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経営首脳の責任者設置など、早期検討で実効性を

強まる官主導の「持続可能な物流」措置案

2023年2月24日 (金)

記事のなかから多くの読者が「もっと知りたい」とした話題を掘り下げる「インサイト」。今回は「物流計画提出や統括者選任も、検討会が法規制素案」(2月17日掲載)をピックアップしました。LOGISTICS TODAY編集部では今後も読者参加型の編集体制を強化・拡充してまいります。引き続き、読者の皆さまのご協力をお願いします。(編集部)

行政・団体2月17日に開催された国の「持続可能な物流の実現に向けた検討会」の第6回会合で、荷主と物流事業者に対して政府による「特定事業者」の指定や「物流管理統括者」の選任義務化といった物流課題の改善に向けた措置案が複数示された。これは最終決定ではないものの、規制の具体的な中身が示されたことで、適用対象となる「貨物・輸送量が一定規模以上」になるとみられる大手の運送・荷主にとっては、新たな計画作成や役職者を準備する必要が出てきた。

企業経営の役職において、CSCO(最高サプライチェーン責任者)やCLO(最高ロジスティクス責任者)と呼ばれる役職がある。世界的には、こうしたロジスティクス戦略の責任を担うポストが置かれ、経営戦略の観点から重要視されている。日本企業のなかでも経営層に物流部門の責任者を配置し、経営的に物流事業を重視する企業も存在するが、CEO(最高経営責任者)などと比べると未だCSCOやCLOの存在感は薄い。

検討会の第6回会合で、経営者層の意識改革を促す措置として「物流管理統括者」の選任を検討している方針が明らかになった。このポストには役員の就任を想定しているほか、物流管理統括者の選任・解任については、所管大臣への届出が必要とたたき台を示した。これは事実上の官主導でCSCOやCLOの設置を促している動きとも考えられる。

検討会が2月8日に公表した中間とりまとめの中では、物流負荷の軽減に向け「物流担当者のみならず、営業・製造・調達などさまざま部門が協働して取り組む必要がある」と明記している。この一文からも、経営トップ層が物流改善により強い姿勢で臨み、会社を挙げて計画に従って結果を出すことを求めていると読み取ることができる。

(イメージ)

こうした方針が打ち出された背景には、民間任せだけでは「ものが運べなくなる時代」を回避できないとして、荷主・物流事業者に物流業務に関する経営責任をもたせる意味合いが強い。改善が認められない場合には、政府による勧告・命令を盛り込むなど現行の「ホワイト物流宣言」のような任意の取り組みとは一線を画していることからも、踏み込んだ法規制を念頭に置いている模様だ。

ちなみに、今回の法規制の素案は現在施行されている類似の法令を参考に検討が進められている。例えば、新たに選任義務化を検討する「物流管理統括者」という概念も、「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」(省エネ法)における「エネルギーの使用の改善に係る業務の管理者」や鉄道事業法における「安全統括管理者」を参考にしたという。

なかでも、省エネ法はすでにエネルギー政策の観点から、荷主や輸送事業者に対して計画の作成や取り組み状況の報告を求める手法が法体系化されている。このため、省エネ法のスキームをほぼ同じ形式に則る形で、政府による「特定荷主事業者」の指定や「物流管理統括者」の選任、物流生産性向上の中長期計画の作成・提出、実施不十分な場合の勧告・命令という具体的な措置案が作られた。

検討会は、一連の措置案を各業界にヒアリングした上で、ことし5、6月に最終とりまとめを行う予定。現時点で新法が適用される「貨物・輸送量の一定規模」の具体的な数値や関連法の施行時期はまだ示されていないが、対象が大手中心になるのは間違いない。民間事業者は役員の物流管理統括者の選任などの対応に向け、早めに人材や戦略の検討や準備を進めることで、後手に回ることなく能動的に新法による物流課題の改善へ実効性を高めてほしい。(編集部・安本渉)