図っていくとみられる。

北海道新幹線は、青函トンネルを含む新青森駅・新函館北斗駅間149キロメートルのうち82キロメートルがいわゆる「新幹線と貨物列車の共用走行区間」だ。新幹線と貨物列車とのすれ違い時における安全走行を確保するため、2016年3月の同区間の開業時には時速140キロメートルに制限されていた。

その後、青函トンネル内の区間については時速160キロメートルに引き上げられた一方、貨物列車の運行本数が少ない年末年始とお盆に限り、ダイヤ調整により一部の新幹線で時速210キロメートルの運転を実施することとなり、2021年1月1日から4日まで最初の高速運転が実現した。

今回の年末年始の高速運転は、始発から15時30分ごろまでに青函トンネルを走行する新幹線上下各7本で実施。所要時間は3分程度短縮される。具体的なダイヤは北海道旅客鉄道(JR北海道)が後日発表する。

青函トンネルが貨物輸送の大動脈であることを意識した議論を

2030年度末の北海道新幹線の札幌延伸を控えて、青函トンネルの新幹線高速化をめぐる議論が白熱してきている。東京駅・札幌駅間を5時間程度で結ぶ計画となっているが、その実現には新青森駅・新函館北斗駅間にある「新幹線と貨物列車の共用走行区間」の課題解決が必要となる。新幹線の速達化の議論が先行しているくらいがあるが、貨物輸送のあり方にかかる議論はどこまで進んでいるのか。

青函トンネルは将来の新幹線の運行を想定して建設された。そこで問題になるのが在来線との運行区分であり、在来線の営業旅客列車の運行は16年3月に終了した。しかし、貨物列車の運行は引き続き継続した。青函トンネルの機能として、本州と北海道を結ぶ鉄道物流機能の維持は不可欠と判断したからだ。

しかし、新幹線の高速化と貨物列車の拡充は、相反する概念として語られることが依然として多い印象だ。線路を共有して運行する以上、こうした議論は終わりがないことだ。ここは、発想を変える必要がある。「線路の共有」から脱却し、新幹線規格の貨物コンテナ車両の開発など、運行形態の転換を図ることはできないか。従来の延長上の議論では、貨物輸送の大動脈を維持すると言う掛け声が説得力を持たない。(編集部・清水直樹)