ピックアップテーマ
 
テーマ一覧
 
スペシャルコンテンツ一覧

フリマ商品をリアル店から発送、ヤマトや丸井など

2022年11月17日 (木)

ECヤマト運輸(東京都中央区)は17日、小売り大手の丸井グループなどと協力して、フリマアプリやネットオークションで取引が成立した中古品などの商品を、商業施設でも発送できる新サービスを開始した。自宅以外の生活動線上にある店舗から発送できるようにし、利便性を高める。東京・有楽町で発送品を受け付ける場面をメディアに公開し、幅広い層に利用を呼び掛けた。

この新サービスは、ヤマトが、EC(電子商取引)関連のシステム開発を手掛ける英Doddle Parcel Servises(ドドル・パーセル・サービシズ)のシステムを活用して行うもの。扱うのは「メルカリ」「ヤフオク!」「PayPayフリマ」で個人間取引が成立した商品。発送を受け付ける店は、丸井グループの商業施設「マルイ」「モディ」計20店で、受け付けは同グループの物流会社ムービング(埼玉県戸田市)が行う。このほか、長野県のスーパー「デリシア」50店でも受け付ける。

利用者(商品の出品者)が売買成立後、スマートフォンアプリで発送場所の店舗を選択すると二次元コードがスマホ上に発行される。店の受付でそれを提示すると送り状のシールが印刷され、商品に貼って係員に渡すと、ヤマトが回収し、購入者に宅配する流れだ。

▲発送サービスの流れ(クリックで拡大、出所:ヤマト運輸)

ECの進化で「CtoC」と呼ばれる個人間取引も拡大。駅前などの商業施設では、これまで商品の受け取りはできたが、発送はできなかった。出品者の利便性を高めたいフリマアプリ・ネットオークション事業者のニーズと、EC利用者をリアル店に呼び寄せたい小売事業者の思惑を、物流企業であるヤマトのサービスが一致させた。

▲窓口で、係員(左)から渡されたバーコードシールを自分の商品に貼る女性(東京都千代田区の有楽町マルイで)

サービス開始に合わせた発送場面の公開は17日午前に有楽町マルイ5階の受付窓口で行われた。利用者の女性が商品が入った箱を持ち込み二次元コードを提示。係員はその場で手早く送り状シールを印刷し、商品の受け渡しがスムーズに行われた。

ヤマトは2023年1月以降、受付窓口をドラッグストア大手のツルハドラッグの店などにも広げ、23年中に発送可能店舗を2000店まで拡大する計画だ。「顧客が買い物時などに商品を発送する『ついで発送』のニーズに対応していく」と話している。

ヤマトの新サービス、ECがもたらした宅配業界「再構築」で差別化を図る戦略だ

ECサービスの普及は、消費スタイルの多様化をもたらしただけでなく、新たな購買行動を生み出した。その代表例がフリマアプリやネットオークションに象徴される個人間取引だ。市場規模は2兆円を超えているというから、その浸透スピードの速さがうかがえる。

一方で、ほぼ半世紀の間にすっかり定着した荷物の宅配ビジネス。宅配の概念が大きく変わろうとしている今、こうした購買行動の急速な変化への対応を迫られている。業界トップのヤマト運輸と言えども、もちろん例外ではない。

そんなヤマトが、フリマアプリやネットオークションで取引が成立した中古品などを商業施設でも発送できる新サービスに乗り出した。個人が宅配サービスを利用する場合は、その自宅や取次店舗から発送するのが一般的だ。しかし、ECの普及に伴う生活動線の多様化に対応して発送地点を広げて、「ついで発送」の需要をつかむことで、新たなサービスの創出につなげる狙いだ。

ヤマトがこのたびスタートした新サービス。こうした動きが示唆するのは、宅配ビジネスそのものの「変質」だ。

ヤマトが「宅急便」事業を開始したのは1976年。宅配ビジネスが急速に定着した契機となった。特に個人間での荷物の配送サービスは、輸送日数の短縮や時間指定の充実など、輸送プロセスにおける機能強化を促進。競合事業者との差別化を図ることで、業界トップの地位を確立した。「クロネコ」ブランドの設定など、輸送ビジネスにおける新たな企業価値の構築に成功した好例ともなった。

こうしたビジネスモデルに新たな対応を求めたのがECの存在、さらには持続可能な社会の創出を目指すシェアリングエコノミー意識の高まりだった。こうした新しい社会活動の誕生は、国民生活に不可欠なインフラとしてすっかり定着した宅配サービスのあり方の抜本的な見直しを迫った。

裏を返せば、新たなビジネスへの参入を促す契機になる。こうした動きに対応できる事業者が生き残り、そうでないサービス提供者は衰退していく。ECは新たな宅配ビジネス市場を生み出し、盟主のヤマトと言えども「シード権」の行使は許されない。

宅配業界で進む、そんな厳しい市場の再構築。ヤマトの新サービスは、こうした背景に裏付けられた取り組みという側面もある。(編集部・清水直樹)

■「より詳しい情報を知りたい」あるいは「続報を知りたい」場合、下の「もっと知りたい」ボタンを押してください。編集部にてボタンが押された数のみをカウントし、件数の多いものについてはさらに深掘り取材を実施したうえで、詳細記事の掲載を積極的に検討します。

※本記事の関連情報などをお持ちの場合、編集部直通の下記メールアドレスまでご一報いただければ幸いです。弊社では取材源の秘匿を徹底しています。

LOGISTICS TODAY編集部
メール:support@logi-today.com