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日立物流系、量子CPで配車システムを実用化

2022年10月26日 (水)

サービス・商品日本物流ソフトウェアは26日、量子コンピューターと人が対話型(オンデマンド)で車両割り付け・輸送ルートを決定するシステムを日立物流首都圏と開発し、8月から同社物流センター(千葉県柏市)で稼働したと発表した。

▲量子コンピューターによる配車のイメージ(クリックで拡大、出所:日立物流ソフトウェア)

発表によると、新開発したシステムは古典と量子の両コンピューターのハイブリッド型で瞬時に計算を行い、人との対話により配車を完結するもの。数理最適化モデルを活用し、荷物の重量や容積、到着時間、納品場所の車格制限といった出荷の特殊要件を考慮した膨大な組み合わせパターンを演算するのが画期的で、高度で属人的で複雑な業務をデジタル化する。

これにより、車両台数とCO2の削減をはじめ、ドライバーが働く環境改善など社会問題の解決に貢献していくとしている。

同システムは、輸送条件が複雑で取り扱い車両が多い日立物流グループの事業所を中心に展開し、社外への販売も予定していく。

物流DXのあるべき姿を見た、属人化回避のため対話の要素を組み込む「究極の先進化」

輸送業界における配車機能の最適化は、サプライチェーン円滑化の観点からも非常に期待の高い取り組みだ。配車スキルの是非が、荷物の搬出入や輸送リードタイムの確保など物流のサービス品質の維持・向上に直結するからだ。日立物流ソフトウェアが打ち出した量子コンピューターによる配車システムも、こうした文脈で語られるべき取り組みだ。ここで特筆すべきポイントは、あえて「対話型」システムとして実用化につなげた点だ。

物流業界におけるここ数年のトレンドとしてすっかり定着した感もある「物流DX(デジタルトランスフォーメーション)」。とりわけ、先進的な配車システムについては多様な業界の企業が相次いで参入するなど、物流DXを象徴する分野だ。

しかし、そこは輸送というビジネスの奥の深さだ。配車という仕事は、実はこれまで蓄えられてきた膨大なノウハウの集積であり、それをある瞬間からデジタルに置き換えることはまず不可能なのだ。こうした要素を「属人化」「アナログ」と一蹴することは簡単だが、こうした微妙なさじ加減が求められるのも仕事というものだ。

(イメージ)

デジタル化全盛の現代において、こうした要素を先進システムに組み込んだのが、今回の日立物流ソフトウェアのシステムだ。物質を構成する原子や電子など「量子」の持つ性質を利用して情報処理を行う量子コンピューターを活用して数理的な最適化を図ることにより、車両の割り付けや輸送ルートを決定する。それだけでは小難しい話だと煙たがられてしまうところだが、その過程で人との対話を要すると聞けば、一気に親しみを感じるというものだ。

属人化による弊害を避けるために、あえて対話の要素を組み込む。あえて“矛盾”しているように感じる構成としたところに、現場を熟知した上で実用化に踏み切った開発陣の努力も垣間見ることができる。物流DXの「あるべき姿」をここで見た気がする。これぞ究極の先進システムというべきか。(編集部・清水直樹)

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