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ブリヂストン、ゴム製ピッキングロボ開発で提携

2023年2月1日 (水)

荷主ブリヂストンは1日、知能ロボットシステムを開発するアセントロボティクス(東京都渋谷区)と資本業務提携を結んだと発表した。ブリヂストンが独自に開発したソフトロボットハンドと、アセントロボティクスのAI(人工知能)ソフトウエアを組み合わせた、物流現場をはじめとするピースピッキングロボットシステムの実用化につなげる。ブリヂストンがアセントロボティクスに5億円を出資する。

▲ソフトロボットハンドの動きを解説する、ブリヂストンのソフトロボティクス テクノロジーズの音山哲一CEO

ブリヂストンは今回の提携を契機として、自動車用タイヤをはじめとするゴム製品の開発技術を応用して多様な問題解決につなげる「ソフトロボティクス」事業の展開を本格化させる。2023年1月1日付で社内ベンチャーの「ソフトロボティクス ベンチャーズ」(東京都中央区)を設立。アセントロボティクスとの連携で、ピースピッキングロボットシステムの開発に注力する。将来的には、新たなシステムの開発にも取り組んでいく方針だ。

▲ゴムの特性を生かしたハンドリングが特徴(出所:ブリヂストン)

ソフトロボットハンドは、ラバーアクチュエーター(ゴム人工筋肉、エネルギーを動作に変換するゴム製装置)。ゴムの特性を生かして、あらゆる形状や材質の対象物を器用につかめるのが特徴で、重さ2キロ程度まで対応できるのが特徴だ。ロボットが器用な「手」としてピースピッキング現場で振る舞うことにより、倉庫など物流現場における人材不足に対応した効率化や、就業者の負荷低減につなげる。

プレミアムタイヤ事業やソリューション事業に注力するブリヂストンは、50年を見据えた中長期事業戦略構想で、中核であるタイヤやホースの技術を生かした独自のビジネスモデルの構築を提唱。ソフトロボティクス事業準備室を21年7月に開設した。「安心・安全なヒト・モノの移動と動きを支える」を目標に掲げて、同社グループの物流倉庫ピースピッキング工程での実証実験を行うなど、現場ベースでの価値検証を進めてきた。

ブリヂストンのソフトロボティクス ベンチャーズの音山哲一CEO(最高経営責任者)は記者発表会の席上で、「物流の現場はまだまだ人間が介在する余地が大きい。ソフトロボティクスを展開することにより、人々の暮らしに寄り添いそれを支える新しい社会の実現につなげていく」と意気込みを語った。

アセントロボティクスの久夛良木(くたらぎ)健CEOは「世界規模で加速する物流領域のさらなる自動化に対応するため、AIを活用した知能ロボティクスの開発に取り組むとともに、多種多様な対象物をフレキシブルに扱えるロボットの導入に貢献していく」と強調。ブリヂストンのソフトロボティクスハンドの持つ対象物を器用につかむ能力のさらなる高度化に貢献していく考えを示した。

▲(左から)アセントロボティクスの久夛良木健CEO、音山氏

ブリヂストンのソフトロボティクス事業、早速その真価が問われる「2024年」

ブリヂストンが、いよいよ物流現場の業務効率化に向けた本格的なビジネス展開に踏み出す。「物流の2024年問題」も踏まえた人員確保や高い業務負荷の軽減、社会で高まる輸送品質への対応――。こうした諸問題に対処するため、業界を超えてさまざまなプレーヤーが物流という世界に流れ込んできている。もちろん、そこには無限のビジネス機会があるからだが、ブリヂストンの取り組みはさらに先を見据えたものであるように感じる。

ブリヂストンが東京都小平市のBridgestone Innovation Park(ブリヂストンイノベーションパーク)で開いた、アセントロボティクスとの提携発表会場で、両社は「UNLOCK」というキーワードを使いながら強固で斬新な連携スタイルを強調した。世界トップクラスの自動車用タイヤ開発の技術力はもはや説明するまでもないブリヂストンだが、その影にある強い「危機感」を垣間見る機会でもあったように思う。

ブリヂストンが策定した50年を見据えた中長期事業戦略構想は、既存事業の強化に加えて新規ビジネスの創出、さらには早期の実用化を視野に入れた内容だ。既存事業で圧倒的なブランド力を構築したブリヂストンだからこそ、将来性のある新規事業に踏み出すことで、激変を続ける事業環境で生き残りを図る「覚悟」を示したという見方もできるだろう。

こうした危機感を強めるブリヂストンが着目したのが、社会に不可欠なインフラとして認知の強まっている「物流」だ。ブリヂストンがソフトロボティクス事業の橋頭堡(きょうとうほ)として社会問題の解決を支援する取り組みを進めるにあたって、解決すべきテーマが山積する物流を極めて有効な領域と位置付けた事情は、AI技術によるロボティクスで定評のあるアセントロボティクスとの協業を選択したことからも分かる。

ブリヂストンはソフトロボティクス事業について、24年度にも本格的な製品展開をスタートする方針だ。「2024年問題」も踏まえれば、ブリヂストンの技術力と製品開発力が早速、問われることになる。(編集部・清水直樹)

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