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物流二法「正直者が損する構造」に業界が懸念

2026年2月2日 (月)

イベントLOGISTICS TODAYは2日、オンラインセミナー「物流関連二法改正の核心:荷主に求められる新たな責務と実務対応──政策理解からCLO(物流統括管理者)と組織対応、そして現場の契約DXへ」を開いた。2024年4月から施行される改正物流効率化法におけるCLOの選任義務化が2か月後に迫るなか、経済産業省、物流事業者、ITベンダーの登壇者が政策の狙いから現場の課題、解決策までを議論した。LOGISTICS TODAYの赤澤裕介編集長がモデレーターを務めた本セミナーには荷主企業を中心に高い関心が寄せられた。

▲気鋭の登壇者たちが物流関連二法改正の核心に迫った

効率化しなければ、9億4000万トンの輸送能力不足へ

冒頭、経済産業省の佐藤瞭氏が改正法の骨子を語った。荷物は20年で3分の1に軽くなり、配送回数は倍になった。小口多頻度化が物流を圧迫している構図だ。トラックドライバーは全産業平均より2割長く働いて、給料は1割安い。数字が、現場の疲弊を物語る。2024年問題については「このまま物流効率化に取り組まなかった場合、2030年には最大34.1%、9億4000万トンの輸送能力不足が起こる」と危機感を示した。

▲経済産業省商務・サービスグループ物流企画室 室長補佐の佐藤瞭氏

制度の具体的内容として、佐藤氏は全ての荷主に課される努力義務(23年4月施行済み)と、年間取扱貨物重量9万トン以上の特定荷主に課される義務(24年4月施行)を説明。特定荷主には中長期計画の作成、定期報告、CLOの選任が義務付けられる。

CLOの役割について佐藤氏は「物流部門だけでなく、生産部門や営業部門など、物流に関わる全ての部門と連携することが必要」と強調。また、日清食品とJA全農の共同配送事例や、大手小売事業者による発注時間見直しの取り組みなど、先進事例も紹介した。

さらに、実務に追われる荷主企業からの切実な質問を佐藤氏に投げかけた。「具体的な行動項目を確認したい」「作成が必要な書類を教えてほしい」「9万トンに達していない企業はどこまで体制を整える必要があるか」等々。佐藤氏は「物流がここまで注目されることはこれまでなかった」と語り、「荷主の皆様の動きは改革に向けたチャンス。物流に光を当て、物流ベースで全体を考えていく良いきっかけにしていただければ」と呼びかけた。

9万トンという線引きには理由がある。佐藤氏によれば、この基準で日本のトラック貨物の半分を捕捉できるという。半分が動けば効果は大きい。当面の狙いは、該当する事業者を漏れなく把握することだという。経産省は改正物流効率化法のポータルサイトを開設。解説書から事例集まで、実務に追われる荷主企業の「何をすればいいのか」という切実な問いに応える資料を揃えた。佐藤氏は「基本的なことが分かるようにしている」と、支援の姿勢を示した。

ルールはできたが、守る意識に温度差あり

続くパネルディスカッションでは、NBSロジソル社長の河野逸郎氏とロジスティード理事DXソリューション開発本部長の櫻田崇治氏が、物流現場の実態を語った。河野氏は施行まで2、3か月を切った現状を「荷主も運送会社も、まだ分かっていないという言葉が飛び交っている」と語った。実運送体制管理法についても「記録を付ける会社は一定数あるが、荷主への報告となると、ほぼ行われていない」と、制度と実態の隔たりを指摘した。

▲NBSロジソル社長の河野逸郎氏

櫻田氏は3PL事業者の視点から語った。「丸投げしていた業務を荷主自らが握り直す。筋は通っているが、準備の進捗を見る限り、完遂できる企業は一握りだ」と持論を述べた。櫻田氏は別の視点も示した。特定荷主の基準に届かなかった企業の物流責任者が「残念ながら9万トンに満たなかった」と漏らしたという。改革に本気で取り組みたい現場にとって、国の後押しは渡りに船という見方もあるという。

両氏の危機感は一致していた。河野氏は「ルールはできたが、守る意識に温度差がある」と指摘し、櫻田氏は「罰則の線引きが見えない不安がある。下請法や取引適正化推進法の方が、現場を動かす力は強い」と応じた。真面目に取り組む者が損をする構図を、2人は憂えていた。

契約管理DXが法令遵守と利益確保の鍵

次に、Sansan Contract One Unitの小原慎平氏が登壇し、契約管理のデジタル化こそが法令順守と業務効率化を両立させる切り札だと説いた。小原氏は「契約の見える化、対等な価格決定、適正な取引決定。この3つがそろって初めて法令は守られる」と語る。社内のあらゆる契約書に誰もがアクセスでき、期限を管理できる状態。それが出発点だという。

▲Sansan Contract One Unitの小原慎平氏

現実はどうか。契約書は散らばり、拠点ごとに管理され、期限は宙に浮いている。面倒だから後回し。そんな現場は珍しくない。小原氏の処方箋は明快だ。解決策として、紙の契約書のスキャン代行から原本保管、AI・オペレーターによるデータ化、期限管理までを一元的に支援するサービスを紹介。「東海エリアの大手物流企業では10拠点から計5000件の契約書をスキャン代行し、データベース化した」という導入事例を示した。

発荷主も着荷主も、大手も中小も全員が同じ地平に立つべき

後半のディスカッションでは、3者が業界全体での取り組みの必要性を議論した。櫻田氏は「CLOに期待されているのは、企業の中のいろんな部門をつないで効率を上げる役割と、他の企業ともつながって複数企業で効率を上げていく外交役。3PL企業はいろんな荷主さんの仕事をしているので、荷主さん同士のCLO同士が手を結べば、フィジカルなプラットフォームを持つことになる」と3PLの役割を強調した。

▲ロジスティード理事DXソリューション開発本部長の櫻田崇治氏

河野氏は「目線を合わせること」と核心を突いた。発荷主も着荷主も、大手も中小も、ITベンダーも。全員が同じ地平に立たなければ、制度は絵に描いた餅だという。ルールの目的を共有し、対象者全員が認識を持つ。当たり前のようで、今はまだ遠い。「認識なき者には指導が要る。シンプルだが、これが全ての始まり」と河野氏は提言した。

小原氏は契約管理の現場から「この半年で物流業界のコントラクトワン導入が急増している。DXへの意識が、ようやく芽生え始めた」と語った。だが、目の前には高い壁がある。契約書の9割は紙のまま、キャビネットや倉庫に眠っている。数百、数千の束をどうデータ化し、データベース化することに悩んでいる」と現場の課題を説明した。

最後に本誌の赤澤裕介編集長は「決してゴールにたどり着けた感じはしていない。物流業界の契約のDX化、道のりはハードだが、これやらないと絶対ダメ」とまとめ、各登壇者が今後の取り組みへの決意を表明。セミナーを締めくくった。

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