ECアマゾンジャパン(東京都目黒区)は30日、模倣品などの知的財産侵害物品が国内に流入するのを防ぐため、財務省関税局との間で、水際取り締まりに関する協力についての覚書を交わしたと発表した。関税局が特定のEC(電子商取引)事業者と覚書を締結するのは今回が初めて。
覚書に基づきアマゾンと財務省は、税関が差し止めた模倣品や、それに関連した模倣品業者に関する情報を交換する。また、国内流入防止のための協力策を共同で検討する。
アマゾンは自社が持つ世界最大のECプラットフォームで、海外事業者が出品する商品を数多く取り扱っており、模倣品や業者に関する情報にも通じている。財務省は、そうした情報を活用すれば港や空港での税関の取り締まりが効率的に行えると判断した。
財務省によると、これまで密輸防止やテロ対策で民間企業や業界団体と協力の覚書を締結した例はあるが、EC事業者との締結例はなく、知的財産侵害物品の流入防止のための覚書も今回が初めてという。
アマゾンも、他のEC事業者と同様、模倣品の排除が長年の課題となっており、2021年には全世界で9億ドル以上を模倣品対策に投資し、専門家ら1万2000人以上を使って対策に取り組んだ。自社だけでなく、あらゆる関係者が効果的に協力することが重要であると判断し、財務省との協力に至ったという。
ただ、商取引で得た情報を政府など公的機関に提供するのは簡単ではなく、法的にクリアしなければならない問題も多い。今回の覚書もそうした点を踏まえ、具体的な協力内容は後回しになっている。関税局の担当者も「これから両者で検討していく」と話しており、どれだけ実効性のある協力内容を打ち出せるか今後の焦点となる。