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フジトランス、会計基盤統一で管理業務を効率化

2022年2月3日 (木)

ロジスティクスグローバル企業向けクラウド型会計サービス「multibook」(マルチブック)を提供するマルチブック(東京都品川区)は3日、日本全国と欧米・アジアで物流サービスを提供するフジトランスコーポレーション(名古屋市港区)の東南アジアの拠点にmultibookを導入したと発表した。本社と会計基盤を統一することで、内部統制の強化や会計業務の工数の削減、管理サポート体制の強化を同時に実現。国内外に事業を展開する物流企業の課題とされてきた拠点間での一貫した経営管理の成功例として、注目を集めそうだ。

フジトランスコーポレーションは、国内と海外で輸送サービスを提供する総合物流企業。国内では20か所の支店・出張所と13の子会社、海外では12か国で22の現地法人を展開する。

現地法人の会計システムは各法人で独自のものを使用しており、本社の経理部門が会計監査を行う際には、複数のシステムの操作方法を習得する必要があった。現地法人のシステム上で必要なデータが管理されていない場合には、現地のスタッフに問い合わせする必要があり、現地採用の経理スタッフとは言語の壁もあることから、必要なデータを得るまでに多くの手間や時間がかかることから、業務の効率化・最適化を進める上での課題となっていた。

フジトランスコーポレーションは、これらの課題を解決するため国内と現地法人の会計基盤を統一することが最善策と判断。フィリピン・タイ・シンガポール・ベトナムの現地法人にて当社が提供するクラウド型会計サービスmultibookを導入した。

各拠点で会計システムをクラウド上で一元管理することにより、承認機能や勘定科目体系の統一など内部統制のルールを統一。決算時におけるデータの確認作業を効率化した。現地スタッフへの照会時も、ルールが統一されたことでやり取りがスムーズになり工数や作業時間の削減につなげた。multibookの多言語対応機能により、現地スタッフも操作方法を習得しやすくなったほか、操作方法の指導や管理を担当する駐在員の負担軽減につながった。

▲multibookの活用イメージ(出所:マルチブック)

特にミャンマーの現地法人においては、外注していた記帳業務をmultibookを導入することで現地スタッフが行えるようになり、経理業務の完全内製化を実現。2021年2月のクーデターや新型コロナウイルスの感染拡大により、駐在員が帰国し現地に戻れない状況下でも、日本の本社で現地の会計データを確認しながら経理業務を行うことができ、不安定な国際情勢においても、現地の会計状況を本社が把握できる環境を整備することができた。

フジトランスコーポレーションでは、海外7拠点での追加導入を決定。ことしはアジアで展開する全拠点にmultibookを導入する予定だ。

マルチブックでは今後も、日本発のグローバル企業向けクラウド型会計・ERPサービスとして日本企業の海外進出や会計DX(デジタルトランスフォーメーション)化の取り組みを支援する。

内部の管理業務の最適化は、確実に顧客サービスとの相乗効果をもたらす

グローバルで拠点網を展開する物流企業が頭を悩ませるのが、拠点間の情報管理や共有におけるデジタル化の遅れだ。顧客に提供する物流サービスに関するシステムについては、ここに来てようやく改善の動きが広がり始めたが、依然として進んでいないのが、自社グループ内における会計などの管理業務だ。グループで完結し外部には閉じた業務だからと高を括っていてはいけない。社内の管理体制に支障が出ると、業務のコントロールも困難になり、最終的に顧客サービスにも確実にマイナスの影響が出てくるからだ。

(イメージ)

その意味で、フジトランスコーポレーションの取り組みは、参考にすべき部分が非常に多いのではないだろうか。管理業務について、本社など国内拠点と現地スタッフとの情報共有に課題を抱いていたこと、そもそも会計基盤が異なり業務の最適化の支障になっていたこと。こうした課題を解決することで、管理部門の業務配分が適正化され、グループ全体の人員配置や業務リソース配分がうまく進んだことにより、コスト削減だけでなく数字に現れない「効果」が出たに違いない。

ひょっとしたら、こうした事象は物流業界に限らない事情なのかもしれない。しかし、労働集約化の傾向がまだ根強く残っている物流各社にとっては、現場業務改善の一つの側面であるのは論じるまでもないことだ。こうしたグループ内の管理業務の統一化・効率化が、物流現場の業務改善にも確実に相乗効果をもたらすという事実は、もっと認知されてもよい。フジトランスコーポレーションのmultibook導入による効果は、それを明確に物語ることになるだろう。(編集部・清水直樹)