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埋蔵文化財の眠る難立地PJを実現したのは交通網や後背人口の的確な分析

希少立地の奈良に2棟の大規模物流施設、C&W

2023年7月31日 (月)

話題関西圏における物流施設開発といえば、巨大な先進的物流施設が印象的な大阪湾岸、食品倉庫をはじめとする都市近郊型プロジェクトが進む大阪府北部の北摂エリア、近年では全面開通に向けて工事が進む新名神高速道路の沿線も注目を集める。ところが、米不動産サービス大手のクッシュマン・アンド・ウェイクフィールド(C&W)グループ傘下のクッシュマン・アンド・ウェイクフィールド・アセットマネジメントが手掛ける関西で初の開発プロジェクトとして選んだのは、奈良県北西部の安堵町だった。

同社は2020年に土地を取得して、2棟の物流施設の開発プロジェクトを始動した。C&Wが関西圏における物流拠点展開の一里塚として、奈良県安堵町を選んだ狙いはどこにあるのか。


▲LF奈良外観

選定理由は立地ポテンシャルの高さ

安堵町の地理的な概要を見てみよう。同町を含む奈良県北西部といえば、県都・奈良市よりもむしろ大阪のベッドタウンとして発展を遂げてきた色合いが濃い。特に道路網はその傾向が強く、西名阪自動車道に沿って工場や倉庫が多く立地している。それを象徴しているのが、1963年に低開発地域工業開発促進法による地区指定を受けた、県内最大の「昭和工業団地」であり、隣接する大和郡山市を含めた内陸工業地を形成している。

▲投資企画部ディレクター大木哲氏

「当社がここ安堵町を開発地に選定した背景には、物流拠点としてのポテンシャルの高さがありました」(投資企画部の大木哲ディレクター)。同町は大阪のベッドタウンであるだけでなく、関西圏の産業を支える内陸工業地の一角を構成する。西名阪自動車道をはじめとする大阪などへの良好な交通アクセスや従業員の確保、さらには地元による積極的な企業誘致政策も、同社には魅力的に映った。

競合事業者の少ないエリアながら、関西圏における物流拠点として必要な条件を備えていることから、「先進的物流施設の開発プロジェクトを始動するのに相応しい立地」(大木氏)と判断し、地元の協力を受けて計画がスタートした。23年3月に「LF奈良」が完成し、23年7月に「LF奈良ANNEX(アネックス)」が完成する計画で、2棟からなるプロジェクトが供用開始となる。

▲LF奈良ANNEX外観

豊富な労働人口と大都市「大阪」後背地の利点

▲資産運用部シニアマネージャー小野晋氏

C&Wによる安堵町のプロジェクトの最大の強みは、やはりその立地だろう。大和盆地でも埋蔵文化財が集積するエリアで、あらゆる建造物の開発に影響を受けるケースが少なくない。とはいえ、関西圏と中京圏を東西に最短経路で結ぶ、いわゆる「名阪道路」の一角を成す西名阪自動車道をはじめ、大阪市中心部へ直結する第二阪奈道路へのアクセス性の高さは、この地がいかに大都市である大阪の後背地としての性格を担っているかを示している。物流施設ネットワークの構築を図る上で、このポテンシャルを逃さない手はない。

さらに、物流施設における入居テナント探索に欠かせないのが、周辺人口の分布である。「奈良県は大阪のベッドタウンであり、県外へ勤めている人の割合が多い日本屈指の県です。そのため、労働人口は多く顕在していると想像できます。また、同エリア初となる大規模なマルチテナント型物流施設を通じて新規雇用の創出にも貢献できる社会的意義があると考えました。」(資産運用部の小野晋シニアマネージャー)

機能がいかに高くても、そこで働ける従業員が集まらなければ、施設の運営はうまくいかない。その意味で今回のプロジェクトは十分な要件を揃えていたというわけだ。

「埋蔵文化財」のハードルクリア、営業活動佳境に

「埋蔵文化財の宝庫」という、大型物流施設の開発プロジェクトを進める上で懸念される条件もクリアしながら、関西圏における後背地として物流適地の探索に成功したC&W。全フロアの成約に向けて営業活動も佳境を迎えているというから、まずは順調に滑り出したといえるだろう。

