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川崎汽船、川崎近海汽船を株式交換で完全子会社化

2022年3月16日 (水)

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M&A川崎汽船は16日、連結子会社の川崎近海汽船を完全子会社化すると発表した。川崎汽船を完全親会社、川崎近海汽船を完全子会社とする株式交換を実施。川崎汽船は川崎近海汽船の全株式を取得する。

川崎汽船は、川崎近海汽船株の47.82%を保有する筆頭株主だ。今回の株式交換では、川崎汽船株1株に対して川崎近海汽船株0.58株を割り当てる。すでに川崎近海汽船は川崎汽船の連結子会社であることから、両社は連結業績への影響について「軽微」としている。

外航海運事業を主力とする川崎汽船は、川崎近海汽船の内航海運事業を自社の事業領域に据えることにより、事業基盤のさらなる強化を図るのが最大の目的だ。

新型コロナウイルス感染収束後の新しい海運ビジネスを取り巻く市場ニーズへの対応をはじめ、カーボンニュートラルの実現を見据えた脱炭素化の取り組み、さらには国内外の海運業界におけるビジネス機会の獲得競争における明確な差別化を図る事業の創出など、持続的成長の実現に向けた課題は山積している。

川崎汽船は、事業領域を拡大させるためには強固な経営基盤の構築を早急に実現するのが不可欠との観点から、川崎近海汽船の完全子会社化を決断した。

今回の株式交換は、川崎汽船においては会社法の規定に基づく簡易株式交換の手続きにより株主総会の承認を受けず、川崎近海汽船はことし5月10日開催予定の臨時株主総会の決議による承認を受けたうえで、ことし6月1日を効力発生日として実施する。

効力発生日に先立つことし5月30日に、川崎近海汽船の普通株式は東京証券取引所市場第二部(ことし4月4日以降は東京証券取引所スタンダード市場)において上場廃止となる予定だ。その場合、川崎近海汽船株の最終売買日は5月27日となる。

川崎汽船による川崎近海汽船の完全子会社化、事業基盤強化に向けた海運業界再編の「呼び水」になる可能性も

川崎汽船が、新型コロナウイルス感染収束後の海運市場で生き残りを図るための事業基盤構築に向けて、川崎近海汽船の完全子会社化を決断した。

コロナ禍による世界経済の停滞とその急回復の動きに、海運ほど翻弄された業界はないだろう。コロナ禍の収束後も、ウクライナ情勢などグルーバル経済の動向は不透明感が広がる。こうした状況下で生き残りを図るには、川崎近海汽船の内航海運ビジネスを川崎汽船の外航海運事業と連携させることで相乗効果を生み出すのが先決と判断したようだ。

このたびの川崎汽船による川崎近海汽船の完全子会社化は、各社がそれぞれ強みとするドライバルク事業と近海・内航不定期船部門における営業力強化と船隊の効率的な運営の実現が最大の焦点となる。

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さらに、洋上風力発電支援船事業の協働強化▽環境や安全、効率的な運航を支援する技術開発・デジタルテクノロジー活用の展開▽次世代燃料対応▽海事・技術系人材交流▽管理部門−−の機能共有や上場維持費用の削減、研修設備の共用などを通したコスト削減、などが、完全子会社化に伴う相乗効果の創出に向けたテーマになる。こうした課題は、国内外の海運プレーヤーとの市場獲得競争で存在感を引き出すためには避けて通れない命題と言えるだろう。

海運業界は、グローバルのマクロ経済の動向に振り回される状況から脱却し、安定した経営基盤を構築する必要があるとの認識だ。そのためには、ポートフォリオの拡充による事業基盤の強化が欠かせないのも実情だ。今回の川崎汽船による川崎近海汽船の完全子会社化は、海運業界における事業再編の呼び水になる可能性もある。(編集部・清水直樹)