ピックアップテーマ
 
テーマ一覧
 
スペシャルコンテンツ一覧

目指すは「東西の中継拠点」と「中部圏の先進物流エリア」

三井不動産の中部圏戦略の新機軸に、「弥富木曽岬」

2022年7月28日 (木)

話題首都圏と関西圏に挟まれた中京圏。いわゆる「三大都市圏」の一角をなす、自動車産業を基軸とした輸出型の経済圏を構成するとともに、名古屋市を中心に衛星都市が連続する大消費地の性格も持つ。そんな中京圏における物流施設ネットワークの構築に強い意欲を示しているのが、三井不動産だ。

関西方面から東に向かって三重と愛知の県境に位置する、伊勢湾岸自動車道「弥富木曽岬インターチェンジ(IC)」。木曽岬干拓地が一面に広がる木曽川河口の東岸で、巨大な建築工事が着々と進む。三井不動産が2021年10月に着工した物流施設「三井不動産ロジスティクスパーク(MFLP)弥富木曽岬」(三重県木曽岬町)。5万5192.75平方メートルの敷地に、延べ9万8792.67平方メートルの大型物流施設が23年3月に完成する予定だ。

▲MFLP弥富木曽岬の完成イメージ

東西に挟まれた「中継地点」として求められる機能を模索

三井不動産が中京圏で手がける物流施設プロジェクトは、このMFLP弥富木曽岬が3番目となる。これまでの開発物件である「MFLP小牧」(愛知県小牧市、17年1月完成)、「MFLP稲沢」(同稲沢市、17年5月完成)といった、中京圏における物流施設立地の“定番”と言える場所から一転、伊勢湾岸の木曽岬町での新拠点開設に踏み切った狙いは何か。「MFLP弥富木曽岬の開発には、二つの目的があります」と話すのは、三井不動産ロジスティクス本部ロジスティクス営業部営業グループの鈴木啓人主事だ。

▲「MFLP弥富木曽岬の開発には、2つの目的があります」と話す、三井不動産ロジスティクス本部ロジスティクス営業部営業グループの鈴木啓人主事

まずは、伊勢湾岸自動車道の沿線という立地を生かした、首都圏と関西圏の中継機能だ。鈴木氏はMFLP弥富木曽岬で、こうした機能の価値をより高める取り組みを進める考えだという。それは、首都圏と関西圏の中間拠点として「営業所」を新設する需要を獲得することだ。

自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限が960時間に制限されることによって発生する「物流の2024年問題」への対応も視野に顕在化している、こうした中継拠点に営業所を新設する動きをにらんだ取り組みだ。「営業所の新設とともに、少量の荷物を保管するスペースのニーズも出てくると想定し、最小で2059平方メートルから倉庫スペースを提供します」(鈴木氏)

弥富木曽岬を中京圏の「物流適地」にしたい

2つ目は、この弥富木曽岬IC周辺エリアを中京圏における新たな物流施設の集積拠点と位置付けるためだ。

小牧市や一宮市といった愛知県北部の内陸部は、東名・名神高速と中央自動車道が結節する小牧IC・ジャンクション(JCT)を軸とした中京圏で最大の物流拠点の集積エリアだ。それゆえに空室率は低く、賃料も高水準だ。まとまった施設開発用地の取得も困難であることから、新しい物流適地を模索しているなかで、白羽の矢を立てたのが弥富木曽岬IC周辺エリアだった。

(地図は2018年、Google)

他の開発事業者も弥富木曽岬に着目し、すでに新物件も完成。「先進的な倉庫街としての片鱗が見え始めた今こそ、中京圏における新たな物流適地として開発プレーヤーに名乗りを上げるタイミングだと判断しました」(鈴木氏)

三井不動産の「新機軸」に挑むMFLP弥富木曽岬

こうした理由から、MFLP弥富木曽岬を中京圏における物流施設ネットワークの新たな方向性を示す好機と位置付ける三井不動産。新機軸の象徴とも言える新施設では、他にもさまざまな取り組みに挑戦する。

敷地内に整備した、乗用車559台を収容する駐車場。あまりにも広いこの敷地を駐車場に充てている理由、それは危険物倉庫への転用を想定しているためだ。「約100平方メートルの倉庫を2棟まで建設できます。EC(電子商取引)商品から車載用電池まで、幅広い危険物の物流ニーズに対応します」(鈴木氏)。

さらに、三井不動産としては中京圏で初となるダブルランプを採用。風雨を考慮して全長6.5メートルと大型の庇(ひさし)も整備してウイング車の荷扱いをしやすくするなど、名古屋港に近い湾岸部の倉庫需要にも配慮する。

(イメージ)

環境対応機能にも注力。屋上の3割に太陽光発電設備を設置して施設内に給電し、残り7割は各テナントの要望に応じて設備整備する仕様とする。「入居企業における環境価値向上の取り組みを支援することで、企業価値向上につなげる狙いです」(鈴木氏)。

三井不動産は中部電力ミライズ(名古屋市東区)との間で、オフィスビルなどにおける「使用電力のグリーン化に関する包括協定」を締結。三井不動産が中部電力ミライズから電力供給を受ける施設を対象に、23年4月から新たにグリーン電力の提供が可能になった。もちろん、MFLP弥富木曽岬もその対象となる予定だ。

三井不動産が目指す中京圏戦略とは

MFLP弥富木曽岬の開発は、中京圏における物流施設ネットワークの構築における節目になる。実に6年ぶりとなる新施設の完成となるだけでなく、新たなプロジェクトの開発も継続して予定しているからだ。

▲MFLP名古屋岩倉

「MFLP名古屋岩倉」(愛知県岩倉市、24年7月完成予定)と「MFLP一宮」(同一宮市、25年6月完成予定)は、ともに県北部の内陸部にある物流施設集積地に近いエリアでの開発案件だ。原点回帰とも言えるこれらのプロジェクトは、既存の2物件とともに、日用品など一般消費者向け商材の倉庫拠点として整備する計画だ。その意味で、MFLP弥富木曽岬とは性格の異なるプロジェクトだ。

「これら新規2物件を開発する最大の目的は、既存施設の顧客による倉庫機能の拡充への対応です。EC関連を含めて、大都市圏での物流需要もしっかりと獲得していく考えです」(鈴木氏)。東西の大都市圏に挟まれた中継地点機能と、大都市圏としての中京圏の市場に対応した物流拠点機能。二つの顔を持つ中京圏ならではの物流ビジネスへの的確な対応。それこそが、三井不動産の目指す中京圏戦略なのだ。

物流施設特集-東海・北陸信越編-トップページ