関西では堺市ですでに、物流施設の運営実績があるC&W。海外では、米国を中心に英国など欧州でも、先進的な物流施設で存在感を発揮するなど、世界における物流施設展開の潮流を知り尽くしているのが強みだ。このC&Wがここ安堵町におけるプロジェクトで実現を目指すコンセプト、それは「汎用性」だ。

▲高速道路の配送人口(クリックして拡大)

「大阪の衛星拠点としての機能を期待するLF奈良は、関西の広域な物流需要を担える間口の広さを意識しています。特定の業種に偏ることなく、幅広い物流ニーズに対応できる高い汎用性こそ、LF奈良さらにはLF奈良ANNEXの強みとして訴求していくポイントであると考えています」(資産運用部の中島嶺マネージャー)

関西圏と中部圏だけでなく、京都と和歌山を結ぶ主要道路も、実は安堵町の近隣エリアを経由している。いわば関西における道路交通網の要衝として機能しているのだ。こうして考察を進めていくと、C&Wが安堵町でのプロジェクトに踏み切った理由が明確になってくる。物流施設開発の「定番」のエリアから外れているどころか、いわば必然といってもよい最適地だったのである。

▲資産運用部マネージャー中島嶺氏(左)、アソシエイト・ディレクター近藤啓太氏(右)

LF奈良はWランプウェイで中央車路を採用する、いわば最先端の安全性・作業性を実現した機能も強みだ。「TC(通過)型とDC(保管)型の両面に対応できる最先端のスペックも、こうした的確な用地選択を実現して初めて、その威力を発揮できると考えています」(資産運用部の近藤啓太アソシエイト・ディレクター)

C&Wの物流施設の開発力は、こうした徹底的な立地面での調査力に宿っている。物流拠点ネットワークを構築する上で、立地選択とその成長性を見定める眼力が、いかに将来の持続的な成長を左右するか。それを知り抜いた集団ならではの発想、その象徴がLF奈良であり、LF奈良ANNEXなのだ。

LF奈良の概要
所在地:奈良県生駒郡安堵町大字岡崎367番10
敷地面積:5万8159.28平方メートル(1万7593.18坪)
延床面積:12万4874.98平方メートル(3万7774.68坪)
構造:S造、地上4階建
交通:西名阪自動車道「大和まほろばスマートインターチェンジ」1.5キロ、西名阪自動車道「法隆寺インターチェンジ」3キロ、第二阪奈道路「中町インターチェンジ」10キロ
竣工:2023年3月31日
物件ページ:https://www.logistics-facility.com/nara/
問合せ先:03-6625-8319 小野、03-3596-7044 中島
LF奈良ANNEXの概要
所在地:奈良県生駒郡安堵町大字岡崎367番19
敷地面積:1万8,584.29平方メートル(5,621.74坪)
延床面積:3万7605.82平方メートル予定(1万1375.76坪)
構造:S造、地上4階建
交通:西名阪自動車道「大和まほろばスマートインターチェンジ」1.9キロ、西名阪自動車道「法隆寺インターチェンジ」3キロ、第二阪奈道路「中町インターチェンジ」10キロ
竣工:2023年7月31日予定
物件ページ:https://www.logistics-facility.com/nara/
問合せ先:03-6625-8319 小野、03-3596-7044 中島
その他開発予定の物流施設
LFつくば
所在地:茨城県つくば市さくらの森25番2
竣工:2023年7月予定
物件ページ:https://www.logistics-facility.com/tsukuba/

LF加須
所在地:埼玉県加須市上樋遣川3796番1外
竣工:2024年5月予定
物件ページ:https://www.logistics-facility.com/kazo/

LF境古河
所在地:茨城県猿島郡境町下小橋838-3
竣工:2025年1月予定
物件ページ:https://www.logistics-facility.com/sakaikoga/

LF谷田部
所在地:茨城県つくば市みどりの南21番1外
竣工:2025年1月予定
物件ページ:https://www.logistics-facility.com/yatabe/