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天井高上部の「未活用」問題、解決策を幅広く議論

2023年3月20日 (月)

話題物流施設の天井高の有効活用について考えるイベント(同イベント実行委主催)が20日、オンラインで開催された。国内の倉庫は天井高5.5メートルとする倉庫が一般的となるなか、保管スペース上部が「未活用」になっている実態を踏まえ、その原因や対策法をテーマに、デベロッパーやマテハン機器企業の担当者らが幅広い観点から議論した。

セミナーに登壇したのは、プロロジス(東京都千代田区)エグゼクティブ・ディレクター開発部長の佐藤英征氏、金物メーカーのオークス(新潟県三条市)営業部リーダーの村田清貴氏、住友重機械搬送システム(東京都港区)物流システム営業部担当部長の名倉千春氏、本誌・企画編集委員の永田利紀氏。司会は本誌の赤澤裕介編集長が務めた。

▲「天井高フル活用へ徹底合理化策」と題して開催されたオンラインセミナー

倉庫の天井高の活用を巡っては、本誌の調査により、荷物の保管スペースとして有効活用できていないとする企業が78.9%を占めていることが分かっている。永田氏は、この課題解決には「コストパフォーマンス」「作業効率」「安全性」の3点がポイントになると指摘。荷主側の費用対効果に対する理解不足や、効率的な運用面からみた場合、天井空間の活用メリットを見出しにくいという現状も解説した。また「高所だから危ない」という固定観念も有効活用を阻んでいる要因としつつ、物量とスピードに対応できる作業能力を確保することが重要との認識を示した。

佐藤氏は「自社では最大公約数を取って、梁下有効高5.5メートルにして開発している」と説明。海外よりも国土が狭い日本においては「5.5メートルが最適」との持論を展開した。一方で「荷物の性質上、高積みできなかったり、段ボールが潰れてしまったりするケースもある」とさまざまなケースがあることも付け加えた。


▲(左から)住友重機械搬送システムの名倉千春氏、オークスの村田清貴氏

上部空間対策として、保管ラックのネステナーや組み立て式の中二階棚メザニンなどが現場で現在でも活用されているが、名倉氏は、天井高の有効活用策として自動倉庫システム導入を提案。理由として人手不足に伴う省人化やEC(電子商取引)の浸透による物量増加への対応にも適している点を挙げた。村田氏からは、上部空間のデッドスペースに業務用昇降棚を設置するという別の観点から解決策が提示された。

自動化システムや昇降棚など多彩なソリューションが示された議論の最後に、永田氏は「物流現場で皆が同じソリューションを使っても良い。細かい部分で競争してもユーザーは報われない」と課題解決の本質を捉え、90分に及ぶ議論をまとめた。