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東名・厚木事故が示唆する物流DXの本質【解説】

2022年11月11日 (金)
LOGISTICS TODAYがニュース記事の深層に迫りながら解説・提言する「Editor’s Eye」(エディターズ・アイ)。今回は、11月10日未明に東名高速で発生したトラックなど4台が絡む事故を取り上げました。気になるニュースや話題などについて、編集部独自の「視点」をお届けします。

国内神奈川県厚木市の東名高速道路下り線で11月10日未明に発生したトラックなど4台が関係する事故は、一部区間で16時間にわたって通行止めとなるなど、物流の大動脈に大きな影響を与える事態となった。首都圏と中京圏・関西圏などを結ぶ広域幹線輸送を担う事業者は、中央自動車道や首都圏中央連絡自動車道(圏央道)など代替ルートを活用してダメージを最小限に食い止めるなど、物流機能の確保を図った。

道路状況をはじめとする膨大な量の情報が発信される時代。こうした事故による通行止めの情報をより迅速に把握できる一方で、適時のドライバー配置や交通支障の長期化を想定したルート選択など、最適な運行体系をその場で決断するには、いわゆる先進システムの支援を受けながらも、運行管理者をはじめとする事業者の判断力も欠かせない。これらの相乗効果こそが物流DX(デジタルトランスフォーメーション)の本質であることを、今回の交通支障は示唆していると言えそうだ。

未明に発生した今回の事故は、首都圏を出発して中京圏や関西圏、さらには中国・四国・九州に向かう幹線輸送トラックも相当数が足止めされた。新東名高速道路は神奈川・静岡県境の一部区間が未開通だが、国道を経由すれば代替ルートとしての機能も果たせる。高速道路をはじめとする道路インフラの充実は、やはり物流の強靭化には欠かせない基盤であることが分かる。

さらにその重要性を浮き彫りにしたのが、幹線輸送ルートの複線化だ。都心方面から東名高速道路を西進する車両は、事故を察知すれば圏央道・中央道経由に移行することで中京圏への到達が可能だ。もちろん輸送時間はやや伸びるものの、偶発的な事故による支障の回避であれば有効な方策だ。

むしろ、こうした物理的な条件を有効に活用できる腕を求められるのが、運行を管理する側だ。物流現場における業務の効率化・最適化を支援するさまざまな機器やシステムを、業界の枠を超えた多様な企業が提供している。むしろ、それだけ参入の余地が大きい市場であると認識されているのも事実であり、その旗印は「職人の『勘』に依存した業務からの脱却」だ。

しかし、こうした突発的な事故による交通支障の発生時における瞬時の判断をこうした先進システムに依存する考え方は、誤りであると考える。あくまでもこうしたDXによる取り組みは、あくまで業務判断を「支援」するものであるということだ。

最適な配車や輸送ルートの決断に管理者の過去の経験を反映させることは、必ずしも排除すべき「勘頼り」の業務であることを意味しない。ここでも、DXを巡る目的と手段を的確化した認識が必要になってくる。今回の事故で幹線輸送へのダメージが全体でみれば限定的だった背景は、まさにそこにある。(編集部・清水直樹)

(イメージ)

11月10日午前3時半ごろ、神奈川県厚木市の東名高速下り線でトラックや乗用車など4台が衝突し、4人が死亡する事故が発生した。

神奈川県警によると、事故は東名高速の厚木インターチェンジ(IC)近くで発生。トラック2台とトレーラー、乗用車の計4台が関連し、トラックと乗用車が炎上し現場で4人の遺体が見つかった。

一番後方を走っていた大型トラックが前方の乗用車にぶつかり、玉突き事故になった可能性があるという。同県警は詳しい事故原因などを調べている。

NEXCO中日本によると、現場は片側3車線の直線道路。事故が起きた場所の前方では当時、車線規制が行われていた。この事故の影響により、厚木ICと伊勢原ジャンクション間の下り線が通行止めとなり、同日3時45分から20時まで16時間にわたって閉鎖された。

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