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TRCの平和島・新A棟内覧会、9月以降再開催

2022年7月21日 (木)

▲TRCが開いた物流ビル新A棟のモデルルーム内覧会(2022年7月)

拠点・施設東京流通センター(TRC、東京都大田区)は、本拠地である大田区平和島地区で建設中のマルチテナント型物流施設「物流ビル新A棟」に関し、2023年8月の完成までの間、モデルルームでの企業向け内覧会を繰り返し開催することを明らかにした。初めて7月中旬に行ったところ好評で、入居企業獲得への重要な営業活動として開催を継続する。次回は9月以降に開く方向という。

TRCは1967年以降、平和島地区に計4棟の物流施設を展開しており、半世紀を越えた現在は再開発を順次進めている。主力のA棟の建て替え工事は21年に着工。1438平方メートル(435坪)の標準区画のモデルルームを隣の新B棟内に設け、来場者に利用イメージを体感できるようにしている。

▲ピッキングロボットのデモンストレーション

7月14、15日に計4回行った初の内覧会では、関心を持つ運送会社や荷主企業などから合計163人が来場した。TRCが施設の仕様を説明し、区画体験や質疑応答が行われた。加えて、ロボットや車両、ITソリューションなどを手掛ける9社が登場し、プレゼンテーションやデモンストレーションを行った。物流ロボットメーカーのrapyuta robotics(ラピュタ・ロボティクス、東京都江東区)はピッキングロボットを実演し、オプティマインド(名古屋市中区)は配送ルート最適化サービスの紹介した。新A棟にはEV(電気自動車)の充電スタンドも設置される予定で、それを意識して三菱ふそうトラック・バスは電気トラック「e Canter」(eキャンター)を展示した。

TRCは今回の内覧会で手応えを得て、再開催の検討に入った。同社の平和島物流施設群は長年、東京都心や羽田空港、首都高速道路に近い抜群の立地に支えられてきたが、近年建設ラッシュが続く首都圏他地区のライバル施設に対抗するため、営業活動にも力を注いでいる。また、内覧会とは別に「国際物流総合展」(9月13日から16日、東京都江東区)でブースを設けてPRを行う予定で、地方の物流関係者らの来場も期待している。

倉庫内覧会の副次的な価値を考える/市民との接点にぜひ

東京流通センターが物流施設のモデルルーム内覧会を開くことには、自社のテナント獲得に向けた営業活動のほかに、物流施設や先端物流技術により多くの人が触れる機会を提供するという副次的な価値がある。

▲公開されたモデルルームの区画

記者も今月、新A棟の内覧会に参加した。モデルルームは派手さこそなかったが、明るい照明の下、シンプルでスクエアな空間に入ると非常に気持ちの良い雰囲気で、設備類も洗練された印象を受けた。参加した物流会社や荷主企業、不動産関連企業の人たちは区画の広さや天井高、プラットフォームの高さを体感し、説明者のTRC社員に積極的に質問を投げかけていた。

デモなどを行ったロボットメーカーやITソリューション企業などは9社が登場し、モデルルーム見学前に行われた各社のプレゼンは1時間近くに及んだ。新A棟の仕様説明よりも長く、やや戸惑ったが、倉庫の区画見学にはそれほどの時間を要しないことから、納得できた。むしろ大規模見本市に行かなくとも、アクセスが便利な平和島で先端機器や技術をまとめて学べたことは貴重だった。この方式が倉庫見本市の一つのスタイルとして定着するではないだろうか。

TRCは内覧会で行われたプレゼンやデモの内容を、同じ敷地にある本社ビル内の常設ショールーム「TRC LODGE(ロッジ)」でも企業向けに公開している。記者も見学したが、その際、案内をしてくれたTRCの担当者に「ショールームやモデルルームを一般市民向けに公開しても良いのでは」と提言してみた。小学生の社会科見学や大学生の業界研究などの場に向いていると感じたからだ。


▲ショールーム「TRC LODGE」

ある大手の物流不動産会社は大規模物流施設の完成時に周辺住民を招いてイベントを開いたり敷地内の一部を一般に開放したりして、市民との距離を縮めようと努力している。その会社の経営者は理由について「倉庫の暗いイメージを解消したいからだ」と語っていた。また、国内物流施設でこのところ、大規模な火災が続いていることもあり、物流施設の周辺住民が少なからずネガティブな思いを抱いている懸念がある。物流の役割を正しく理解してもらうという観点からも、倉庫内覧会は業界と市民との接点として、その役割を広げてもらいたい。(編集部・東直人)

■「物流ビル新A棟」計画概要
所在地:東京都大田区平和島6-1-1
アクセス:東京モノレール「流通センター駅」徒歩1分、首都高速羽田線「平和島出入口」1キロ、首都高速湾岸線「大井南出入口」3キロ
準工業地域・流通業務団地
延床面積:20万5000平方メートル
貸付面積:15万6000平方メートル
構造:6階建て、RC-S造・免震構造
<倉庫>
床耐荷重:1.5t/m、2
柱スパン:10.15m×11m
、天井高:1F 梁下有効5.7m、2-6F 梁下有効5.5m
プラットフォーム:1F 0.8m(一部低床)、2-6F 1.0m
照度:平均300ルクス(床面)
ドックレベラー:各区画に設置スペース確保