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気鋭の4氏討論ー最強物流DX活用会議を開催

2022年7月27日 (水)

話題LOGISTICS TODAY主催のオンラインセミナー「ケーススタディ『最強物流設計』for 荷主企業・物流企業 DXの超具体的活用会議」が27日開催された。変化が激しい物流・ロジスティクスの事業環境を踏まえ、斬新な発想と高精度な技術力を持つスタートアップ4社のトップらが集結。DX(デジタルトランスフォーメーション)の導入や活用の仕方について、示唆に富んだ討論を2時間にわたって展開。当初予想を上回る約200人が視聴した。

「小さな成功を積み上げる」Shippio 本間氏

今回のセミナーで進行役の赤澤裕介・本誌編集長はあえて、「デジタル化の取り組みで失敗した経験は」と登壇者らに変化球を投げた。

それを受け、真っ先に発言したのは貿易実務の効率化に取り組むデジタルフォワーダー、Shippio(シッピオ)の本間善丈ディレクター。電話やファクスが主流だった従来型の貿易実務をクラウド技術でリアルタイム化・効率化するサービスで急成長している企業だ。しかし、「取引先には、必ずしも変化を望まない人がいることもある」と体験を語り始めた。

ある取引先は同社のシステムの導入に際して、それが成功したと評価するための要件や目標をあいまいにしたまま勢いで走り始めてしまったという。「変化を望まない人たちに対して(推進者は)成功を証明できず、プロジェクトが自然消滅してしまったことがあった。実はうまくいっていたのに、コスト面だけでは成果のアピールとしては不十分だった」という。本間氏は苦い経験を教訓に、「プロジェクトのマイルストーンを細かく区切り、小さな成功を積み上げて成功をアピールしやすくすること」と、DXを導入・活用する上での助言を語った。シッピオのサービスに関しても「一気に全面採用するのではなく、徐々に切り替えていくやり方もある」と述べた。

「規格化の重要性、認識を」SOUCO 中原氏

「倉庫業界全体がDXに失敗している」と厳しい見解を示したのはsouco(ソウコ)代表取締役の中原久根人氏。同社は全国1500超の倉庫ネットワークから顧客ニーズにあった保管スペースを探し出すサービスを手がけている。

中原氏は日本の倉庫業界が、いまだに物流パレットを規格化できていないことを挙げ、「このようなプロトコルの非統一が情報伝達の妨げになっている。確認のための工数を増やしている」と、日々の苦労を紹介した。欧米はこの点で先行しており、パレットや付随業務の規格化が進み、あらゆる作業がスムーズにできていると、悔しさをにじませながら語った。「標準化」「規格化」というものの重要性を企業も業界も真剣に認識すべきと説いた。

「木ではなく森を見て」CBcloud 松本氏

配送プラットフォームなどを運営するCBcloud(CBクラウド)の松本隆一代表取締役は、DX導入に際して「目の前のコストの把握だけで判断するのは問題」と話した。トラック運送を効率化する同社のサービスも、営業先にそのコストを一日単位、一台単位で切り取られ、高いと受け取られた経験があるという。「木ではなく森を見てほしい」と述べ、中長期的な視点がDXの評価に必要だと主張した。

「成功事例は社員の働き方を変える」とも述べ、DXで会社の売り上げが伸びたことを現場の配送担当者たちも一緒に喜べるような企業運営が、生産性向上にもつながるとした。経営者もドライバーも同じ目線で会話ができる人間関係を築くこと。松本氏は「最強の物流設計」のキーワードとして、画用紙に大きく「人」と書いた。

「失敗の許容を」オプティマインド 吉川氏

「現場が受け入れないとDX活用は机上の空論になる」と言い切るのはCOO(最高執行責任者)を務める吉川治人氏。オプティマインドは名古屋に本拠を置き、アルゴリズムを駆使した配送ルート最適化サービスを提供している。土地がら取引先には大手自動車メーカー向けに鋼材などを輸送する企業が多い。どの社も納期に対する厳しい要求にさらされ、配送ルート変更は配車現場に大きなストレスを課すことになる。吉川氏は固定ルートの運用経験しかない配車担当者から「今まで通りにしてほしい」という声を聞かされてきた。

シッピオの本間氏が言う「抵抗勢力」とも重なり、「人間というものは変化を嫌うもの」と吉川氏は一定の理解を示したうえで、DX浸透へ「前後工程の関係者を巻き込む」という策を提案した。この会社の例で言えば、配車の前工程の営業、後工程の車両生産の二つ現場の関係者を早いうちから巻き込み、自社のルート最適化サービスの有効性を理解してもらえたことが、成功につながったという。

最強物流の設計法を問われた吉川氏は視聴者に向けてこう訴えた。「テクノロジーを入れたから何かが変わるのではなく、人々のマインドが順応することで変化が起きる。人は小さな失敗を繰り返しながら順応していく。『失敗の許容』こそ、最強物流の秘訣なのだ」


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